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第3章 リースナーの町 ダンジョン攻略

第41話 リースナーの町 ダンジョン攻略終了

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「そろそろ、大丈夫かな? ドラゴンもいないし自宅へ帰りたいんだけど」

 思いっきり2人ににらまれてしまった。
 感動の再会に水を差すようで悪いけど、私はトイレを我慢していたのだ。
 生理現象は止められない。
 こらから時間は沢山あるんだから、ダンジョンにずっといる必要もないしね。

「じゃあ帰ろう!」

 兄が同意し旭が後に続く。
 
「了解!」

 先程出した四人掛けテーブルと椅子、コーヒーカップ等を収納。
 旭へもうこのダンジョンには戻らないと伝え、忘れ物がないよう収納してもらう。
 そうして私達はホーム内の自宅へと帰った。

「取りえず、シャワーを浴びさせてほしい!」

 自宅に着いた途端そう旭が言うから、入っている間に着替えを用意する。
 旭の身長は175cmだ。
 アイテムBOXから体に合いそうな物を選ぶ。
 脱衣場に置き、兄と2人でこれからどうするのか話し合う。
 兄は居酒屋へいきたいらしい。
 6年振りに再会した親友と、お酒をみ交わしたいんだろう。

 シャワー中の旭を待ち、近所の徒歩でいける居酒屋へ向かった。
 2人は飲むので、飲酒運転はさせられない。
 ちなみにホーム内の全ての店は24時間営業で現在深夜1時。
  人がいないため人件費も掛からないしね。
 昼夜逆転生活を送っているから、24時間営業の店は嬉しい。

 電子メニューから2人は飲み放題コースを選んでいる。
 私はグレープフルーツジュースだ。
 飲めないから飲み放題コースを選ぶと損するんだよね~。
 店によっては人数分頼まなきゃいけない場合もある。
 そうすると、1杯が1,500円くらいになるので居酒屋はいきたくない。
 そんなにジュースばっかり飲めないよ!

 人数分を頼まなきゃいけないお店は、飲めない人も考えてほしいと思う。 
 枝豆・手羽先・だし巻き・ホッケ焼き・揚げ出し豆腐・串カツ盛り合わせ・焼き鳥盛り合わせを、電子メニューで注文。
 瞬時にテーブルの上へ置かれた飲み物や料理を見て、旭はかなり驚いていた。

「まずは、乾杯~!」
 
「「乾杯~!」」

「あ~ビールが美味しい~!!」

 旭が生ビールを一気飲みしてるよ。
 11年振りだからね、どんどん飲んじゃって。
 兄も親友と一緒にいられて嬉しいのか、いつもよりビールが進んでいる。
 旭が亡くなった時の落ち込みようは半端なかったからなぁ。
 職場も一緒だったし寂しかったのだろう。
 私は兄より、頻繁ひんぱんに会う機会がなかった。
 
 その後は飲んで笑って泣いてと大騒ぎだ。
 今は男2人で抱き合い泣いている。
 これだから酔っぱらいは……。
 私はテーブルの上に2万円置き、しれっと1人で帰宅した。
 どうせあのまましばらく飲んだ後、帰りにラーメンでも食べてくるだろう。
 兄の部屋に泊まるだろうし問題ない。
 ああ、部屋に布団だけ敷いておくか。
 素面しらふのままじゃ付き合いきれないわ。

 自宅に戻ると深夜2時。
 いつもならまだダンジョン攻略中なので眠くならない。
 私同様、この世界にきている人間がいるなんて思わなかった。
 でも出会ったのが知り合いとは、なんだか不思議な運命に導かれているような気もする。
 もしかしたら、この世界に……。
 
 翌日午後3時を過ぎる頃、2人は帰ってきた。
 昨日の深夜1時から帰宅するまで14時間。
 完全に二日酔いだなこりゃ。
 兄にもしいけそうなら明日の朝5時、ダンジョン地下1階の安全地帯で治療してほしいと伝え、二日酔いの薬を渡しておいた。
 昨日渡した残りのお金で、お腹が空いたらなんか食べるでしょ。

 翌日、朝5時。
 兄が冒険者の恰好かっこうをしていたから、二日酔いは治ったのかなと思い地下1階の安全地帯へ向かった。
 いつものように女性冒険者を治療した後、冒険者ギルドへ。
 地下1階~地下9階の魔物しかないので、解体場のサムおじさんは少し寂しそうだったけどね。
 きっと地下10階の魔物素材を期待しながら待っていたんだろう。

 いや本当に、ドラゴンを見せてあげたかったよ!
 旭を見せても仕方ないしなぁ~。
 これでちゃんとダンジョンを出た事になった。
 その後、自宅へ帰る。
 
「お兄ちゃん。ダンジョン終わっちゃったし、もうこの町で用はないから他のダンジョンへいこう! まだ自宅、あきらめてないんでしょ?」

「そうだな、レベル上げをしないと」

「じゃあ、やっぱり迷宮都市じゃない?」

「迷宮都市か……。最深攻略組が18階にいるらしいぞ?」

 迷宮都市!
 なんだか言葉の響きが素敵だ。
 地下30階層までのダンジョンらしいから、楽しみで仕方ない。
 宝箱や隠し部屋はあるのかしら?
 そして地下30階にいるのは、今度こそドラゴンがいいなぁ~。
 何とかテイム出来ないものか……。

 地下10階から出現するのはどんな魔物だろう。
 考えるだけでワクワクしてくる。
 リースナーのダンジョンは迷路状だったけど、小説では森や海のダンジョンとかもあるんだよね~。
 魔物も水生生物がいるかも知れない。
 大きな海老や蟹の魔物が食べ放題だよ!

「この町ともお別れだね。今後は3人で頑張ろう!」

「早くレベル30まで上げてくれ!」

「了解! 旭に明日の朝、出発すると伝えておいてね」

 そうして私達は旭と共に、2年間過ごしたリースナーの町を出た。
 これからハンフリー公爵領を出て迷宮都市へ向かうのだ。
 町馬車に乗る時は、以前路上生活をしていた子供達が泣きながら手を振ってくれた。
 私も涙をこぼし手を振り返す。
 皆、大きくなったね。

 そして仲良くなった女性冒険者達や、最深攻略組の冒険者達も見送ってくれた。
 兄の方を見て泣いてる女性が多いような?
 何故なぜかギルドマスターも大泣きしていた。
 その隣で解体場のサムおじさんがなぐさめている姿が見える。
 最初にきた時は治安の悪い町だと思ったけどさ。
 いい思い出も沢山出来たよ。

 ああそれから2人のクランリーダーは、クラン内にいる人間を調べあげ犯人を捜し衛兵所へ引き渡していた。
 かなり違法な事をしていたらしく、奴隷商も芋づる式に捕まったそうだ。
 良かった、良かった。

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