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第九章 夏季休業
それはなんの変哲もない日々の記憶(10)
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肩を落とすマリアの頭を撫でながら、アランは屋台へと近寄った。
「串焼き肉を6本と、そっちの野菜のやつを2本頼む」
「へえ。全部で30エルになりやす」
「少し高くないか?」
告げられた金額が予想よりも高く、アランは眉を寄せた。
「最近肉の値段が上がっていやして。やむなく値上げをさせていただきやした」
「そうか。魔物が少なくなってるってことか?」
「どうもそのようですぜ、ダンナ」
アランはマリアを降ろし、お金を払うと受け取った串焼き肉を手渡した。
「落とさないように気をつけろよ」
「うん」
食べながらも2人の足はゆっくりと冒険者ギルドに向かっていた。はぐれないようにと、マリアの左手はアランの服の裾を掴んでいる。
中には良からぬことを考える者もおり、マリアを攫おうとした者もいたが、実行に移す前にアランから殺気に満ちた視線を向けられ、事件にまで発展することはなかった。
「ここは?」
「冒険者ギルドだ。さっきの話が気になったからな」
そう言いながら2人はギルドに入った。
「こ、子ども連れ……?」
「え……?」
ギルド内部が騒然とする。
それを意に解さず、アランは依頼の貼られたボードに直行する。
「……やけに高ランクの討伐依頼が多いな。いや、低ランクの討伐依頼が少いのか?」
「んっ? この街には来たばっかりか?」
いつの間にか2人の背後には革製の防具に身を包んだ中年の男が立っていた。
「ああ。さっき着いたばかりだ」
「そうか。じゃあ今鉱山が閉鎖されていることは知ってるか?」
「いや、初耳だ。王都でミスリルがないっていうから採りに来たんだが……」
「そうだったのか。鉱山は3週間ほど前から突如現れた高ランクの魔物に占領されているんだ。付近の低ランクの魔物は粗方逃げてしまった。おかげで魔物素材全般の値が上がっていやがる」
男の言葉の端々から苛立ちが漏れていた。
「そうか。教えてくれてありがとうな」
「いや、俺もその子と同じくらいの子どもがいるからな。他人事とは思えなくてな」
そう言って照れくさそうに頭をかいた。
「鉱山に入れないならしょうがないな」
「気の毒だが諦めた方が無難だと思うぞ」
アランは理解不能なことを聞いたように、キョトンとした顔をした。
「諦める? そんなわけないだろう?」
「は? 正気か? そんな街中を歩くような軽装で、しかも子ども連れで高ランクの魔物がいるとわかっているところに行く気か?」
信じられないものを見たと、男の目が驚きで大きく開かれている。
「当然だろ? 他に何をするっていうんだ?」
アランの声はどこまでも自信に満ちあふれていた。
「串焼き肉を6本と、そっちの野菜のやつを2本頼む」
「へえ。全部で30エルになりやす」
「少し高くないか?」
告げられた金額が予想よりも高く、アランは眉を寄せた。
「最近肉の値段が上がっていやして。やむなく値上げをさせていただきやした」
「そうか。魔物が少なくなってるってことか?」
「どうもそのようですぜ、ダンナ」
アランはマリアを降ろし、お金を払うと受け取った串焼き肉を手渡した。
「落とさないように気をつけろよ」
「うん」
食べながらも2人の足はゆっくりと冒険者ギルドに向かっていた。はぐれないようにと、マリアの左手はアランの服の裾を掴んでいる。
中には良からぬことを考える者もおり、マリアを攫おうとした者もいたが、実行に移す前にアランから殺気に満ちた視線を向けられ、事件にまで発展することはなかった。
「ここは?」
「冒険者ギルドだ。さっきの話が気になったからな」
そう言いながら2人はギルドに入った。
「こ、子ども連れ……?」
「え……?」
ギルド内部が騒然とする。
それを意に解さず、アランは依頼の貼られたボードに直行する。
「……やけに高ランクの討伐依頼が多いな。いや、低ランクの討伐依頼が少いのか?」
「んっ? この街には来たばっかりか?」
いつの間にか2人の背後には革製の防具に身を包んだ中年の男が立っていた。
「ああ。さっき着いたばかりだ」
「そうか。じゃあ今鉱山が閉鎖されていることは知ってるか?」
「いや、初耳だ。王都でミスリルがないっていうから採りに来たんだが……」
「そうだったのか。鉱山は3週間ほど前から突如現れた高ランクの魔物に占領されているんだ。付近の低ランクの魔物は粗方逃げてしまった。おかげで魔物素材全般の値が上がっていやがる」
男の言葉の端々から苛立ちが漏れていた。
「そうか。教えてくれてありがとうな」
「いや、俺もその子と同じくらいの子どもがいるからな。他人事とは思えなくてな」
そう言って照れくさそうに頭をかいた。
「鉱山に入れないならしょうがないな」
「気の毒だが諦めた方が無難だと思うぞ」
アランは理解不能なことを聞いたように、キョトンとした顔をした。
「諦める? そんなわけないだろう?」
「は? 正気か? そんな街中を歩くような軽装で、しかも子ども連れで高ランクの魔物がいるとわかっているところに行く気か?」
信じられないものを見たと、男の目が驚きで大きく開かれている。
「当然だろ? 他に何をするっていうんだ?」
アランの声はどこまでも自信に満ちあふれていた。
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