冒険野郎ども。

月芝

文字の大きさ
3 / 210

003 モブの洞窟

しおりを挟む
 
 今後の活動についての相談などもあるので、昼に空飛ぶクジラ亭で待ち合わせをしていた俺とジーンとキリクの三人。
 俺が自分たちのパーティー名について話したら、ジーンはただ「そうか」と憮然と答えたのみ。キリクはケタケタと腹を抱え笑う。
 新パーティー結成にて、早速、冒険へ!
 とはいかないのが、中堅どころのおっさんたち。
 若い連中みたいに、勢いだけで突っ走ったりはしない。

「しばらくは簡単な依頼をこなしつつ、近場で互いの動きや連携などを確かめたいんだが」

 俺からの慎重な提案を受け、二人に否はない。
 その後も互いの得意不得意、戦闘スタイルなどの情報を交換し、細々としたところをすり合わせ、突き詰めていく。
 話し合いに夢中になるあまり、気づけば早や夕暮れ時。
 すでに一日が終わろうとしており、周囲には仕事帰りの冒険者らの姿が増えてくる。
 とたんに薪をくべた竈のように、熱気を帯びて猥雑となる店内。
 活動は明朝からと決め、一杯だけ飲んで俺たちは熱に巻き込まれる前に席を立つ。
 今夜は早めに休み、明日へと備えるために。

  ◇

 夜明け前、ギルドにほど近いところにある噴水広場にて、待ち合わせをしたおっさん三人。
 使い込まれた片手剣とシールド、革の鎧姿、背に必要な品が入った荷袋を担ぐ俺ことフィレオ。
 腰の後ろに細見の短双剣を差し、籠手とすね当てを装備、動きやすい格好をしたキリク。
 魔導士なのにローブ姿ではなく杖も持たずに、両手すべての指に指輪をはめ、軽装にて弓を担いでいるジーン。
 事前にジーンの戦闘スタイルについては聞き及んでいるので、俺とキリクは特に触れない。
 互いに忘れ物がないかを確認しているうちに、すっかり夜が明けた。
 冒険者ギルドの朝は早い。
 まだ空が暗いうちから、旨味のある依頼を求めて冒険者らが殺到するので、ごった返している。
 だがピークを過ぎれば、夕方までは閑散としたもの。
 俺たち三人組は朝の混雑を避けるためにわざと時間をずらして、ギルドに顔を出した。
 念のために依頼書が張り出されてある掲示板をのぞいてみるも、すでに目ぼしい依頼は狩られたあと。残るのは報酬が少ないか、迂闊にちょっかいを出したら危険なモノばかり。
 俺たちは依頼は受けず、ギルド職員のマリルに「今日はモブの洞窟にこもる」とだけ告げた。

  ◇

 モブとはモブゴブリンの略称。
 濁った沼のような肌色にて、腹の突き出た子どもほどの大きさの人型モンスター。
 性格は狂暴にて棍棒片手に見境なしに襲ってくる。チカラはそこそこ。頭は悪いが繁殖力が高く、一体いたら三十は疑えといわれている。数は脅威だ。油断して放置していると痛い目を見ることになる。
 ゆえに常時討伐対象。証として右耳を切り取りギルドに提出。
 新人時代に、この殺処分を大量にこなしたのが原因で、解体作業が苦手となる者も少なくない。
 そいつが湧くダンジョンがモブの洞窟。
 広さはそれなりにあるものの階層は一つだけ。迷うほどでもなく、トラップの類もない。
 駆け出し連中が経験を積みつつ、小遣い稼ぎをするのに最適の場所。
 個人の技量が三等級に相当する俺らが、今更出向くようなところではない。だが組んでいきなり難易度の高い場所にアタックするほど、おっさんたちは無謀ではない。
 まずはじっくりのんびり連携の確認でも、と考えたのである。
 だが出向いてみて、俺たちはすぐに後悔した。
 なにせ現場にいるのは、どれもこれもとびきり若い連中ばかり。
 十代で賑わっている盛り場に、いきなりむさ苦しいおっさんが踏み込めば、いやでも浮いて悪目立ち。

「うっ、これは想像以上にキツイ」

 これまで前衛として、数多の強敵を前にして一歩も下がらなかった俺だが、若者から向けられる胡乱そうな視線には、やや怯む。

「ははは、まいった。なんだか改めて自分の歳を考えさせられるぜ」と零したのはキリク。ピチピチとしんなり。並ぶと嫌でも突きつけられる現実に、少々げんなり。
「気にしたところでしようがあるまい」とはジーン。彼だけはひとり淡々としていた。その姿、さながら達観した賢者のごとく。
 もっともジーンにだけは、向けられる視線の質が明らかにちがう。特に女性陣からのモノが。
 周囲から向けられる好奇と蔑みが入り混じった視線を受けながら、おっさん三人組は入り口脇にある受付小屋にて手続きを済ませ、そそくさと洞窟の中へと。


しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...