こうして少女は最強となった

松本鈴歌

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第九章 夏季休業

王都到着

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 メアリーの言葉通り、1時間もしないうちにエーデル王国王都、アストラプスィテの入り口である港に到着した。

「こうして見ると船での移動が当たり前なんだね」

 王都へ入る手続きの順番を待ちながら、マリアは改めて実感したとでも言うように呟いた。

「そうだな」

 街道を歩く者はほとんどなく、船の姿が数え切れない程見える、幅の広い水路とは対象的だった。

 時間の問題か、10分もしないうちにマリアたちの番がやってきた。

「姫様、王太子殿下が捜しておいででしたよ。もう3日程前から」
「わかったの。ありがとうなの」

 エーアリアスの姿を目に捉え、どこかホッとしたような笑みを浮かべた若い兵士に、エーアリアスは礼を言いながら自身の身分証を手渡す。

「だいぶ怒っておられたようですが、今度は何をやられたんです?」

 いつものことなのか、だいぶ気安い口調でそう尋ねる。

「特にこれといって何もしてないの。それに出かけることはお父様には伝えてあるの」
「殿下には?」
「……忘れたの」

 エーアリアスはしまったと手で口元を覆った。

「どこに行っておられたのかは知りませんが、おとなしく怒られた方が良いと思いますよ」
「そうするの……」

 身分証を仕舞うエーアリアスの腕は重かった。

「そちらの方々は? 珍しいですね、姫様がメアリーさん以外の人を連れているなんて」

 そこでようやく兵士はエーアリアスの背後のマリアたちに気づいた。

「出かけた先で仲良くなったの。それにお父様に会わせなければいけない理由ができたの」
「姫様が……仲良くですか……?」

 信じられないという表情の兵士の言葉にエーアリアスが膨れる。

「そんなに驚くようなことじゃないの」
「……いやでも姫様は、歳の近い子どもとまともに話したことすらないじゃないですか」
「し、失礼なの。会話はしたことあるの。私は別にぼっちとかじゃなくて、話が合わないだけなの」
「はいはい。そういうことにしておいて差し上げます」

 マリアは苦笑いしながら全員分のギルドカードを手渡した。

「リアは不器用だから」
「そ、そんなことはないの!」

 兵士は微笑まし気に笑うと、確認が終わったギルドカードを返しながらにこやかに言った。

「エーアリアス姫様はこんな性格だけど、悪い方ではないんだ。仲良くしてやってくれ」
「わかってます」
「でも珍しいな。姫様の身分を知っても物怖じしないなんて」
「えっ?」

 マリアは不思議そうに首を傾げた。

「別にだからといってリアがリアであることは変わらないですから」
「そう言えるだけで、十分すごいと思うよ」
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