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023 ポポの里防衛戦。終盤戦!
しおりを挟むサンタたちがひんむかれた下衣の袴(はかま)を着直し、腰紐をがっちり結ぶ。
男の子たちが下半身の防御を固めたところで、ホランが案じたのは逃げたシロザルどもの行方。
それに対してわたしは手をひらひら。
「あー、あっちはハウエイさんとボトムさんの家の方角だから放っておいていいよ」
「呪い師の婆さんのところか……。確かにあの婆さんならば、サルぐらいどうとでもあしらいそうだな。で、もう一人のボトムってのは誰だ? 初めて聞く名前だが」
ボトムさん。
ポポの里で唯一の鍛冶師。寝る、喰う、酒、鉄の生活にて、ほとんど自宅兼鍛冶場から出てくることがない。ほぼ引きこもりの独居老人。
年がら年中、昼夜を問わず、くそ重たい金づちをふり回し、火と鉄を相手にしているせいで、鬼のようなムキムキの巨躯をしている坊主頭。
腕はいい。けれども「俺はハゲじゃねえ! これは火を扱うから危ないと考えて、わざとだ」と言い張っている。
かたくなに死滅した毛根のことを認めようとしないところが、ちょっとめんどうくさい。
わたしの説明を聞いて、ホランが「まだ、そんなヤバいのがいるのかよ! やはりここは人外魔境か」と天をあおぐ。
暮れなずむ宵闇の空には、せっかちなお月さまがうっすら微笑んでいた。
「まぁ、そんなわけだからあっちはいいよ。で、サンタ、あんたらはこれからどうするつもり?」
ビビってガクブル震えて過ごすのか。
奮い立ち恥辱をそそぐのか。
二択を迫るとサンタは即座に「さっきのはちょっと失敗しただけだ! 次は勝つ!」と意地を見せた。
腐っても辺境の男子。やられっぱなしで引き下がるような根性ナシじゃない。
他の子たちも、ついさっきまで萎れていたと思ったら、もう息を吹き返している。
「その心意気やよし。だったらこのままホランさんについて遊撃を手伝うといいよ。あんたらは地理に明るいから、夜の戦いでは案内役としてきっと役に立つはず。ついでに戦い方や剣の扱いなんかを勉強させてもらえばいいさ」
などと威勢のいいことを口にしながら、わたしは周囲に落ちている収穫物をせっせと回収。
ちょっと感動しかけていた男子ども、この行為にドン引き。
「チヨコ、おまえ、さっきから何を……」
「何をじゃないよ。ほら、ボサッとしてないで、サンタたちも手伝ってよ。シロザルのアレは滋養強壮のいい薬になるって、ハウエイさんが言ってたんだから。ナニひとつで五ミズリは固いって話だよ」
中指の先ほどの丸いミズリ青銅貨。
これ一枚で料理屋ならば、大きなお肉に数品のオカズに晩酌がついてくる。
五ミズリあれば、街のちょっとした宿屋にて朝夕二食つき、豪勢に一晩過ごせる。
つまり落ちている血みどろのアレは、いい小遣い稼ぎとなり、これを見逃す手はないということ。
人間とはゲンキンな生き物だ。
価値を知ったとたんに目の色が変わった。
そしてわたしに命じられるままに、回収作業に勤しむ男の子たち。この分では持参した革袋がすぐにパンパンになりそう。
「取り分はわたしが七であんたらが三だから。そこんところよろしく」
一方的な通達にて男子たちはこぞって、ぶーぶー文句を垂れる。
せめて六対四にというサンタの懇願は却下。
「じゃあ、ホランさん、あとはお願いね。わたしは他をまわってくるから」
スコップから白銀の大剣へと変じたミヤビに飛び乗ると、ピューンと空へ舞い上がった。
◇
里の北東部、上空を旋回していたわたしの耳に届いたのは「ピー」という警笛の音。
これは周囲に危険を報らせる合図。
それに伴って鼻が拾ったのは、夜風に混じるかすかに甘いニオイ。
「いけない! ハウエイさんってばダケさんを投入したんだ。ミヤビ、すぐに風上へ!」
「了解ですわ。チヨコ母さま」
勇者のつるぎが即座にギューンと移動を開始。
これに遅れることわずか。地上の森にてボフンと大量の粉塵が舞った。
それは呪い師ハウエイ宅に居候をしている、菌類系銀禍獣ダケさんの身より発せられた胞子。これを体内に吸い込むと、たちまちあちこちにキノコが生えて、ダケさんの傀儡と化す。でも万が一、誤吸引してしまっても大丈夫。ダケさんの出汁入りのキノコ汁を飲めば治るから。
危ういところで難を逃れたわたしたち。
その足で向かったのは、近所にある鍛冶師ボトムさん宅。
ホランには「放っておいていい」と言ったけれども、念のために様子を見ておく。
するとそっち方面では盛大にサルたちが空を飛んでいた。
誰がやっているのかなんて考えるまでもない。
なんだか心配してとっても損した気分。わたしは、足下のミヤビに「里の西の様子を見に行こう」と指示を出し、すぐにその場を離れた。
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