謎色の空と無色の魔女

暇神

文字の大きさ
上 下
48 / 60
進章

進一章 迷宮攻略

しおりを挟む
 あれから七年が過ぎた。私は十六歳になった。もう立派なレディという奴だ。十六歳はこの国における成人年齢で、様々な契約を一人でできるようになる。
 無論、私は一番に、学校の外で攻撃魔術を行使できるようになる資格を取りに行った。因みに一発合格。他の特待生の面子も、たった一回の試験で合格していた。
 アレンさんは今年で卒業するそうだ。一度実家に戻り、魔道具の研究をして、王都にラボを持てる位金が貯まったら、王都に戻って来るらしい。今はまだ学校に居るので、私とマリアは、研究会の今後について、真剣に話し合う必要がある。
 マリアはと言うと、錬金術の研究を続けた結果、今では錬金術師のグループからスカウトを受けるレベルにまでなったらしい。因みに、現時点では保留しているそうだ。元々魔術以外の所では優秀だったから、それも活きたようで、私は素直に嬉しい。
 そしてこの学校には、十六歳になった生徒達の、恒例行事のような物がある。それはなんと……

迷宮ダンジョン攻略だ!」
 周囲から歓声が上がる。私達は青空の下、鬼教官の説明を受けている。
「先ず、前衛、後衛それぞれ二人ずつのパーティーを作ってもらう!そしてこれからこの迷宮、『イグジトラス』の十階層を目指して進むのだ!危ない目に遭った時は、各パーティーに一つずつ配布する、この魔道具を地面に投げろ!俺達教師が助けに行く!」
 これはこの学校の伝統行事らしく、その年に成人した生徒達で迷宮に潜り、そして帰って来るという物だ。アレンさんも経験したらしく、『仲良い奴も少なかったからキツかった』と言っていた。合掌。
 迷宮ダンジョンとは、神々が地上に居た時代から存在している遺産で、その中には様々な物が存在している。宝箱から出て来る宝はどこからともなくほぼ無限に湧いて来る為、その宝を目当てに人が集まり易い。結果、大きな迷宮の周囲には、自然と大きな町が作られる。
 無論、リスクもある。迷宮の中には、怪物モンスターと呼ばれる化物が無数に存在しているのだ。あれらの死体も資源として活用されるそうだが、やはり危険である事に変わりは無い。罠もある。
 だが十階層程度であれば、私達学生程度でも、ある程度は安全に攻略できる。この行事は、迷宮で一週間過ごし、その十階層を目指すという物だ。
 しかし、先ずはパーティーを組まなければ。私は取り敢えず、マリアを探して話し掛ける。
「マーリアっ!一緒に行こう!」
「ふふ。わたくしもそう考えておりました」
 マリアも大人っぽくなったな。何て言うか……余裕がある。私が話し掛ける前も人に囲まれてたけど、そこまで焦っている様子も無かったし。
「私は前衛かな。マリアは後衛だよね」
「そうですわね。あと二人必要ですけれど……その心配は無さそうですわね」
 マリアは横を見ると、目を細めた……と言うよりも、遠い目をした。私もその方向を見ると、そこには見慣れた王子サマの姿と、偶に彼と一緒に居るアリスさんの姿があった。二人は私達の姿を見ると、目を輝かせた。
「二人共!パーティー、大丈夫だよね!?」
 うん。面倒な人達が来た。王子サマは戦力になるけど、アリスさんはそこまで強くないしな。正直お荷物だ。でもまあ、この様子じゃそう言うのも無理だろう。
「大丈夫ですよ。いつものお二人は?」
「それぞれの婚約者とパーティーを組んだそうだよ。僕は前衛、アリスさんは後衛だ」
「私は役に立ちません!」
「分かっているだけ上等ですわね」
 取り敢えず、これでパーティーが作れる。私達は先生に報告して、迷宮に潜る。中は案外舗装されており、思っていたよりかは歩き易い。私達は地図を見ながら、どう進むかを考える。
「先ずはどの階層まで進むかを決めないとだね」
「できるなら十階層だけど、アリスさんが居るしなあ……」
「自衛に振り切れば大丈夫ですよ?」
「その言葉を信用するとしても、十階層の怪物がどれ位強いのかも考えないとですわね」
 取り敢えず、十階層まで進める速さで進み、アリスさんの様子で、最後の階層を決めるという感じになった。まあ、十階層は目標みたいな物だし、無理に進む必要は無いだろうな。
「じゃあ、お互いにやれる事を確認しましょう。私は防御しかできません」
「私は錬金術ですわね。様々な魔術の薬を作れますわよ」
「僕は器用貧乏だな。剣と基本六属性の魔術ができる」
「私はこの刀と、基本六属性の魔術……まあ、実際に使うのは風系統だけなんだけど」
 マリアの錬金術と王子サマの剣術と魔術はレベルが分かるけど、アリスさんの防御がどの程度まで有効なのかが分からないからな。『自衛はできる』とは言っていたけど、あまり期待はしないでおこう。
 学校から支給されているのは、一週間分よりも少ない食料、少しの調味料、迷宮内の地図、そして四人入るには十分な広さのテントと、いくつかの食器だ。無論、鞄は重い。
「そこまでは良いんだ。だけどなんで、僕が一番荷物が重いのかな?」
「この中で一番力が強いのが貴方だからですよ王子サマ」
「私とアリスさんは非力ですもの。私は元々の荷物もありますし」
 一般的なパーティーには、そのパーティーの荷物を預かる荷物持ちが居るらしい。生存能力が最も高く、体力もある人間に任されるらしいが、今回はそれに適する人員が居ない為、それぞれが分担して荷物を持つ事になった。
「ごめんなさい……」
「大丈夫だよアリスさん。一応男の子だからね。良い所は見せたい」
「下心が透けて見えてますわね……」
「こりゃアリスさんと王子サマがくっつくのも時間の問題だ……」
 こうして、私達は初めての迷宮探索に繰り出したのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ソウルメイト

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

ハングリーアングリー

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

【完結】勝るともなお及ばず ――有馬法印則頼伝

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

その傷を舐めさせて

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:41

ミキ

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

【R18】ギルティ~クイーンの蜜は罪の味~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:127pt お気に入り:26

原口源左衛門の帰郷

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

サキコとカルマ

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

好きになった人の元嫁に襲われて左薬指を骨折した話。

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...