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第九章 夏季休業
すべての始まり(3)
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午後は掃除ですべて終わった。
「ただいま。夕飯はできているんでしょうね?」
夕方から降り出した雨で濡れたスカートを絞るエレナに、マリアは笑顔を向けた。
「うん、ちょうど今できるところだよ」
その言葉通り、マリアは今まさに石窯から焼きたてのニンを取り出しているところだった。
「珍しいわね。石窯を使うなんて」
「わたしがつくれるので、いしがまをつかうのなんてほとんどないから」
マリアは照れくさそうに笑った。
「そう、あなたにしては中々美味しいじゃない」
「ありがとう」
できあがったそれは、形が不格好なら、端も黒く焦げていたが、それでも満足だったのかエレナはここ最近では珍しく笑っていた。
「それにしても、ホント嫌な天気ね」
食卓の上から粗方食べ物が消えると、エレナは窓の外を見ながら憂鬱そうに呟いた。
「うん。なんかおそらがないてるみたい」
外はすっかりどしゃ降りになっており、滝のような音がしている。
「やめて。そんな不吉そうなことは言わないで」
「……ごめんなさい」
マリアとしては思ってることをそのまま口に出しただけで、なぜ怒られたのか理解できなかった。
深夜、マリアはトイレに起きた。
「あれ? あかりがついてる」
居間の明かりが点いていることに気づいたマリアは、母親が消し忘れたのかと思い、消そうと足を踏み入れた。
「──ですが」
だが聞こえるはずのない話し声が玄関の方から聞こえ、マリアは扉の影に慌てて隠れた。そして様子を窺う。
「嘘だって、嘘だって言ってよ!」
普段は決してマリアに涙を見せたことがないエレナが泣きながら見知らぬ兵士に詰め寄っている姿に、思わずマリアは目をパチクリさせる。
「いえ、残念ですが、アランさんは今日の夕方頃に亡くなられたと連絡が……」
兵士は表情をまったく動かさずに、ただ淡々と事実を告げた。
「なんで? どうしてよ!?」
エレナが崩れ落ちる姿を、マリアは無表情に見ていた。
「明後日、いえ、もう明日ですね。明日の朝、10時から今回の戦死者の合同葬儀を、城の隣、大聖堂の方で執り行いますので、ご参列ください」
兵士は淡々と言うことだけ言うと、エレナをそのままに出ていった。
「おとうさんが……しんだ?」
マリアは今聞いたことが信じられなかった。マリアにとって父親は絶対的な存在で、それが死ぬなんてことは決してありえないことだった。
「これはわるいゆめ。そうにきまってる」
布団を頭まで被ると、自らに言い聞かせるように呟き続けた。そしてやがてその声も途切れ途切れになり、寝息に変わった。
「ただいま。夕飯はできているんでしょうね?」
夕方から降り出した雨で濡れたスカートを絞るエレナに、マリアは笑顔を向けた。
「うん、ちょうど今できるところだよ」
その言葉通り、マリアは今まさに石窯から焼きたてのニンを取り出しているところだった。
「珍しいわね。石窯を使うなんて」
「わたしがつくれるので、いしがまをつかうのなんてほとんどないから」
マリアは照れくさそうに笑った。
「そう、あなたにしては中々美味しいじゃない」
「ありがとう」
できあがったそれは、形が不格好なら、端も黒く焦げていたが、それでも満足だったのかエレナはここ最近では珍しく笑っていた。
「それにしても、ホント嫌な天気ね」
食卓の上から粗方食べ物が消えると、エレナは窓の外を見ながら憂鬱そうに呟いた。
「うん。なんかおそらがないてるみたい」
外はすっかりどしゃ降りになっており、滝のような音がしている。
「やめて。そんな不吉そうなことは言わないで」
「……ごめんなさい」
マリアとしては思ってることをそのまま口に出しただけで、なぜ怒られたのか理解できなかった。
深夜、マリアはトイレに起きた。
「あれ? あかりがついてる」
居間の明かりが点いていることに気づいたマリアは、母親が消し忘れたのかと思い、消そうと足を踏み入れた。
「──ですが」
だが聞こえるはずのない話し声が玄関の方から聞こえ、マリアは扉の影に慌てて隠れた。そして様子を窺う。
「嘘だって、嘘だって言ってよ!」
普段は決してマリアに涙を見せたことがないエレナが泣きながら見知らぬ兵士に詰め寄っている姿に、思わずマリアは目をパチクリさせる。
「いえ、残念ですが、アランさんは今日の夕方頃に亡くなられたと連絡が……」
兵士は表情をまったく動かさずに、ただ淡々と事実を告げた。
「なんで? どうしてよ!?」
エレナが崩れ落ちる姿を、マリアは無表情に見ていた。
「明後日、いえ、もう明日ですね。明日の朝、10時から今回の戦死者の合同葬儀を、城の隣、大聖堂の方で執り行いますので、ご参列ください」
兵士は淡々と言うことだけ言うと、エレナをそのままに出ていった。
「おとうさんが……しんだ?」
マリアは今聞いたことが信じられなかった。マリアにとって父親は絶対的な存在で、それが死ぬなんてことは決してありえないことだった。
「これはわるいゆめ。そうにきまってる」
布団を頭まで被ると、自らに言い聞かせるように呟き続けた。そしてやがてその声も途切れ途切れになり、寝息に変わった。
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