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第九章 夏季休業
すべての始まり(4)
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翌朝、マリアは頬を涙で濡らして目を覚した。
「あ、おかあさん、きょうはおきるのおそかったね」
朝食の用意が終わっても起きてこないエレナに違和感を覚えたものの、以前起こしに行って怒られた経験のあるマリアは、無理に起こそうとはしなかった。
「どうしたの? かお、まっさおだよ?」
エレナは目の下に隈を作っており、生気が感じられないほどに顔色が悪かった。
「マリア、よく聞いて」
「なぁに?」
「お父さん、死んだって。夜遅くに知らせが来たの」
「えっ?」
マリアの頭の中で昨夜の記憶がフラッシュバックする。
「うそ……」
「マリア? 認めたくないのはお母さんもよくわかるけど、これは現実なのよ。お母さんだって、私だってあの人が死んだなんて信じたくないもの」
その言葉は半ば自分に言い聞かせているようでもあった。
「うん……」
その日、マリアは1日中虚ろな目で過ごした。
翌日は朝からよく晴れていた。
「マリアちゃん聞いたよ、アランさんのこと。残念だったね」
家を出たところでベラに声をかけられる。
「うん……」
「気を落としちゃ駄目だよ。そんなこと、アランさんは望んじゃいないと思うよ」
「うん……」
何を言っても生返事しかしないマリアに、ベラは溜息を吐いた。
「せっかくの洗濯日和だ。手伝ってくれるんだろう? しっかりおし」
妙に明るい声に、マリアの目に僅かに生気が戻る。
「うん」
そんな些細な変化でも満足な結果だったのか、ベラは口の端を少しだけ持ち上げた。
「マリア、そろそろ行くわよ」
「うん……」
お昼前、マリアは母親に腕を引っ張られるようにして大聖堂に向かった。
「少し、早かったかしらね」
エレナはそう呟いたが、2人が着く頃には太陽は頭上に移動し、大聖堂は人で溢れかえっていた。
「どなたの御遺族様でしょう?」
「アランの、Aランク冒険者のアランの妻のエレナです」
入口でエレナが名前を告げると神官服に身を包んだ悲し気な面持ちで頷いた。
「こちらへ。……そのような幼い娘さんを遺して逝くなど、さぞご主人は無念だったことでしょう」
「本当に、あの人はこの子のことをとても可愛がっていたから。今回も、帰ってきたら一緒に新しい料理の研究をするんだって、本当に楽しそうに話していて……」
エレナは話しながらポケットから出したハンカチで目元を押さえた。
「御心中、お察しいたします」
マリアはそんなやり取りを、まるで物語の傍観者でもあるかのように、無表情に見ていた。
「あ、おかあさん、きょうはおきるのおそかったね」
朝食の用意が終わっても起きてこないエレナに違和感を覚えたものの、以前起こしに行って怒られた経験のあるマリアは、無理に起こそうとはしなかった。
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「マリア、よく聞いて」
「なぁに?」
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「えっ?」
マリアの頭の中で昨夜の記憶がフラッシュバックする。
「うそ……」
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その日、マリアは1日中虚ろな目で過ごした。
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「マリアちゃん聞いたよ、アランさんのこと。残念だったね」
家を出たところでベラに声をかけられる。
「うん……」
「気を落としちゃ駄目だよ。そんなこと、アランさんは望んじゃいないと思うよ」
「うん……」
何を言っても生返事しかしないマリアに、ベラは溜息を吐いた。
「せっかくの洗濯日和だ。手伝ってくれるんだろう? しっかりおし」
妙に明るい声に、マリアの目に僅かに生気が戻る。
「うん」
そんな些細な変化でも満足な結果だったのか、ベラは口の端を少しだけ持ち上げた。
「マリア、そろそろ行くわよ」
「うん……」
お昼前、マリアは母親に腕を引っ張られるようにして大聖堂に向かった。
「少し、早かったかしらね」
エレナはそう呟いたが、2人が着く頃には太陽は頭上に移動し、大聖堂は人で溢れかえっていた。
「どなたの御遺族様でしょう?」
「アランの、Aランク冒険者のアランの妻のエレナです」
入口でエレナが名前を告げると神官服に身を包んだ悲し気な面持ちで頷いた。
「こちらへ。……そのような幼い娘さんを遺して逝くなど、さぞご主人は無念だったことでしょう」
「本当に、あの人はこの子のことをとても可愛がっていたから。今回も、帰ってきたら一緒に新しい料理の研究をするんだって、本当に楽しそうに話していて……」
エレナは話しながらポケットから出したハンカチで目元を押さえた。
「御心中、お察しいたします」
マリアはそんなやり取りを、まるで物語の傍観者でもあるかのように、無表情に見ていた。
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