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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第501話 迷宮都市 両親の召喚 17 武術稽古&お礼の『すき焼き』
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ガーグ老から報告を聞き工房を出ようとする際、呼び止められた。
父と話がしたいので、工房にくるよう言ってほしいらしい。
私は了解し、工房から出た後で父に伝えた。
父は分かったと言い、ガーグ老のいる工房へと歩き出していく。
2人は剣を交えたお陰で、何か分かり合っていたみたいだった。
まぁ実際の年齢も近いので、話もし易いだろうしね。
さて、大人数の昼食の準備を始めよう。
材料は昨日切ってあるから、テーブルの上に魔道調理器と鉄鍋を置き陶器の壺に入った『すき焼きのタレ』を用意する。
食べた事のあるご老人達は、以前兄達が作り方を教えているので問題ない。
新しく増えた四男と五男にお嫁さん2人は、初めて食べる事になる。
昼食の準備が終わる頃、ガーグ老と父が工房から出てきた。
父の表情が少し険しくなっている。
あぁ、きっとガーグ老から話を聞いたんだろう。
父に話しておいた方が良いと判断したらしい。
父が私の方に近付き小声で質問してきた。
「沙良。お前、本当はLvが幾つあるんだ?」
えっ!?
もしかしてガーグ老は私のLvが上がっている事に気付き、父に話してしまったの?
Lvが上がるとそれに付随してHPも高くなるから、当然力も強くなる。
普段は制御しているけど、ガーグ老との稽古では本気を出しているのでバレてしまったようだ。
「あ~、お兄ちゃんには内緒だよ? 今はLv45になってる」
「それなら早く樹を召喚した方がいい。アシュカナ帝国の王は、お前の事を嫁にしたいみたいじゃないか。樹が聞いたらキレそうだ」
?
旭のお父さんが、なんで私の事を気にするのかは疑問だけど、父は私の安全を確保するために親友を早く呼びたいらしい。
私達は姿が若くなっているから、大人の男性がいる方が確かに安心材料にはなるだろう。
そういえば、旭のお父さんもやけに体格が良かったんだよね。
日本にいる時、一緒に武術を習っていたんだろうか?
それなら、召喚した後でLv上げをすれば基礎値が高いのでMPとHPが直ぐに増えるか……。
これは、兄のお説教を覚悟した方が良いかしら?
「えっと……、お兄ちゃんに不審に思われない方法を一緒に考えてくれないかな?」
「賢也へ秘密にするのは難しいだろうに……、よく今までバレなかったな。まぁ、一緒に考えてやろう」
やっぱり兄のお説教を受けるのは嫌なので、父にお願いする事にした。
後で、内緒にしていた理由も話し協力してもらおう。
アシュカナ帝国との戦争が迫っている事を知ったら、父は兄と同じ決断をするだろうか……。
私達はその場での話を終え、テーブル席に着いた。
「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『すき焼き』です。最後に『うどん』を入れるので、食べ過ぎないようにして下さいね。それではいただきましょう」
「いただきます!」
私は初めて食べる4人の席に移動し、説明をしながら『すき焼き』を作ってあげる。
4人に生卵は要らないと言われてしまった。
最初に火が通ったミノタウロスの肉を取り分けてあげると、箸を器用に使用し口にした全員が感極まった様子で目をうるうるさせている。
「これをずっと食べられるのなら……嫁になるのも悪くない」
そう言って五男のお嫁さんは、ジルさんに追加の肉を入れるよう催促していた。
お嫁さん……なんですよね?
どうやら尻に敷かれているようで、鍋奉行は夫の役目になりそうだ。
後はお任せし、私は自分の席に戻ろう。
おや?
旭の箸が止まっている。
今日は扱かれ過ぎて食欲がないみたい。
代わりにお肉を雫ちゃんが沢山食べているようね。
旭のお母さんも稽古でお腹が空いたのか、いつもより速いペースで食べている。
私の家族の分は、兄が鍋奉行をしてくれていた。
うん、今日もミノタウロスのお肉が柔らかくて美味しいなぁ~。
最後に締めの『うどん』を食べると、お腹が一杯になる。
食事が終わり、いそいそとガーグ老達が将棋の準備を始め出す。
稽古の後で、将棋を指すのが楽しみで仕方ないらしい。
父は祖父から将棋を習っていたので、相当強いと思いますよ?
ガーグ老達の良い相手になるだろう。
将棋が指せない母と雫ちゃんに旭のお母さんは、私と一緒にホームに帰る事にした。
ガーグ老に別れの挨拶をして、シルバー・フォレスト・ボブと共に工房を出る。
異世界の家まで3匹の背中に乗って移動し、庭からホームの自宅に戻ってきた。
母を実家まで送り届けると、私はサヨさんからプレゼントされたオーダーメイドのドレスと鹿革の靴をアイテムBOXから取り出す。
これからリーシャの父親である公爵に会いに行く心算なのだ。
明日からダンジョンでの攻略を開始するため、今しか時間は取れない。
皆には今日、公爵と決別しに行く事を伝えてある。
両親が話を聞き引き留められる事を心配していたけど、私には移転の能力があるので大丈夫だと安心させた。
公爵とは家を出奔してから、実に8年振りの再会となる。
リーシャが既に亡くなっていると伝えにいく事に、自然と顔が厳しいものになっていく。
リーシャが妹の香織ちゃんだと知らなければ、私はもっと冷静でいられただろう。
でも事実を知った後では、とても穏やかではいられない。
黒いドレスに着替えながら、この戦闘服を身に纏い対峙する事になる公爵へ怒りを募らせていった。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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父と話がしたいので、工房にくるよう言ってほしいらしい。
私は了解し、工房から出た後で父に伝えた。
父は分かったと言い、ガーグ老のいる工房へと歩き出していく。
2人は剣を交えたお陰で、何か分かり合っていたみたいだった。
まぁ実際の年齢も近いので、話もし易いだろうしね。
さて、大人数の昼食の準備を始めよう。
材料は昨日切ってあるから、テーブルの上に魔道調理器と鉄鍋を置き陶器の壺に入った『すき焼きのタレ』を用意する。
食べた事のあるご老人達は、以前兄達が作り方を教えているので問題ない。
新しく増えた四男と五男にお嫁さん2人は、初めて食べる事になる。
昼食の準備が終わる頃、ガーグ老と父が工房から出てきた。
父の表情が少し険しくなっている。
あぁ、きっとガーグ老から話を聞いたんだろう。
父に話しておいた方が良いと判断したらしい。
父が私の方に近付き小声で質問してきた。
「沙良。お前、本当はLvが幾つあるんだ?」
えっ!?
