血と肉とあばら骨のキーボード

田丸哲二

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第七現象・本条家への告発

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 地下室で名残惜しそうに順子を見送ったキズオは、サンドイッチを頬張り、ドリンクを飲みながらパソコンの前に椅子を移動して、血と肉とあばら骨のキーボードでチャットに新しい書き込みをして笑顔を浮かべた。

『呪い済み』

『誰だおまえは?』

『キズオ』

『柘榴の家紋は……木月家が受け継ぐ』


 サービスして名乗ったのに返信がなく、もう順子も家に着いた頃なので恐怖の時間を進める事にした。
 全てを明るみにし、自分が史上最強の能力者である事を世間に知らしめしてやる。


『木月康男だな?』

『アホか?シャッター通りを調べてみろ』


 スクールの教室でそのコメントを見た歌姫のメンバーは驚きを隠せず、書き込んだ圭介も困惑したが、すぐに血肉のキーボードで打ち込む。

『殺したのか?』

 骨のキーボタンにも慣れたのか、両手をフォームポジションに置いている。

『ああ、でも本物のナイフだぜ』

 安堂刑事は市役所に電話してメモに書いた情報を全員に見せたが、今度は署に連絡してシャッターの閉まった商店街を調べるように指示した。

 メモには木月家は28年前に千葉県へ引っ越し、祖父母と木月則雄、希江も他界し、息子の康男39歳しか生存していない。と書いてある。

 そして更に驚くべきコメントが「呪いの部屋」に書き込まれた。

『キズオは本条道成に生き埋めにされた赤ん坊だ。ゾンビみたいに墓場から蘇った亡霊さ』

 数時間後、スクールの事務室に木月家の戸籍謄本のコピーがFAXで送られ、コピー機から出てきた用紙の身分事項欄に「死亡」した子の名前があった。

・木月数男

 出産して一週間後に病死した事が記載されている。


 安堂刑事が市役所から戸籍謄本を取り寄せ、更に警察は町の商店街の廃業したショップの倉庫で木月康男と思われる死体を発見した。

 ナイフで上半身の皮膚を刻まれ、ラップで包まれた状態で椅子に座り、机の上に身分証と写真が数枚置いてあった。

「偽名を使っていたようだが、木月康男と思われる」

 手袋をした安堂刑事がその写真を見ながら圭介に電話し、周辺では警察官が慌ただしく動いていた。

「ご丁寧にも、本条京子と康男が密会した写真、本条道成が愛人とドライブした時の写真もあるぜ」

 車内で京子と康男がキスしている写真と、道成が愛人とベンツに乗り込む写真が数枚、血が付着して机の上に散らばっている。

「キズオが木月数男だとすると、兄康男の罪を糾弾して殺害したのか?」

「しかし、事故を誘発させたのはキズオだ」

 圭介はスクールの教室でFAXされた戸籍謄本を貼ったホワイトボードを見ながらスピーカーで話していた。
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