自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第547話 椎名 響 25 秘密のLv上げ 3 地下30階・地下28階 ロマン武器発見&秘密の共有

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 3時間が経過し一度ホーム内に戻りトイレ休憩を済ませた後で、再び地下30階に移転した。
 沙良が今度は俺に魔物を倒せと言うので、ドレインを初使用する。
 リッチの上位種が昏倒し床に倒れたのを確認してから、魔石を抜き取った。
 この魔法は簡単にアンデッドが倒せるな……。

 ただゾンビやグールなんかの肉体がある魔物は、魔石取りの必要がありそうだ。
 あいつらは臭いがひどいから、俺は魔石取りを回避していた。
 換金しても大した金額じゃなかったしな……。
 その点、賢也けんや尚人なおと君が使用する浄化魔法の方が、やはりアンデッドには有効なんだろう。
 ホーリーを掛けると、魔石を残して消えるのは普通じゃないが……。

 地下29階は既に出現している魔物を倒したため、次は地下28階の攻略をするらしい。
 一旦いったん全滅させると、その日は魔物が出現しなくなるそうだ。
 俺は1階層を独りで討伐させられたのか?
 沙良は、かなりスパルタだな……。

 地下28階に移転して直ぐ、ガーグ老へ連絡を入れる。
 通信の魔道具の良い所は、口に出さなくても念話で会話可能な事だろう。
 気を抜くと、電話のように話してしまいそうなのが難点だ。

『ガーグ老。沙良が地下28階へ移動した。『万象』達は今、何処どこの階層だ?』

『階層を変更されたのか……。距離が短くなり良かったと言いたい所だが、まだ地下20階におるでの。今日の攻略が終了する頃には辿たどり着けんだろう。今後は、地下29階と地下28階に待機させた方がよさそうだわ』

『そうしてもらえると助かる。地下30階層には、リッチの上位種が1体いるだけだ。安全地帯もないし、俺達がいく前に倒されていたら沙良が不審に思うだろう』

『了解した』

 そこで会話は終了する。
 沙良が再び地下28階の魔物を全滅させろと言う。
 娘は鬼教官か!
 俺が冒険者活動2日目だというのを、忘れているんじゃないだろうか……。
 指示に従い、出現している魔物を泰雅たいがと一緒に討伐する。

 シルバーに騎乗したまま、沙良は倒した魔物をアイテムBOXに収納していた。
 マジックバッグと違い、いちいち手で触れる必要のないアイテムBOXは、視界に入れば全て収納が可能らしい。
 そして沙良の視界に入る範囲は半径45kmだ。
 どう考えても娘を誘拐するなど不可能だろうな。

 休憩中、沙良からリザードマン系が持っていた槍を渡され鑑定をお願いされる。
 それは綺麗な黄金色の槍だった。
 素材が黄金じゃない鉱物は俺も初めて見る。
 鑑定をすると【ターンラカネリの槍】と表示された。
 特徴と記載されている文を読み思わず目を疑う。

 【投擲とうてき後、自動で持ち主に戻ってくる。】とあったからだ。
 何だ、この謎な鉱物は……。
 沙良にその特徴を伝えた所、

「何それ! ロマン武器じゃん!」

 と言い目を輝かせる。
 俺は一度性能を試すそうと、一番近くにいたガゼルのような魔物へ投擲とうてきした。
 狙いあやまたず首筋を貫通した後で一瞬光り、ヒュンっと音がして手に戻る。
 へぇ~。
 これは便利な武器だな。

 槍を投擲後、回収する手間が省けるなら上手く活用出来そうだ。
 俺が試した後、興味が湧いたのか沙良もやってみたいと言うから槍を手渡す。
 シマウマに似た魔物へ槍を投げつけたが、案の定そのまま魔物へかすりもせず空を切って地面に突き刺さり光った後、沙良の手に戻った。

 うん、娘よ。
 槍術を持っていないお前には過ぎた武器だ。
 それはいつか賢也に渡してやるといい。
 ちなみに俺も欲しいから、リザードマン系を狩るか。
 しかし、その後倒したリザードマンが持っていた槍は、鑑定結果が【(偽)ターンラカネリ】だった……。
 何故なぜだ?
 槍を手に持ち首をかしげていると、沙良が気になったのか尋ねてくる。

「どうしたの?」

「いや先程の槍に比べて少し輝きが鈍いと思い鑑定してみたら、素材が(偽)ターンラカネリになっているんだ。戻ってくる性能も付いてない」

「えっ! 嘘っ! じゃあ全部鑑定してみて!」  
 
 沙良が今まで回収した槍を鑑定してみるが……。
 本物は400本以上あった内の2本だけだった。
 それを聞いた沙良は腹を立てている。

「あ~もう、本物は2本しかないってどういう事なの?」

「きっと持っているリザードマンの種類が違うんだろう」

 俺は沙良が倒したリザードマンは、レアな魔物じゃないかと予想した。
 持っている武器が違うなら、その魔物は種類が違って当然だ。
 沙良は折角せっかく見付けたロマン武器が2本しかない事に納得がいかないようで、湖に向けサンダーボールを八つ当たり気味に撃ち込んでいる。

 水面に浮いてきたのは、大量の大きな帆立ほたて貝と巨大なあわびだ!
 これには俺のテンションが上がる。
 実は海鮮が大好物だ。
 帆立も鮑も、結構いいお値段がするので滅多に食卓へは上がらない。
 それが、ここでは食べ放題じゃないか!

「沙良、帆立と鮑のステーキは美味しそうだな……」

 俺は、それとなく娘に食べたいとアピールした。

「じゃあ、今から2人だけで食べよう!」

「おっ、なんだか催促したみたいで悪いな」

 そう言いながらも、俺は期待して笑顔になる。
 沙良が手早く帆立と鮑を解体し、バター焼きを作ってくれた。
 解体に使用したのは、ウィンドボールらしい。
 魔物から受けて習得した魔法は、イメージ通りに使用出来るそうだ。
 
 それだとアロー系と、ニードル系は不要じゃないか!
 いや、今は魔法の考察をしている場合ではない。
 冷めない内に、帆立と鮑のバター焼きを食べよう。
 口に入れると帆立の甘みが感じられる。
 丁度いい焼き加減で、これは幾らでも食べらるな。
 
「旨いな~。もっと沢山食べたい所だが、これ以上食べると夕飯が入らなくなりそうだ」

「だよね~。お兄ちゃんには内緒だよ?」

「あぁ、分かってる」

 賢也は地下16階を攻略すると思っているから、地下30階~地下28階の魔物の件は秘密にしないといけない。
 俺と娘は、ここで共犯者となった。
 バレたら俺まで説教されそうだからな。

 伊達だてに長生きしている訳じゃないんだが、異世界で生きた年数を合わせると288年だ。
 しかし長男の賢也が、時々俺より年上に感じるのはどうしてなのか……。
 あいつは58歳なのになぁ。
 もしかして……。
 いや、いくらなんでも俺といつきのように、異世界で生きた経験があるはずはないだろう。

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