もしかしてガーグ老は私のLvが上がっている事に気付き、父に話してしまったの?
Lvが上がるとそれに付随してHPも高くなるから、当然力も強くなる。
普段は制御しているけど、ガーグ老との稽古では本気を出しているのでバレてしまったようだ。
「あ~、お兄ちゃんには内緒だよ? 今はLv45になってる」
「それなら早く樹を召喚した方がいい。アシュカナ帝国の王は、お前の事を嫁にしたいみたいじゃないか。樹が聞いたらキレそうだ」
?
旭のお父さんが、なんで私の事を気にするのかは疑問だけど、父は私の安全を確保するために親友を早く呼びたいらしい。
私達は姿が若くなっているから、大人の男性がいる方が確かに安心材料にはなるだろう。
そういえば、旭のお父さんもやけに体格が良かったんだよね。
日本にいる時、一緒に武術を習っていたんだろうか?
それなら、召喚した後でLv上げをすれば基礎値が高いのでMPとHPが直ぐに増えるか……。
これは、兄のお説教を覚悟した方が良いかしら?
「えっと……、お兄ちゃんに不審に思われない方法を一緒に考えてくれないかな?」
「賢也へ秘密にするのは難しいだろうに……、よく今までバレなかったな。まぁ、一緒に考えてやろう」
やっぱり兄のお説教を受けるのは嫌なので、父にお願いする事にした。
後で、内緒にしていた理由も話し協力してもらおう。
アシュカナ帝国との戦争が迫っている事を知ったら、父は兄と同じ決断をするだろうか……。
私達はその場での話を終え、テーブル席に着いた。
「お待たせしました。皆さん、今日もありがとうございます。お昼のメニューは、『すき焼き』です。最後に『うどん』を入れるので、食べ過ぎないようにして下さいね。それではいただきましょう」
「いただきます!」
私は初めて食べる4人の席に移動し、説明をしながら『すき焼き』を作ってあげる。
4人に生卵は要らないと言われてしまった。
最初に火が通ったミノタウロスの肉を取り分けてあげると、箸を器用に使用し口にした全員が感極まった様子で目をうるうるさせている。
「これをずっと食べられるのなら……嫁になるのも悪くない」
そう言って五男のお嫁さんは、ジルさんに追加の肉を入れるよう催促していた。
お嫁さん……なんですよね?
どうやら尻に敷かれているようで、鍋奉行は夫の役目になりそうだ。
後はお任せし、私は自分の席に戻ろう。
おや?
旭の箸が止まっている。
今日は扱かれ過ぎて食欲がないみたい。
代わりにお肉を雫ちゃんが沢山食べているようね。
旭のお母さんも稽古でお腹が空いたのか、いつもより速いペースで食べている。
私の家族の分は、兄が鍋奉行をしてくれていた。
うん、今日もミノタウロスのお肉が柔らかくて美味しいなぁ~。
最後に締めの『うどん』を食べると、お腹が一杯になる。
食事が終わり、いそいそとガーグ老達が将棋の準備を始め出す。
稽古の後で、将棋を指すのが楽しみで仕方ないらしい。
父は祖父から将棋を習っていたので、相当強いと思いますよ?
ガーグ老達の良い相手になるだろう。
将棋が指せない母と雫ちゃんに旭のお母さんは、私と一緒にホームに帰る事にした。
ガーグ老に別れの挨拶をして、シルバー・フォレスト・ボブと共に工房を出る。
異世界の家まで3匹の背中に乗って移動し、庭からホームの自宅に戻ってきた。
母を実家まで送り届けると、私はサヨさんからプレゼントされたオーダーメイドのドレスと鹿革の靴をアイテムBOXから取り出す。
これからリーシャの父親である公爵に会いに行く心算なのだ。
明日からダンジョンでの攻略を開始するため、今しか時間は取れない。
皆には今日、公爵と決別しに行く事を伝えてある。
両親が話を聞き引き留められる事を心配していたけど、私には移転の能力があるので大丈夫だと安心させた。
公爵とは家を出奔してから、実に8年振りの再会となる。
リーシャが既に亡くなっていると伝えにいく事に、自然と顔が厳しいものになっていく。
リーシャが妹の香織ちゃんだと知らなければ、私はもっと冷静でいられただろう。
でも事実を知った後では、とても穏やかではいられない。
黒いドレスに着替えながら、この戦闘服を身に纏い対峙する事になる公爵へ怒りを募らせていった。
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