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第九章 夏季休業
すべての始まり(2)
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昼食作りも兼ねてベラに言われるままに料理をする。
「そうそう。中身が出ないようにね。火加減は中火をキープだよ」
石窯の火の熱さに全身汗だくになりながらも、マリアが完成させたのはお昼には少しばかし早い時間だった。
「1度着替えておいで。その服のままじゃ気持ち悪いだろう?」
「うん」
家に帰ってきたマリアを迎えたのは荒れ果てた居間だった。だがマリアが泥棒だと騒ぐことはない。
「またか……」
溜息を1つ吐くと、着替えることも忘れて無言で片付け始める。幸い被害は1部屋だけだったこともあり、10分もすればある程度見られるようになった。
「マリアちゃん、随分と時間がかかっているようだけど、どうかしたのかい?」
10分という短い時間といえどもベラに不審感を持たせるには十分だったようで、ちょうどマリアが一息ついたところで顔を覗かせた。
「まだ着替えていなかったのかい!? 風邪を引いたらどうするんだい!?」
ベラはマリアの格好にギョッとした顔をした。
「……ごめんなさい」
「今までいったい何をし……」
そこでベラは室内の異変に気がついた。いくらある程度は片付けたといえども、荒れていることは隠しようもない。
「泥棒でも入ったのかい!?」
「ちがう。いつものことだからだいじょうぶ」
「いつものことって……エレナさんがこれをやったのかい?」
マリアはコクリと頷いた。
「わたしがだめなできないこだから、おかあさんをおこらせちゃうの」
マリアの瞳は年齢に合わない憂いを帯びていた。
「駄目な子だなんて……そんなことはない。それどころかよく働く良い子だよ。うちの息子たちに爪の垢を煎じて飲ましてやりたいぐらいだ」
「……ほんとう?」
「ああ。お前さんが駄目な子なら、うちの遊び呆けてる息子たちなんて人ですらなくなっちまうさ」
そう言って早く着替えておいでと、マリアを急かした。
「冷めると美味しくなくなっちまうよ」
「うん」
ベラに励まされ、いつも通りとはいかないまでも、目に光が戻っていた。
「おいしい……」
ベラの家で作ったばかりのそれを口にし、マリアは瞳を輝かせた。
「それは良かったよ。何に入れるものでだいぶ味が変わるから色々試してごらん。中に何も入れないで、ソースか何かを付けるのも良いかもしれないね」
「うん、ありがとう」
子どもらしい無邪気な笑顔にベラはホッと息を吐いた。
「せんたくは……あさってかな?」
大して洗濯物が溜まっていない洗濯籠と、薄黒い空一面に広がる雲を一瞥し、マリアはそう尋ねた。
「そうだね。明後日には雨も上がってるだろうさ」
その後、食後のデザートにと出された焼き菓子を堪能している途中にベラの息子たちが帰ってき、マリアから奪おうとしてベラに怒られるという事件も発生したが、マリアにとってはいつもの日常の一部分でしかなかった。
「そうそう。中身が出ないようにね。火加減は中火をキープだよ」
石窯の火の熱さに全身汗だくになりながらも、マリアが完成させたのはお昼には少しばかし早い時間だった。
「1度着替えておいで。その服のままじゃ気持ち悪いだろう?」
「うん」
家に帰ってきたマリアを迎えたのは荒れ果てた居間だった。だがマリアが泥棒だと騒ぐことはない。
「またか……」
溜息を1つ吐くと、着替えることも忘れて無言で片付け始める。幸い被害は1部屋だけだったこともあり、10分もすればある程度見られるようになった。
「マリアちゃん、随分と時間がかかっているようだけど、どうかしたのかい?」
10分という短い時間といえどもベラに不審感を持たせるには十分だったようで、ちょうどマリアが一息ついたところで顔を覗かせた。
「まだ着替えていなかったのかい!? 風邪を引いたらどうするんだい!?」
ベラはマリアの格好にギョッとした顔をした。
「……ごめんなさい」
「今までいったい何をし……」
そこでベラは室内の異変に気がついた。いくらある程度は片付けたといえども、荒れていることは隠しようもない。
「泥棒でも入ったのかい!?」
「ちがう。いつものことだからだいじょうぶ」
「いつものことって……エレナさんがこれをやったのかい?」
マリアはコクリと頷いた。
「わたしがだめなできないこだから、おかあさんをおこらせちゃうの」
マリアの瞳は年齢に合わない憂いを帯びていた。
「駄目な子だなんて……そんなことはない。それどころかよく働く良い子だよ。うちの息子たちに爪の垢を煎じて飲ましてやりたいぐらいだ」
「……ほんとう?」
「ああ。お前さんが駄目な子なら、うちの遊び呆けてる息子たちなんて人ですらなくなっちまうさ」
そう言って早く着替えておいでと、マリアを急かした。
「冷めると美味しくなくなっちまうよ」
「うん」
ベラに励まされ、いつも通りとはいかないまでも、目に光が戻っていた。
「おいしい……」
ベラの家で作ったばかりのそれを口にし、マリアは瞳を輝かせた。
「それは良かったよ。何に入れるものでだいぶ味が変わるから色々試してごらん。中に何も入れないで、ソースか何かを付けるのも良いかもしれないね」
「うん、ありがとう」
子どもらしい無邪気な笑顔にベラはホッと息を吐いた。
「せんたくは……あさってかな?」
大して洗濯物が溜まっていない洗濯籠と、薄黒い空一面に広がる雲を一瞥し、マリアはそう尋ねた。
「そうだね。明後日には雨も上がってるだろうさ」
その後、食後のデザートにと出された焼き菓子を堪能している途中にベラの息子たちが帰ってき、マリアから奪おうとしてベラに怒られるという事件も発生したが、マリアにとってはいつもの日常の一部分でしかなかった。
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