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11. これはデート?
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放課後、窓の外が騒がしい。何事かとマリーは聖堂の窓から確認した。校門の前に王子と取り巻きがいて、誰かを待っているようだ。
マリーはいつもの祈りと清掃を終え、建物の外に出た。
かさかさと、葉が重なり合う音が聞こえて見上げると、木の上に座っているユリーカがいた。
ユリーカの手に小鳥が止まると、小鳥はさえずり始めた。その姿に見惚れるマリーに向かってユリーカが言う。
「彼らは君を待っているようだよ」
マリーは顔をしかめた。ユリーカは人指し指を口元にあて、「しっ」と言った。重力なんてないかのように、軽やかに降りてきたユリーカは、マリーの手を取って裏門へ向かった。
二人は裏門から外に出てしばらく歩くと、ユリーカがもう大丈夫だと言った。
ここからすぐのところに、昼休みにマリーたちが話していたお菓子屋がある。ユリーカと一緒にお茶できたらどんなにいいかと、マリーは想像した。
「そういえば、昼休みに話していた店の近くだね。この後は時間ある?一緒に行ってみようか」
マリーは満面の笑みで頷いた。ユリーカのエスパー顔負けの気遣いに、マリーは幸せの絶頂だった。
木の匂いがするオープンしたばかりの店内に入ると、おもちゃのようにカラフルなスイーツが並んでいた。二人は乙女の夢がつまったようにファンシーな内装の食事スペースに通してもらうと、お茶とスイーツをそれぞれ注文した。
マリーは紅茶を飲みながら、思いきってユリーカに質問した。ユリーカのことは何でも知りたいのだ。
「ユリーカ様は学校以外の時間は何をしているんですか?その、神様としてのお仕事とか、そういったことはやらなくていいんですか?」
声を落としたマリーに合わせて、ユリーカはマリーの耳元でそっと言った。ユリーカの目は面白そうに揺れている。
「特にこれといって仕事はないんだ。気ままに空や海を散歩したり、たまに人と話したり、そういったかんじかな」
ユリーカの規格外で自由すぎる発言に、マリーはどうコメントしたらいいのか迷ってしまった。薄々感じていたけど、ユリーカはとらえどころがない。
マリーは不思議な魅力を放つユリーカの瞳を見つめながら、緊張した声で言った。
「あたしが助けてとお願いしたとはいえ、どうして制服姿になってきてくれたんですか?」
「見守るって言ったし、楽しそうだったから」
穏やかな表情で答えたユリーカに、マリーは肩を落とした。何を期待したというのか。聖女にもなっていないのに、まだまだこれからである。
二人は店の外に出た。見上げると、不安定な空模様だ。上空は厚い曇に覆われ、今にも雨が降り出しそうだ。だけど前方を見れば、そこには青空が広がっている。
「さあ、雨に降られる前に帰ろう。彼らはもう帰っているだろうしね。ぼくが家まで送ってあげるよ」
ユリーカの差し出した手を取ると、マリーは試すように言った。
「ユリーカ様、今日はありがとうございました。デートみたいで、楽しかったですね?これからも、あたしをずっとそばで守ってください」
一方その頃、王子とその取り巻きのお花様たちは雨に降られながら、マリーが学校から出てくるのを待っていた。正確には、待ちくたびれていた。
「くそっ!なんであいつはいつまで経っても出てこないんだ!?はっくしょん!」
マリーはいつもの祈りと清掃を終え、建物の外に出た。
かさかさと、葉が重なり合う音が聞こえて見上げると、木の上に座っているユリーカがいた。
ユリーカの手に小鳥が止まると、小鳥はさえずり始めた。その姿に見惚れるマリーに向かってユリーカが言う。
「彼らは君を待っているようだよ」
マリーは顔をしかめた。ユリーカは人指し指を口元にあて、「しっ」と言った。重力なんてないかのように、軽やかに降りてきたユリーカは、マリーの手を取って裏門へ向かった。
二人は裏門から外に出てしばらく歩くと、ユリーカがもう大丈夫だと言った。
ここからすぐのところに、昼休みにマリーたちが話していたお菓子屋がある。ユリーカと一緒にお茶できたらどんなにいいかと、マリーは想像した。
「そういえば、昼休みに話していた店の近くだね。この後は時間ある?一緒に行ってみようか」
マリーは満面の笑みで頷いた。ユリーカのエスパー顔負けの気遣いに、マリーは幸せの絶頂だった。
木の匂いがするオープンしたばかりの店内に入ると、おもちゃのようにカラフルなスイーツが並んでいた。二人は乙女の夢がつまったようにファンシーな内装の食事スペースに通してもらうと、お茶とスイーツをそれぞれ注文した。
マリーは紅茶を飲みながら、思いきってユリーカに質問した。ユリーカのことは何でも知りたいのだ。
「ユリーカ様は学校以外の時間は何をしているんですか?その、神様としてのお仕事とか、そういったことはやらなくていいんですか?」
声を落としたマリーに合わせて、ユリーカはマリーの耳元でそっと言った。ユリーカの目は面白そうに揺れている。
「特にこれといって仕事はないんだ。気ままに空や海を散歩したり、たまに人と話したり、そういったかんじかな」
ユリーカの規格外で自由すぎる発言に、マリーはどうコメントしたらいいのか迷ってしまった。薄々感じていたけど、ユリーカはとらえどころがない。
マリーは不思議な魅力を放つユリーカの瞳を見つめながら、緊張した声で言った。
「あたしが助けてとお願いしたとはいえ、どうして制服姿になってきてくれたんですか?」
「見守るって言ったし、楽しそうだったから」
穏やかな表情で答えたユリーカに、マリーは肩を落とした。何を期待したというのか。聖女にもなっていないのに、まだまだこれからである。
二人は店の外に出た。見上げると、不安定な空模様だ。上空は厚い曇に覆われ、今にも雨が降り出しそうだ。だけど前方を見れば、そこには青空が広がっている。
「さあ、雨に降られる前に帰ろう。彼らはもう帰っているだろうしね。ぼくが家まで送ってあげるよ」
ユリーカの差し出した手を取ると、マリーは試すように言った。
「ユリーカ様、今日はありがとうございました。デートみたいで、楽しかったですね?これからも、あたしをずっとそばで守ってください」
一方その頃、王子とその取り巻きのお花様たちは雨に降られながら、マリーが学校から出てくるのを待っていた。正確には、待ちくたびれていた。
「くそっ!なんであいつはいつまで経っても出てこないんだ!?はっくしょん!」
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