こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

船内案内(2)

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 いくつもの客室の前を通り過ぎると、若干開けた場所に出た。中央は吹き抜けになっており、申し訳程度に柵が付いている。
 マリアは身を乗り出すようにして下を見下ろした。頭の上のベルが小さく悲鳴を上げる。

「あ、危ないの! そんなことしたら落ちるの」

 エーアリアスが慌てたようにマリアの肩を引っ張った。

「ごめんなさい。つい、ね……」
「ついで済む問題じゃないの。よく考えてから行動するの」
「マリア、スグカンガエナシニウゴク……」
「もう、ちゃんと反省してるってば」

 そんな会話をしながら吹き抜けに沿うように作られた螺旋階段を降る。

「この階は共有スペースになってるの」
「共有スペース?」
「食堂と図書室、それから談話室なの。談話室といっても正確には遊戯室のようなものだけれど……」
「トショシツッ!?」

 珍しくベルが大声を出したことに驚いたように、マリアはビクッと肩を震わせた。

「ドンナホン、アルノ?」

 キラキラと瞳を輝かせ、期待するようにエーアリアスを見上げる。

「どんなって……普通の歴史書と王都で流行ってる物語、それと簡単な魔導具とマジックアイテムについての本ぐらいしか置いてないの」

 そんなに期待させられるようなものはないのだと、エーアリアスは幼い子どもを諭すように優しく告げた。

「マドウグ……ミタイ! イマカライコウ」

 ベルのはしゃぎようにマリアとエーアリアスは顔を見合わせ、どちらかともなく苦笑いした。

「でもベル、文字読めたっけ?」

 マリアが思い出したように呟いた言葉にベルは固まった。

「ヨメ……ナイ。マリア、オシエテ」

 ただ読んでくれと頼むのではなく、文字を教えて欲しいと言うのがベルらしいとマリアは笑った。

「図書室はここの突き当りだけど、また後でなの」

 そう口にするエーアリアスは少し羨ましそうな、どこか沈んだような表情をしていた。

「今はあまり時間がないの。メアリーたちも待たせてしまっているもの」
「そうだね……」

 図書室に行けないことに機嫌を悪くしたベルを宥めながら、食堂と遊戯室の場所の説明が終わるとそのまま再び階段を降る。

「この階は全面的に私の部屋になってるの」

 そう言ってすぐ下の階は素通りする。

「……あれ? そういえば今気づいたけど、広すぎない? 見た目の何倍も広いよね?」

 エーアリアスは呆れたように大きく溜息を吐いた。
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