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024 ポポの里防衛戦。助っ人!
しおりを挟む里の各地でくり広げられているサルの銅禍獣と住人たちとの攻防。
全体を見れば、いい具合に里側有利にて戦局は推移している。
メスのアカザルどもは、ああ見えて選り好みが激しい。
そのせいか群がる対象が美形寄りなので、大多数が広場にて囮役となっている、わたしの父タケヒコにメロメロ。すっかりご執心。おかげで敵勢がまとまっているので、対処が楽ちん。
一方で難儀しているのがオスのシロザルども。
連中は基本的に男穴に己の男棒を突っ込むことしか考えていない。あまりにも欲望に従順忠実にて、下半身主体で動くものだから始末が悪い。老若見境なし、手当たり次第に男たちの尻を追っかけ回すものだから、どうしても戦いが分散しがち。おかげで里側も戦力を割くことに。
こうなると数が多い方が圧倒的に有利にて、ことシロザル討伐に関しては、やや押され気味の状況が続いている。
「ただでさえ夜の戦闘はしんどいのに。だらだら長引いたらお父さんのお尻が危ない」
上空にてわたしが父の身を案じていたら、視界の片隅に映ったのはカノンの姿。
愛妹が教会の鐘楼の上に登場。
てっきり父が心配になったので、地下堂から抜け出して様子を見に来たのかとおもったら、さにあらず。
口もとに指を当てて「ピュピューイ」と可愛らしい音色を奏でる。
小さな手による拙くもか細い指笛。
里中にて渦巻く喧騒の中、聞き逃さなかったのは、わたしの妹カノンに対する情愛の深さゆえ。
その証拠に、眼下にて血みどろになっている連中は誰も気がつかない。
が、それはわたしの早とちり。
ちゃんと耳に届いていた者がいたのだ。
それもずっと遠方にて……。
◇
地響きがした。
はじめは小さなもの。自分たちの足踏みのせいだと思って、誰も気にしなかった。
けれどもどんどんと大きくなっていき、はっきりと体感できるほどにもなる。
ゆえに広場に集いし敵味方双方が戦闘を中断し、まず地震を疑ったのは当然の反応。
でも、ちがった。
大地そのものが咆哮をあげ、波打つかと錯覚。あまりの揺れにとても立ってはいられず、多くの者が思わず手をつき、尻もちをつく。
直後に突風が吹き荒れ砂塵が舞った。
あまりのことに、とても目を開けていられない。
それがおさまり、ようやく瞼を開けたとき、みなが目撃したのは広場に悠然と佇む大きな影。
漆黒のたてがみをなびかせ、ブルルと鼻を鳴らしたのは巨馬の銀禍獣。
ポポの里四天王、南の雄マオウ降臨!
マオウが周囲を一瞥してから、鐘楼を見上げる。
視線の先にいたのはカノン。
しばし見つめ合った両者。やがてカノンがコクリと小さくうなづく。
幼女の仕草を受けて、ふたたび広場へと顔を向けたマオウ、静かに歩き出した。
家ぐらいもある身の丈にて、全身が筋肉の鎧に包まれている馬体。たくましい四肢が動くたびに地が怯えたように震える。
この場にいる誰もが目を離せない。それほどまでに圧倒的な存在感。
やがてマオウの進路上にいた不運なアカザルが、右前足の蹄にて潰された。
熟れた果実がぐしゃりとなるように、いとも容易く。
続けて左前足に接触した別のサルが跳ね飛ばされた。そのサルは首がへんな角度で折れ曲がり動かなくなった。
この時点でサルたちも、ようやく漆黒の巨馬が自分たちの敵であると認識。
止まっていた時間が動き出し、戦闘が再開される。
が、はっきり言ってここから先は特筆すべきことがないほどに一方的な展開となる。
限りなく金級へと近づいている銀禍獣である、馬の王マオウ。
数は多いが本能に従って生きているだけの銅禍獣であるサルたち。
同じ禍獣とはいえ、両者の間にはあまりも深く広い溝が横たわる。
その差をまざまざと見せつけられることになったのが、ポポの里の住人たち。
里人らはあらためて自分たちの偉大な先祖たちに感謝した。
「よくぞ、マオウと友好関係を築いてくれた」と。
そしてつくづく思い知った。
「マオウ、怒らせたらダメ、絶対! 超怖いっ!」
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