自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第858話 シュウゲン 41 摩天楼ダンジョン50階・51階 犯人の確保&宝箱の中身

 沙良の移転で摩天楼まてんろうダンジョン50階に着くなり、テントを設置して中に入る。
 沙良が魔物をマッピングで探し、アイテムBOXに収納していくのを見守った。
 傍目はためには何もしていないように見えるが、焦点が合っていない様子から作業中だと分かる。
 洞窟の壁を透視し鉱石を収納したように、魔物も生きたまま収納しているんだろう。
 10分後、沙良が完了した事を告げた。
 わずかな時間で、50階に出現していた魔物を全て収納したのか……。
 テント内から1歩も動かず成し得た事実をの当たりにして、儂は孫娘の能力が空恐ろしくなった。

 休憩時間となったので一度ホームに戻り、沙良が迷宮都市ダンジョンを攻略しているメンバーを連れ戻し、帝国人が18人捕まった話をする。
 それを聞いたいつき君は、何故なぜか自分も摩天楼のダンジョンに行くと言う。
 既に魔物はおらんが、Lvの低い彼が一緒に来て大丈夫だろうか?
 摩天楼のダンジョン50階に呪具を設置出来る犯人だ。
 全員がA級冒険者の資格を持ち、敵国に潜入し活動出来るだけの能力がある。
 そんな犯人と遣り合う技量は持っておるまい。
 孫娘の結花ゆかさんが悲しむ事態は避けねばならん。儂が樹君をしかと守ろう。

 再び摩天楼ダンジョン50階に移動する。
 犯人と対峙たいじしないよう、沙良、賢也けんや尚人なおと君はテント内で待機だ。
 付いてきた樹君は、騎獣のマリーを迷宮都市のダンジョンに置いてシルバーに騎乗した。
 一番速いシルバーに乗った樹君を先頭に、儂、セイ、かなでひびき君が続き安全地帯を出る。
 そのまましばらく進むと、シルバーが犯人を見付けたようで樹君が儂らにハンドサインを寄こす。
 まだ犯人の姿は見えぬが、儂らは気付かれないよう慎重に後を追った。

 シルバーが大きな木の前で停止し、前足でその木を叩く。
 はて? 犯人は、どこにおるのかの?
 そう不思議に思っていると、突然セイが目の前の木を燃やす。
 まさか、木の中に隠れているのか!? それは盲点だった。
 隠れ家を燃やされた犯人達が出て来るのを、儂は仁王立ちで待つ。
 蒸し焼きにされては敵わぬと、燃え盛る木から犯人達が次々と現れた。
 目の前にいる儂らを見て、剣を抜き襲い掛かってくる。
 馬鹿め、全員返り討ちにしてくれるわ!
 樹君をかばうようにして、12人いた犯人を儂と奏とセイの3人でほとんど倒す。
 地面に倒れ伏した犯人を縄で縛る樹君は不満気だが、怪我をするよりましじゃろう。
 犯人を武装解除したところで姿が消えた。
 沙良が運ぶ手間を省くため、アイテムBOXに収納したらしい。
 しかし、まだ24人の犯人が残っている。
 再び従魔に騎乗して、シルバーの後に続き犯人を追った。
 
 どうやら敵は50階から51階へ逃げているようだ。
 移動している途中、ガーグ老の従魔である白ふくろうが飛んできた。
 いつものように樹君の肩へ止まり、嬉しそうにしておる。
 ふむ、沙良を護衛しにガーグ老達も来ているのか。
 儂らも上の階層に続く階段を上がり51階へ進む。
 この階層には魔物がいるから、安全地帯へ逃げ込むだろう。
 先回りしようにも、安全地帯の場所が分からぬのは痛いな。
 仕方なくシルバーの先導に従い移動を続けると、高い塀の前で右往左往している犯人達を発見した。
 この高い塀は何じゃ?? ダンジョン内にあるには不自然な塀だが、今は気にしている場合ではない。
 せっかく犯人を見付けたのだ。
 捕まえてやろうと意気込んだ瞬間、儂らが手を出す前に犯人達がバタバタと倒れだした。
 それから見る間に簀巻すまきになり、猿轡さるぐつわをされた状態になる。
 姿変えの魔道具を解除したのか、更に犯人の容姿が変化した。
 儂らがそれらを唖然あぜんと見ていると、簀巻きにされた犯人の上に羊皮紙がひらりと落ちた。

