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003 モブの洞窟
しおりを挟む今後の活動についての相談などもあるので、昼に空飛ぶクジラ亭で待ち合わせをしていた俺とジーンとキリクの三人。
俺が自分たちのパーティー名について話したら、ジーンはただ「そうか」と憮然と答えたのみ。キリクはケタケタと腹を抱え笑う。
新パーティー結成にて、早速、冒険へ!
とはいかないのが、中堅どころのおっさんたち。
若い連中みたいに、勢いだけで突っ走ったりはしない。
「しばらくは簡単な依頼をこなしつつ、近場で互いの動きや連携などを確かめたいんだが」
俺からの慎重な提案を受け、二人に否はない。
その後も互いの得意不得意、戦闘スタイルなどの情報を交換し、細々としたところをすり合わせ、突き詰めていく。
話し合いに夢中になるあまり、気づけば早や夕暮れ時。
すでに一日が終わろうとしており、周囲には仕事帰りの冒険者らの姿が増えてくる。
とたんに薪をくべた竈のように、熱気を帯びて猥雑となる店内。
活動は明朝からと決め、一杯だけ飲んで俺たちは熱に巻き込まれる前に席を立つ。
今夜は早めに休み、明日へと備えるために。
◇
夜明け前、ギルドにほど近いところにある噴水広場にて、待ち合わせをしたおっさん三人。
使い込まれた片手剣とシールド、革の鎧姿、背に必要な品が入った荷袋を担ぐ俺ことフィレオ。
腰の後ろに細見の短双剣を差し、籠手とすね当てを装備、動きやすい格好をしたキリク。
魔導士なのにローブ姿ではなく杖も持たずに、両手すべての指に指輪をはめ、軽装にて弓を担いでいるジーン。
事前にジーンの戦闘スタイルについては聞き及んでいるので、俺とキリクは特に触れない。
互いに忘れ物がないかを確認しているうちに、すっかり夜が明けた。
冒険者ギルドの朝は早い。
まだ空が暗いうちから、旨味のある依頼を求めて冒険者らが殺到するので、ごった返している。
だがピークを過ぎれば、夕方までは閑散としたもの。
俺たち三人組は朝の混雑を避けるためにわざと時間をずらして、ギルドに顔を出した。
念のために依頼書が張り出されてある掲示板をのぞいてみるも、すでに目ぼしい依頼は狩られたあと。残るのは報酬が少ないか、迂闊にちょっかいを出したら危険なモノばかり。
俺たちは依頼は受けず、ギルド職員のマリルに「今日はモブの洞窟にこもる」とだけ告げた。
◇
モブとはモブゴブリンの略称。
濁った沼のような肌色にて、腹の突き出た子どもほどの大きさの人型モンスター。
性格は狂暴にて棍棒片手に見境なしに襲ってくる。チカラはそこそこ。頭は悪いが繁殖力が高く、一体いたら三十は疑えといわれている。数は脅威だ。油断して放置していると痛い目を見ることになる。
ゆえに常時討伐対象。証として右耳を切り取りギルドに提出。
新人時代に、この殺処分を大量にこなしたのが原因で、解体作業が苦手となる者も少なくない。
そいつが湧くダンジョンがモブの洞窟。
広さはそれなりにあるものの階層は一つだけ。迷うほどでもなく、トラップの類もない。
駆け出し連中が経験を積みつつ、小遣い稼ぎをするのに最適の場所。
個人の技量が三等級に相当する俺らが、今更出向くようなところではない。だが組んでいきなり難易度の高い場所にアタックするほど、おっさんたちは無謀ではない。
まずはじっくりのんびり連携の確認でも、と考えたのである。
だが出向いてみて、俺たちはすぐに後悔した。
なにせ現場にいるのは、どれもこれもとびきり若い連中ばかり。
十代で賑わっている盛り場に、いきなりむさ苦しいおっさんが踏み込めば、いやでも浮いて悪目立ち。
「うっ、これは想像以上にキツイ」
これまで前衛として、数多の強敵を前にして一歩も下がらなかった俺だが、若者から向けられる胡乱そうな視線には、やや怯む。
「ははは、まいった。なんだか改めて自分の歳を考えさせられるぜ」と零したのはキリク。ピチピチとしんなり。並ぶと嫌でも突きつけられる現実に、少々げんなり。
「気にしたところでしようがあるまい」とはジーン。彼だけはひとり淡々としていた。その姿、さながら達観した賢者のごとく。
もっともジーンにだけは、向けられる視線の質が明らかにちがう。特に女性陣からのモノが。
周囲から向けられる好奇と蔑みが入り混じった視線を受けながら、おっさん三人組は入り口脇にある受付小屋にて手続きを済ませ、そそくさと洞窟の中へと。
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