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第九章 夏季休業
秘密は人より多く
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「……今のは?」
ベルを抱え上げながらマリアがそう尋ねると、エーアリアスは顔を青ざめさせた。
「あっ、あれは……」
「あれは?」
「ひ、人に教えては駄目なやつなの。それどころか、人前で使ったことがバレたら怒られるの」
だから内緒にしておいてと、エーアリアスは涙目で頼む。
「えっ……」
泣くほどのことかと、マリアは困惑する。
「お父様は怒るととっても怖いの。お、お父様のお説教だけは絶対に嫌なの」
なおも震え声で言葉を続けるエーアリアスに、マリアは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ、言わないから。それに……何も知らない人間が、国王様に訊かれるようなことじゃないでしょう?」
その言葉にエーアリアスはハッとしたように顔を上げた。
「誰だって人には言えない秘密の1つや2つはあるんだよ? ……まあ私の場合はそれが5つも6つもあるんだけど……」
「6つって……多すぎなの」
「これでも昔は秘密なんてなかったんだけどね……」
いつからこんなに増えたんだろうと、マリアは苦笑いした。
「今さら秘密の1つや2つ、増えたところで何も変わらないよ」
だから気にするなと言外に告げた。
「……ありがとうなの」
エーアリアスにはそれが自分に気を使わせないための嘘なのか、それとも事実なのか判断がつかなかった。それでもマリアの気遣いが嬉しく、思わず笑みを溢した。
「良かった。やっと笑った」
「えっ?」
「さっきから全然笑っていなかったから……私と話すのは楽しくないのかなって、ちょっと心配だったんだ」
「そ、そんなことないの。暗い話題が多かったせいなの」
エーアリアスは必死に言葉を続ける。
「それに、歳の近い子となんの気兼ねもなく話すのは久しぶりだったからどう反応していいのかよくわからなかったの。お忍びで街に来ても誰も話しかけてはくれなかったから」
何が悪かったのかと、悲し気に呟いた。
「リアは……師匠ととてもよく似てる」
「師匠?」
「うん。私に自分1人でも生きられる力を与えてくれた師匠に、ローザさんに。ローザさんはリアみたいに、人に自分の気持ちを見せるのが苦手な人なんだよ。人にキツい言葉をついつい言っちゃうの」
でもとても優しい人なのだとマリアは笑った。
「リアも、もう少し自分に素直になってみたら? それだけでもだいぶ違うと思うよ。……急に変えようと思っても、そう簡単に変えられるようなものじゃないとは思うけど」
ベルを抱え上げながらマリアがそう尋ねると、エーアリアスは顔を青ざめさせた。
「あっ、あれは……」
「あれは?」
「ひ、人に教えては駄目なやつなの。それどころか、人前で使ったことがバレたら怒られるの」
だから内緒にしておいてと、エーアリアスは涙目で頼む。
「えっ……」
泣くほどのことかと、マリアは困惑する。
「お父様は怒るととっても怖いの。お、お父様のお説教だけは絶対に嫌なの」
なおも震え声で言葉を続けるエーアリアスに、マリアは安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だよ、言わないから。それに……何も知らない人間が、国王様に訊かれるようなことじゃないでしょう?」
その言葉にエーアリアスはハッとしたように顔を上げた。
「誰だって人には言えない秘密の1つや2つはあるんだよ? ……まあ私の場合はそれが5つも6つもあるんだけど……」
「6つって……多すぎなの」
「これでも昔は秘密なんてなかったんだけどね……」
いつからこんなに増えたんだろうと、マリアは苦笑いした。
「今さら秘密の1つや2つ、増えたところで何も変わらないよ」
だから気にするなと言外に告げた。
「……ありがとうなの」
エーアリアスにはそれが自分に気を使わせないための嘘なのか、それとも事実なのか判断がつかなかった。それでもマリアの気遣いが嬉しく、思わず笑みを溢した。
「良かった。やっと笑った」
「えっ?」
「さっきから全然笑っていなかったから……私と話すのは楽しくないのかなって、ちょっと心配だったんだ」
「そ、そんなことないの。暗い話題が多かったせいなの」
エーアリアスは必死に言葉を続ける。
「それに、歳の近い子となんの気兼ねもなく話すのは久しぶりだったからどう反応していいのかよくわからなかったの。お忍びで街に来ても誰も話しかけてはくれなかったから」
何が悪かったのかと、悲し気に呟いた。
「リアは……師匠ととてもよく似てる」
「師匠?」
「うん。私に自分1人でも生きられる力を与えてくれた師匠に、ローザさんに。ローザさんはリアみたいに、人に自分の気持ちを見せるのが苦手な人なんだよ。人にキツい言葉をついつい言っちゃうの」
でもとても優しい人なのだとマリアは笑った。
「リアも、もう少し自分に素直になってみたら? それだけでもだいぶ違うと思うよ。……急に変えようと思っても、そう簡単に変えられるようなものじゃないとは思うけど」
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