義妹に王子を横取りされて婚約破棄された悪役令嬢は、聖女を目指す

ともり

文字の大きさ
11 / 21

11. これはデート?

しおりを挟む
 放課後、窓の外が騒がしい。何事かとマリーは聖堂の窓から確認した。校門の前に王子と取り巻きがいて、誰かを待っているようだ。

 マリーはいつもの祈りと清掃を終え、建物の外に出た。
かさかさと、葉が重なり合う音が聞こえて見上げると、木の上に座っているユリーカがいた。
ユリーカの手に小鳥が止まると、小鳥はさえずり始めた。その姿に見惚れるマリーに向かってユリーカが言う。

「彼らは君を待っているようだよ」

マリーは顔をしかめた。ユリーカは人指し指を口元にあて、「しっ」と言った。重力なんてないかのように、軽やかに降りてきたユリーカは、マリーの手を取って裏門へ向かった。

 二人は裏門から外に出てしばらく歩くと、ユリーカがもう大丈夫だと言った。
ここからすぐのところに、昼休みにマリーたちが話していたお菓子屋がある。ユリーカと一緒にお茶できたらどんなにいいかと、マリーは想像した。

「そういえば、昼休みに話していた店の近くだね。この後は時間ある?一緒に行ってみようか」

マリーは満面の笑みで頷いた。ユリーカのエスパー顔負けの気遣いに、マリーは幸せの絶頂だった。

 木の匂いがするオープンしたばかりの店内に入ると、おもちゃのようにカラフルなスイーツが並んでいた。二人は乙女の夢がつまったようにファンシーな内装の食事スペースに通してもらうと、お茶とスイーツをそれぞれ注文した。

 マリーは紅茶を飲みながら、思いきってユリーカに質問した。ユリーカのことは何でも知りたいのだ。

「ユリーカ様は学校以外の時間は何をしているんですか?その、神様としてのお仕事とか、そういったことはやらなくていいんですか?」

声を落としたマリーに合わせて、ユリーカはマリーの耳元でそっと言った。ユリーカの目は面白そうに揺れている。

「特にこれといって仕事はないんだ。気ままに空や海を散歩したり、たまに人と話したり、そういったかんじかな」

ユリーカの規格外で自由すぎる発言に、マリーはどうコメントしたらいいのか迷ってしまった。薄々感じていたけど、ユリーカはとらえどころがない。
マリーは不思議な魅力を放つユリーカの瞳を見つめながら、緊張した声で言った。

「あたしが助けてとお願いしたとはいえ、どうして制服姿になってきてくれたんですか?」
「見守るって言ったし、楽しそうだったから」

穏やかな表情で答えたユリーカに、マリーは肩を落とした。何を期待したというのか。聖女にもなっていないのに、まだまだこれからである。

 二人は店の外に出た。見上げると、不安定な空模様だ。上空は厚い曇に覆われ、今にも雨が降り出しそうだ。だけど前方を見れば、そこには青空が広がっている。

「さあ、雨に降られる前に帰ろう。彼らはもう帰っているだろうしね。ぼくが家まで送ってあげるよ」

ユリーカの差し出した手を取ると、マリーは試すように言った。

「ユリーカ様、今日はありがとうございました。デートみたいで、楽しかったですね?これからも、あたしをずっとそばで守ってください」


 一方その頃、王子とその取り巻きのお花様たちは雨に降られながら、マリーが学校から出てくるのを待っていた。正確には、待ちくたびれていた。

「くそっ!なんであいつはいつまで経っても出てこないんだ!?はっくしょん!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

悪役令嬢ですが、副業で聖女始めました

碧井 汐桜香
ファンタジー
前世の小説の世界だと気がついたミリアージュは、小説通りに悪役令嬢として恋のスパイスに生きることに決めた。だって、ヒロインと王子が結ばれれば国は豊かになるし、騎士団長の息子と結ばれても防衛力が向上する。あくまで恋のスパイス役程度で、断罪も特にない。ならば、悪役令嬢として生きずに何として生きる? そんな中、ヒロインに発現するはずの聖魔法がなかなか発現せず、自分に聖魔法があることに気が付く。魔物から学園を守るため、平民ミリアとして副業で聖女を始めることに。……決して前世からの推し神官ダビエル様に会うためではない。決して。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...