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006 反発
しおりを挟む逃走する道すがら、見かけた連中にも奥での異変を報せて避難を促し、どうにか脱出に成功。
明るい世界に戻ってきた。
新鮮な外気を吸い込み、俺たちはほっとひと安心。
騒然としている現場を抜けて、入り口脇にある受付小屋にてギルド職員へ事情を説明。
すぐさま辺境都市トワイエ冒険者ギルド支部へと救援要請を出してもらうが、到着するまでには少々時間がかかる。
当然ながらロード級たちが、それをのんびり待ってくれるとは限らないので、俺たちは決断を迫られるわけだ。
ここで踏ん張るか、尻尾を巻いて逃げるか。
若くて活きのいい冒険者が大勢いるものの、経験はさっぱり。
個々の技量はともかくとして、連携なんてこともままならない。複数パーティーでの集団戦なんて、もちろんない。
俺としては寄せ集めにて迎撃戦をするよりも、全員での悠々撤退を希望したいところだったが、そうもいかない事情が判明する。
「あっちゃー。さすがにこいつは欲張り過ぎだ。新人研修のときに習っただろう? 『ダンジョンコアを削るときは、ほんの少しだけにしておきましょう』って」
いっしょに逃げ出してきたとある若手の冒険者のお嬢ちゃん。
彼女からおずおずと差し出された品を見て、キリクはぴしゃりと額に手を当て、天を仰ぐ。
俺は紅色に輝くコアの欠片を前にして眉間にしわを寄せた。
ジーンは「ほぅ」と頷き、ズレていた眼鏡の位置を人差し指の先でクイっと元に戻す。
ダンジョンは特殊な生命体。様々な恩恵を用意することで、外部から生き物を己の体内に誘い込み、魔力やら生命力やら死体やら、その他いろいろを吸い取っている。
それでダンジョンコアというのが、俺たちでいうところの心臓に当たるモノ。
普段はダンジョン内の壁や床などに埋もれて、適当に移動しているので、まず見かけることはない。
が、探索中に稀にだが巡り合うことがある。
そうなれば幸運を女神さまに感謝。
なにせダンジョンコアは市場価値が極めて高いからだ。ただし、間違ってもこいつを根こそぎ採ろうとかしてはいけない。そんなことをしてはダンジョンそのものが死んでしまい、冒険者は商売あがったり。だから少しだけおすそ分けをしてもらう。
ズボンのポケットに入れても動きの邪魔にならない程度に「ほんのちょっとだけ」の量を。
しかしここで欲張って、こぶし大とかを削ってしまうと大変なことになる。
その瞬間、反発と呼ばれる現象が起きてしまうから。
生命の危機を感じたダンジョンが過剰に反応してしまうことを、反発という。
それは自己防衛機能にて、内部から危険を排除しようとするあまり、通常とは比べものにならないモンスターの湧きや、活性化を招き、ときには上位種やロード級の発生をも促す。
とどのつまり、今回の騒動の発端は、すべてこの紅い欠片。
「そして逃げるのに夢中になるあまり、ついついダンジョンの外にまで持ち出してしまったと。ふむ。これで迎撃戦が確定したな」
ジーンが「うんうん」と独りごちている。
俺はいまにも泣き出しそうなお嬢ちゃんに「心配いらない。あとは任せろ、こちらで処理しておくから。それといらぬ騒ぎを起こすから、くれぐれもみんなには黙っているように」と言い含めるも、内心では頭を抱えていた。
なにせコアの欠片を持つ者は、ダンジョンより敵認定されている存在。
そんなものをここまで運んだ時点で、モブたちはまっすぐにこちらを目指して進んでくるのが、わかりきっていたからだ。
俺はパーティー「オジキ」に集合をかける。
おっさん三人で額を突き合わせて、こそこそ会議中。
「支部からの応援はたぶん間に合わないだろう。ロード級は俺たちでなんとかするしかあるまい」
「だな。モブたちは若いのに任せてもいいだろう」とキリク。
「そうだな。混戦での共闘も若手にとってはいい経験になるだろう。となればあとは……」とジーン。
おっさん三人組は、しばしロード級への対策について話し合う。
話がまとまったところで、早速、行動開始。
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