謎色の空と無色の魔女

暇神

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真章

真二十章 試作一号

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 あれから早い物で、半年が過ぎた。私達の計画も、少しだけ前へ進んだ。
 先ず、マリアは魔力量が格段に増えた。錬金術に合わせて、魔力総量を増やすトレーニングもしていた結果だ。今では、多少無理も効くようになったらしい。まあ、それは避けてほしい。大切な友達だ。
 私が考案した魔道具は、少しずつ前進した。今では、小さな箱なら遠隔で操作できるようになった。直接触らず、遠くからコントローラーを使う事で、本体の高度と向き、進む方向と速度が操作できるのだ。これはこれで玩具として使えそうだけど、まあ、副産物でしかないんだし、今は置いておこう。
 しかし、人が乗れる大きさとなると、魔法陣の出力も上げる必要もある。オーガスタスさんが紹介してくれた錬金術師と相談しながらの調整だし、ここはどうしても時間が掛かる。完成までは、まだまだ掛かりそうだ。
 アレンさんは、新たな魔銃の制作に取り掛かっている。今は、破壊力と貫通力、そして連射力に特化したモデルを作ろうとしているそうだ。まあ、アレもコレもとなると少し難しいらしく、毎日頭を抱えている。
 ついでに、私とマリアは十歳になった。なんと言うか、ちょっと嬉しい。
「でもなんかマリア、沢山食べるようになったね」
「ちょっと恥ずかしいですわ。魔力が増えた影響ですわね」
 そう言いながら、マリアはまた一口サラダを食べた。本当によく食べる。多分、全部魔力になってるんだろう。見た目は全然変わらない。ていうか、若干痩せた気さえする。まあ、締まる所が締まったと言うのが正しいかな。
 私はと言うと、ほんのちょっと背が伸びた。まあ、それでもマリアが若干見下ろせる程度だ。詰まり、大して変わらない。私も魔力量の増加に伴って、多少食べる量は増えた。それでも、マリア程食べる訳じゃないが。
 因みに、授業も結構進んだ。実戦訓練に至っては、もう地獄みたいだ。
「今日の授業はここまで!」
「この鬼講師!」
 なんだこの人!正面から勝てる気がしない!近接と魔術組み合わせても、魔術無しで防がれる!どうなってんだ!
 私は主に、魔法陣を使った媒介魔術を使う。魔術毎に魔法陣は微妙に違うが、それでも咄嗟に見分けられるような差じゃない。それなのに、この人は魔法陣を見た瞬間、最低限の動作で避ける。私は魔法陣を微妙に改変しているのに、だ。正直、化物だと思う。
「まあそう言うな。一年でここまでとは、将来有望だな!将来は魔術騎士か!?」
「面白い冗談ですね。私は今の所、騎士団に魅力を感じませんよ」
 まあ、将来どうするかも、まだ考えていない。正直、『厄災』を消し去れればそれで良い。その後どうするかは、その時考えれば良いとさえ思っている。
 歴史の方は、魔法の発見と、魔術開発の始まりに入った。これがおよそ、五百年前。
 一番最初に造られた魔術は魔力弾マギ・バレット魔力盾マギ・シールドの二つ。魔力を使った弾丸と盾だ。最もシンプルで、現代で最も使われない魔術だ。威力は基本的に弱いし、耐久力も低い。実戦で使うには、余りにも弱い。まあ、使い易いには使い易い。アレンさんが魔銃にこの魔術を組み込んだのも、それが理由なのだろうな。私でもそうする。
 数学や国語は、まあ大した事は無い。数学リョウコさんが教えてくれた範囲の、簡単な応用で良いから楽だし、国語はまあ、小説はよく読んでたし、普通に分かるし使える。
 授業も終わると、私はいつもの小屋に行く。そこに居るのは、アレンさんともう一人、オーガスタスさん紹介の錬金術師さんが居る。
「ここはもっと削った方が……」
「いや、そうしたら不安定になり易いです。速度があれば別だけど、ちょっと厳しいんじゃないですか?」
 彼の名前はサーティス。オーガスタスさんが拾った孤児だったらしく、魔力があると分かった結果、オーガスタスさんが鍛えたそうだ。魔術師になるには少ない魔力だったが、錬金術に対して稀な才能を持っていたそうだ。現在では、ギルドで一番の錬金術師になった。
 今はオーガスタスさんの紹介で、私達の手伝いをしてくれている。
「あ、ライラ君!」
「ライラさん。お疲れ様。マリアさんとは会えないのかい?」
「今日も無理らしいです」
 サーティスさんはマリアの才能に興味があるらしく、時々『会って話をしたい』と言っている。ただマリアはこの頃、勉強を頑張っているので、あまり会える機会が無い。まあ、こればっかりは仕方が無い。諦めてもらおう。
「調子はどうですか?」
「あの魔法陣に耐えうる素材は発見済みだ。後は機体をなるべくコンパクトにしたい」
「だけど行き過ぎると安全面に支障を来してしまうからね。そこの塩梅を話し合ってるのさ」
 そう話す二人の後ろには、移動用魔道具の設計図と、考慮すべき点、改良案など、まあ沢山の事が書かれてある。これが、完成品を作るまでの過程だ。
「で、試作機の方は?」
「本体はできてるよ。後はライラ君が魔法陣を書きこむだけだね」
「十分気を付けてくれ。魔石を使わない以上は、君に魔力の負担がのしかかる」
「分かった」
 私をその注意を聞きながら、小屋の裏に出る。そこには、馬やドラゴンを模した、『乗り物』があった。
「高速移動用飛行系魔道具『ドラグナー』、試作一号機だ」
「頼んだよ」
 私はその乗り物に近付いて、少し触れてから、二人に振り返った。

「やってみようか!」
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