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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第345話 椎名 香織 5 サリナが雫ちゃんだった!?
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再び継母付きのメイド(カリナ)が部屋に入ってきて、ピンク色のドレスを着ている事を確認するとリビングに行くように言われる。
お姉ちゃんは今日、虐待されている事をお父様に話す心算らしい。
はなから時間を無駄にしない、その合理的な判断に感心してしまう。
継母から、これ以上虐待されるのを防ぎたいんだろう。
階段を降りてリビングに入ると、その場には既に継母と継子も揃っていた。
初めて会うお父様に無言はまずいと思ったらしく挨拶をする。
日本では父親の事を『お父さん』と呼んでいたけど、公爵令嬢のリーシャに合わせてか『お父様』と呼びかけたので不審には思われなかったみたい。
危ない、危ない。
普段と違う敬称で呼んだら、全員に不審な目で見られる所だった。
無難に挨拶を終えて、お父様の隣の席に座らせられる。
正面は悪役令嬢のサリナだ。
んんっ?
サリナの輪郭に、よく知った姿がブレて見えるんだけど!?
昨日まで普通だったのに、突然どうしてこんな事になってるの!
この子、夢で見た双子達の幼馴染で初恋相手の雫ちゃんだよね?
えっ、もしかして最悪なタイミングで転生した記憶が戻ったの?
あ~、非常にマズイっ!!
お姉ちゃん、今日『ざまぁ』する気満々なのに~。
これじゃぁ、雫ちゃんだけ擁護する事が出来ないよ。
雫ちゃんの姿が見えるのは、私が魂だけの状態だからかな……。
お姉ちゃん、サリナは雫ちゃんだから追い出さないであげて!
そう、いくら思っても私の声は届かない。
私1人が焦燥に駆られていると、どんどん家族の会話が進んでいく。
気が付くと、お父様が王都のプレゼントを2人に渡している所だった。
あぁ、それ毎年同じ物だよね……。
部屋にリボンが5個あるよ。
そして12歳の誕生日プレゼントは、お決まりの『ぬいぐるみ』なんだろうな。
お父様が服を着替えた後に一緒に昼食を食べようと言って、この場は一旦お開きになった。
今度はメイド部屋ではない、本来の私の部屋にナターシャが案内してくれた。
ナターシャが部屋を出ていくと、お姉ちゃんはチャンスとばかりにお父様の部屋に突撃するようだ。
計画通りに虐待を告白するのは勿論嬉しい事なんだけど、先程の雫ちゃんの事が気になって仕方ない。
あの子は心臓が弱くて、とても制限された生活を送っていたから……。
体育や運動会に遠足と、参加出来ない行事がいくつもあった。
普通は癇癪を起こすような場合でも、雫ちゃんは我儘を言わない我慢強い性格で見ていて可哀想に思っていたのだ。
きっとこれ以上、家族に迷惑を掛けたくなかったんだろうな。
とても笑顔が可愛くて優しい、胸が大きな子だった。
双子達はそんな雫ちゃんの事が大好きで、病院に入院した時は寂しい思いをしないように必ずお見舞いに行ってあげていたんだよ。
遥ちゃんは自分が女顔なのを利用して、よく雫ちゃんに抱き着いていたけど……。
あれは絶対、胸の感触を楽しんでいたに違いない。
だって見ていた雅ちゃんが呆れてたもん。
沙良お姉ちゃんは双子達が子供の頃に、よく雫ちゃんに御揃いのワンピースを買って着せていたっけ。
双子達が男の子だとバレた時は、ひと悶着あったみたいだけどね。
高校生になると、雫ちゃんの容体は更に悪くなっていった。
彼女は結局、高校の制服に一度も袖を通す事なく亡くなってしまうのだ。
賢也お兄ちゃんと親友の旭さんが、彼女の心臓を治そうと必死で勉強して外科医になった矢先の出来事だった。
18歳で亡くなってしまった時は、面識の無い私でさえ夢の中でその死を悼んで泣いた。
幼馴染の双子達は、棺から長い間離れる事が出来ずに号泣していたくらいだ。
そんな雫ちゃんが、私と同じ異世界に転生しているとは思わなかったよ。
しかも時間軸が相当ズレている。
彼女に生前の記憶はあるのかな?
