こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

ベルのうっかりミス

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「ソンナコトデヨロコブナンテ……マリア、タンジュン」
「ひ、否定はできないね」

 ベルの率直な言葉にマリアは苦笑いする。

「でもでも、お部屋にお風呂があるんだよ? これで興奮しない方がおかしいよ?」

 ベルは再度ゆっくりと溜息を吐いた。

「オカシイノハマリア。スコシオチツク。……リア、コマッテル」

 一瞬なんと呼ぶべきか迷ったのか言葉を詰まらせる。

「えっ?」

 マリアが振り向くと、エーアリアスはどちらかというと困っているというよりは呆気にとられた様子だった。

「そ、その子が、今喋っていたの?」
「「……あっ」」

 綺麗に2人分の声が重なる。

「ちょっとベル、なんで声出しちゃうのよ」
「ワ、ワタシ、ワルクナイ。ワルイノマリア」

 そしてエーアリアスを放置して責任の押し付け合いを始める。

「なんで私?」
「ダッテマリア、タンジュンスギル。コレ、フカコウリョク。ワタシ、ワルクナイ」
「うっ……」

 マリアは言い返せず、俯いた。

「……そろそろいいの?」

 話が終わったと見たのか、エーアリアスが会話に割って入る。
 そこでエーアリアスの存在を思い出したのか、ハッとしたように顔を上げる。

「あっ、ごめんなさい」

 決まりの悪そうに、言い辛そうに口から出た言葉は若干のかすれを伴っていた。

「謝らなくても大丈夫なの。慌てさせたこっちが悪かったの」
「でも……」
「でもも何もないの。さっきからお互いに謝ってばかりなの。いちいち気にしてたら切りがないの。話してるだけで日が暮れるの」

 そう言うとエーアリアスは戯けたように笑ってみせた。

「ねえ、お名前は何なの? 教えてくれる?」

 そしてマリアにタックルをくらわせるような勢いでベルに顔を近づけ、興味津々といった様子で尋ねる。

「……べ、ベル」

 ベルは少しでもエーアリアスから距離を取ろうと身体を後ろに引いた。だがその結果としてマリアの肩から滑り落ち、頭から落下する。
 咄嗟のことにマリアは反応ができなかった。

「危ないの!」

 エーアリアスの叫び声に合わせ、エーアリアスの指輪から眩い光が溢れでる。
 光は小柄な人型を作りながら凝縮し、ベルを優しく受け止めた。そして床にソッとベルを降ろすと、弾けるようにして消えた。

「……間に合った、の」

 エーアリアスは良かったと、ホッと息を吐いた。
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