『残り12人は既に確保し、50階の安全地帯へ置いてきました。』
 
 羊皮紙に書かれた文字を読みうなる。
 響君が、少しあせったように口を開いた。

「あ~、これは多分妖精の仕業しわざですよ! 毎週沙良が木にお供え物をしているから、そのお礼でしょうね!」

 うむ、するとやはりガーグ老達か?
 何ともはや、予想外の動きをしてくれる。
 王族の危険を排除するという点では、間違っていないが……。
 何にせよ、36人全員が捕まったのなら問題ない。
 知らぬ間に簀巻きにされた犯人と高い塀は消えておった。

 50階の安全地帯に戻ると、羊皮紙に書かれていた通り12人の帝国人が先程と同じ状態で寝転がされていた。
 その周囲にいる、綺麗な顔をした冒険者はギルド職員だろう。
 用は済んだので、テントを回収しダンジョンを出た。
 沙良がアイテムBOXに入れた24人の犯人を、冒険者ギルド前へ放置する。
 犯行を未然に防げた事にほっとしていると、沙良が唐突に声を上げた。

「お兄ちゃん! 今日が宝箱の出現日だよ!」

「おおっ、そうか! じゃあ回収しに行こう!」

 ほう、今日がその日であったか。儂の分もあるかの?
 宝箱と聞き、賢也と尚人君が満面の笑みを浮かべておる。
 良い物が入っておるといいの~。

 30階の安全地帯に設置してあるテント内へ移動後、沙良がマッピングを使用して宝箱を発見しアイテムBOXから取り出して見せる。
 それは銀色の宝箱だった。
 それ程大きいサイズではないから、中身は小物だろうな。
 ヒヒイロカネが入っていると良いが……。

「お兄ちゃん、開けていいよ~」

「いいのか? じゃあ、俺が開けるぞ!」
 
 初めて見る宝箱を前に、賢也がわくわくした表情を隠さず手に掛ける。
 そうして宝箱を開け、数秒後に閉じてしまった。
 儂が立っている場所からは中身が見えず、何が入っていたか分からない。

「何だったの?」

 尚人君が無言のままでいる賢也に尋ねると、

「……自分で確かめてみろ」

 仏頂面ぶっちょうづらした賢也が、嫌々返事をする。
 その様子に首をかしげながら、尚人君が宝箱を開けた。
 が、真っ赤な顔をして直ぐに閉じてしまう。
 一体、何が入っておるのだ?
 次に沙良が、はぁ~と溜息を吐いて宝箱を開け固まる。
 3人の様子からして、良い物ではなさそうだわい。
 響君が隣から中をのぞき込み、

「踊り子の衣装は状態異常が無効になり、鬼のパンツはHPが2倍になるが、それ以外を着ると効果はなくなるらしい……。指輪は従魔用アイテムで力が2倍になる物だ」

 鑑定結果を伝えた。
 う~ん、何とまぁ役に立たない代物しろものじゃな。
 HPが2倍になる鬼のパンツだが、それ以外を着ると効果がなくなるのでは意味がない。
 流石さすがに儂でも、パンツ一丁でダンジョンを攻略する勇気はないぞ?
 踊り子の衣装は沙良用だろう。
 従魔用アイテムだけは使えそうだな。
 そう思っていると、沙良が不敵な笑みを浮かべ賢也とうなずきを交わしていた。
 嫌な予感がして制止する前に、沙良、賢也、響君、樹君の姿が、その場から忽然こつぜんと消えた。

「沙良ちゃん!?」

 奏と尚人君が驚き、声をそろえて叫ぶ。
 あぁ、行ってしまったか……。
 孫娘は宝箱の中身が不満で、ダンジョンマスターへ文句を言いに行ったに違いない。
 セイは茫然ぼうぜんと立ちすくみ、肩を落としている。
 沙良の護衛隊長を自認しているくらいだ。
 目を離した隙に居なくなり、ショックを受けているのだろう。
 どんな相手であっても、沙良がアイテムBOXに収納してしまえば危険はない。
 それほど心配する必要はなさそうだな。
 
「少し待てば帰ってくるじゃろう」

 儂はそう言って、3人を落ち着かせた。

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