雫ちゃんの事を思い出している間に、沙良お姉ちゃんはお父様の部屋に入っていた。
そしてついに、私が言えなかった虐待の話をし始める。
涙を流しながら迫真の演技するお姉ちゃんに、私は内心で拍手を送った。
話を聞いたお父様が困惑している様子を感じたのか、証拠を見せると言って突然服を脱ぎ出してしまう。
お姉ちゃん!
思い切りよすぎだよ!
あぁ、お願いだからパンツは脱がないで~!!
人の体だと思って、豪快に全裸になる事はないでしょ!?
お父様の前で滅茶苦茶、恥ずかしいんですけど……。
一緒にお風呂に入った記憶も無いので、多分お父様が私の裸を見るのは赤ちゃんの頃以来だと思う。
虐待を信じてもらえたのは良かったけれど、本当にその方法しか無かったのかな。
私は暫く遠い目になり放心状態だった。
お父様はとても怒っていたみたいだけど、私に言わせれば今更感が半端ない。
この1年、気付く事が出来なかった時点で父親失格だと思うよ。
何度も送った私からのSOSは、一度も届かなかったね……。
その後、ナターシャに話を聞きにいって証拠を集めたお父様は、継母を糾弾し継子のサリナと継母が入れ替えた執事・メイド達と伴に家から追い出した。
長い間、私を虐待していた女性が言い訳も出来ずに家から護衛に引きずられる姿を見て、やっと胸がすく思いをする。
実に見事な『ざまぁ』だった!
本当にお姉ちゃんには感謝してもしきれない。
これでもう一生、継母の顔を見なくて済む。
でも一緒に雫ちゃんが追い出される事を止める事は出来ず、この予想外の展開にどうしていいか分からない。
最初からすれ違ってしまったのは、私がお姉ちゃんを召喚したからなの?
悪役令嬢に転生した雫ちゃんが辿る運命は、最後が塔への一生幽閉だった。
シナリオを変えてしまったから、もう悪役令嬢として過ごす事はないと思う。
前世より健康になった体で、逞しく冒険者として生きる事を願おう。
雫ちゃん、この世界ではやりたかった事を我慢しないでいいよ。
もう家族のために良い子を演じる必要なんてないんだからね!
あの毒親とは、さっさと縁を切って1人で生きていけるように頑張って……。
お姉ちゃんも冒険者として生きると言っていたから、いつかどこかで再会出来る日が来ると信じているよ。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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お姉ちゃんは今日、虐待されている事をお父様に話す心算らしい。
はなから時間を無駄にしない、その合理的な判断に感心してしまう。
継母から、これ以上虐待されるのを防ぎたいんだろう。
階段を降りてリビングに入ると、その場には既に継母と継子も揃っていた。
初めて会うお父様に無言はまずいと思ったらしく挨拶をする。
日本では父親の事を『お父さん』と呼んでいたけど、公爵令嬢のリーシャに合わせてか『お父様』と呼びかけたので不審には思われなかったみたい。
危ない、危ない。
普段と違う敬称で呼んだら、全員に不審な目で見られる所だった。
無難に挨拶を終えて、お父様の隣の席に座らせられる。
正面は悪役令嬢のサリナだ。
んんっ?
サリナの輪郭に、よく知った姿がブレて見えるんだけど!?
昨日まで普通だったのに、突然どうしてこんな事になってるの!
この子、夢で見た双子達の幼馴染で初恋相手の雫ちゃんだよね?
えっ、もしかして最悪なタイミングで転生した記憶が戻ったの?
あ~、非常にマズイっ!!
お姉ちゃん、今日『ざまぁ』する気満々なのに~。
これじゃぁ、雫ちゃんだけ擁護する事が出来ないよ。
雫ちゃんの姿が見えるのは、私が魂だけの状態だからかな……。
お姉ちゃん、サリナは雫ちゃんだから追い出さないであげて!
