冒険野郎ども。

月芝

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007 冒険者

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 冒険者。
 この言葉と概念をトロワグランデの世界に持ち込んだのは、異世界より降臨した勇者たちのうちの一人。
 数多の試練を経て、ついに魔王を討伐した後。
 一人は姫と結ばれて王となった。
 一人はギルドを設立し、冒険者という職業を新たに作り出した。
 一人はさすらいの旅へと出て、各地に逸話を残しつつ、いつしか消息不明となる。
 以来、二千年以上も経つというのに、相も変わらず世界からは危険やナゾが尽きることもなく、おかげで冒険者稼業は大盛況。
 それでもって、現在、おっさんパーティー「オジキ」の三人組は、モブゴブリンのロード級を相手に奮闘中。
 現状へと至る時系列はこうだ。

 ダンジョン内より外部へと持ち出されたコアの欠片を追うようにして、溢れだしたモブの集団。
 これを入り口付近にて向かえ討つは若手冒険者たち。
 魔法や弓矢などの遠距離攻撃にて一斉攻撃。
 先制攻撃には成功するも、数を頼みに押し寄せるモブの波を止めることはかなわず、そのまま乱戦へと突入。
 案の定、統制のとれていない現場は荒れに荒れた。
 いや、当初は年長者である俺たちがまとめるつもりでいたのだが、いかんせん当パーティーは発足直後にて、等級すらも定まっていない状況。
 冒険者は基本的に等級で相手を判断する。
 上には敬意を払い、同級はライバル視し、下は「フン」と鼻で笑い見下す。
 もちろん熟達していけば、必ずしも等級がすべてではないことも理解していくのだが、いかんせんここは若手の巣窟。どうでもいいところで基本に従順忠実。
 よって、助け出した連中以外、草臥れ気味のおっさん三人組の言うことなんて、ロクすっぽ聞きやしない。
 しようがないので若手のことは若手に任せることにし、救助した連中に丸投げ。
 俺たちはロード級の相手だけに専念することにする。

 洞窟の奥より一番最後に悠然と姿を見せたロード級。手には丸太と見まがう棍棒。
「いくらロード級だとて、しょせんはモブの延長だろう」ぐらいに考えていたのだろう。多くの若手がその浅黒い不気味な威容を前にして、固まる。
 このままだと完全に呑まれてしまい戦線は瓦解。一方的に蹂躙されるしかない。
 それをさせじと最初に動いたのはキリク。
 洞窟入り口脇にある受付小屋。その屋根の上から投石。
 威力はない。あくまで自分の方へと注意を惹きつけるための行動。
 放たれた石はコツンとロード級の肩に当たった。
 ギョロリとロード級がキリクを睨む。
 キリクが見せつけるようにして、紅い欠片をひらひらさせると、案の定、喰いついてきた。
 周囲のモブたちを押しのけて、怒りの形相にてキリクの下へと迫るロード級。
 だがあえてキリクは動かない。
 ついにはロード級が小屋の前へと到達。なお止まることなく勢いのまま突っ込んでくる。
 手にした丸太のごとき棍棒を振り下ろす。
 ギリギリのタイミングでキリクの身が最寄りの木へと飛ぶ。あらかじめ枝に結びつけておいた特製の組み紐を使い、空を疾走。
 直後に屋根が大きくたわんで粉砕。ロード級は壁や扉をぶち抜いて内部に足を踏み入れ、小屋をひと息に打ち壊さんとする。
 太い四肢が暴れたために、小屋はたちまち倒壊。
 が、その時、急にヤツの巨体が沈んだ。
 床が抜けたのだ。
 これこそが俺たちの狙い。
 受付小屋の地下にある倉庫。これを落とし穴に見立てての作戦。
 なお倉庫内にあった価値のあるモノは、あらかじめ外へと運びだしており、残っているのは油がはいった壺や、松明用の布や薪ばかり。
 胸元まで穴にはまり込んで、もがくロード級。なんとかはい出そうと地面へ手をかけたところに、振り下ろされたのは俺が手にした斧。倉庫内にあったのをちょいと拝借。

「ダン!」鈍い音がして小指と薬指が仲良く刎ね跳んだ。

 痛みでのけ反り、「ガァァ」とロード級がわめく。
 大きく開いた口元。そこにジーンの狙いすました矢が飛び込み、口腔を貫く。
 並のモンスター相手ならばこれで絶命するのだが、さすがはロード級にてしぶとい。
 そこで俺は事前に用意しておいた松明を投入。
 地下の火種に引火して、ロード級の全身がたちまち紅蓮の炎に包まれた。


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