そう、いくら思っても私の声は届かない。
私1人が焦燥に駆られていると、どんどん家族の会話が進んでいく。
気が付くと、お父様が王都のプレゼントを2人に渡している所だった。
あぁ、それ毎年同じ物だよね……。
部屋にリボンが5個あるよ。
そして12歳の誕生日プレゼントは、お決まりの『ぬいぐるみ』なんだろうな。
お父様が服を着替えた後に一緒に昼食を食べようと言って、この場は一旦お開きになった。
今度はメイド部屋ではない、本来の私の部屋にナターシャが案内してくれた。
ナターシャが部屋を出ていくと、お姉ちゃんはチャンスとばかりにお父様の部屋に突撃するようだ。
計画通りに虐待を告白するのは勿論嬉しい事なんだけど、先程の雫ちゃんの事が気になって仕方ない。
あの子は心臓が弱くて、とても制限された生活を送っていたから……。
体育や運動会に遠足と、参加出来ない行事がいくつもあった。
普通は癇癪を起こすような場合でも、雫ちゃんは我儘を言わない我慢強い性格で見ていて可哀想に思っていたのだ。
きっとこれ以上、家族に迷惑を掛けたくなかったんだろうな。
とても笑顔が可愛くて優しい、胸が大きな子だった。
双子達はそんな雫ちゃんの事が大好きで、病院に入院した時は寂しい思いをしないように必ずお見舞いに行ってあげていたんだよ。
遥ちゃんは自分が女顔なのを利用して、よく雫ちゃんに抱き着いていたけど……。
あれは絶対、胸の感触を楽しんでいたに違いない。
だって見ていた雅ちゃんが呆れてたもん。
沙良お姉ちゃんは双子達が子供の頃に、よく雫ちゃんに御揃いのワンピースを買って着せていたっけ。
双子達が男の子だとバレた時は、ひと悶着あったみたいだけどね。
高校生になると、雫ちゃんの容体は更に悪くなっていった。
彼女は結局、高校の制服に一度も袖を通す事なく亡くなってしまうのだ。
賢也お兄ちゃんと親友の旭さんが、彼女の心臓を治そうと必死で勉強して外科医になった矢先の出来事だった。
18歳で亡くなってしまった時は、面識の無い私でさえ夢の中でその死を悼んで泣いた。
幼馴染の双子達は、棺から長い間離れる事が出来ずに号泣していたくらいだ。
そんな雫ちゃんが、私と同じ異世界に転生しているとは思わなかったよ。
しかも時間軸が相当ズレている。
彼女に生前の記憶はあるのかな?
雫ちゃんの事を思い出している間に、沙良お姉ちゃんはお父様の部屋に入っていた。
そしてついに、私が言えなかった虐待の話をし始める。
涙を流しながら迫真の演技するお姉ちゃんに、私は内心で拍手を送った。
話を聞いたお父様が困惑している様子を感じたのか、証拠を見せると言って突然服を脱ぎ出してしまう。
お姉ちゃん!
思い切りよすぎだよ!
あぁ、お願いだからパンツは脱がないで~!!
人の体だと思って、豪快に全裸になる事はないでしょ!?
お父様の前で滅茶苦茶、恥ずかしいんですけど……。
一緒にお風呂に入った記憶も無いので、多分お父様が私の裸を見るのは赤ちゃんの頃以来だと思う。
虐待を信じてもらえたのは良かったけれど、本当にその方法しか無かったのかな。
私は暫く遠い目になり放心状態だった。
お父様はとても怒っていたみたいだけど、私に言わせれば今更感が半端ない。
この1年、気付く事が出来なかった時点で父親失格だと思うよ。
何度も送った私からのSOSは、一度も届かなかったね……。
その後、ナターシャに話を聞きにいって証拠を集めたお父様は、継母を糾弾し継子のサリナと継母が入れ替えた執事・メイド達と伴に家から追い出した。
長い間、私を虐待していた女性が言い訳も出来ずに家から護衛に引きずられる姿を見て、やっと胸がすく思いをする。
実に見事な『ざまぁ』だった!
本当にお姉ちゃんには感謝してもしきれない。
これでもう一生、継母の顔を見なくて済む。
でも一緒に雫ちゃんが追い出される事を止める事は出来ず、この予想外の展開にどうしていいか分からない。
最初からすれ違ってしまったのは、私がお姉ちゃんを召喚したからなの?
悪役令嬢に転生した雫ちゃんが辿る運命は、最後が塔への一生幽閉だった。
シナリオを変えてしまったから、もう悪役令嬢として過ごす事はないと思う。
前世より健康になった体で、逞しく冒険者として生きる事を願おう。
雫ちゃん、この世界ではやりたかった事を我慢しないでいいよ。
もう家族のために良い子を演じる必要なんてないんだからね!
あの毒親とは、さっさと縁を切って1人で生きていけるように頑張って……。
お姉ちゃんも冒険者として生きると言っていたから、いつかどこかで再会出来る日が来ると信じているよ。
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