それいけ!クダンちゃん

月芝

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033 ビブリオ詭弁論大会 前編

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 つばくろ高校には体育館の他に立派な講堂があります。
 講堂は講義・説経などを行うための建物。
 大学とかではわりとありふれた施設ですが、高校でわざわざ別棟で構えているところは珍しいです。
 建物はどこぞの大学が廃校になる際に、壊すのはもったいないと移築されたものだけあって、なかなか趣きがある造り。
 壇上をぐるりと囲む席は半円に配置されており、段々になっています。
 かつての国会内の風景を彷彿とさせる……というのは、いささかほめ過ぎでしょうか。
 まぁ、せいぜい地方議会ぐらいですかね。

 そんな由緒ある講堂内は熱気に包まれており、衆人環視の前で白熱の舌戦が繰り広げられております。
 ただいまビブリオ詭弁論大会の真っ最中。
 ビブリオとは書評のことです。
 そして詭弁とは、道理に合わないことを強引に正当化しようとする弁論、論理学で外見・形式をもっともらしく見せかけた虚偽の論法を展開すること。
 このふたつをかけ合わせたのがビブリオ詭弁論大会なのです。

 では、何をする大会なのかといえば、参加者たちは互いに一冊のオススメ本を持ち寄り、これについて熱く詭弁を弄してはアピールをするのです。
 相手をいい負かし、なおかつ客席の支持をより多く集めた方が勝ちとなる、観客参加型のイベント。一対一のトーナメント方式で、最後まで残った者が優勝です。

 参加者たちはこの日のために磨き上げてきた舌先三寸を駆使して、多彩かつ多岐に渡る主張を展開します。
 いかにみなの気を引きつけ大勢を煙に巻けるかもさることながら、肝心なのは本の選定です。
 素晴らしい内容の本を、たんに「おもしろい」「ぜひ読むべき」「これを知らないと人生の半分損をする」などと、べんちゃらするのなんてつまらない。

「誰もが見向きもしないような本」あるいは「なんだこれ? と首を傾げるような本」もしくは「こんなの読むだけ時間のムダだよ」としかおもえないような、じつにくだらない本や奇書の類をわざわざ発掘しては持ち込む。あえて古本屋の奥でずっと埃をかぶって忘れ去られていたような本にこそスポットライトをあてる。
 それを言葉巧みに勧めては、ときにこき下ろしたり、ユーモアも交えつつ、聴衆の興味を引き、「そこまで言うのならば、ちょっと読んでみようかしらん」とおもわせる。
 それこそがビブリオ詭弁論大会の醍醐味なのです。

 なお本大会の主催は詭弁論部です。
 そしてこの大会にはカエちゃんも初出場するとあって、クダンちゃん、ハッちゃん、チヨちゃんら仲のいい子たちは連れ立って応援へ駆けつけたという次第。

「それにしても」とクダンちゃんは先ほどからずっと感心しきり。「さすがは詭弁論部の方々。みなさんとっても弁が立つのですね」
「やっぱり上級生たちは口がウマいね。ノドの仕上がりがぜんぜんちがう。演歌歌手ばりだよ」

 とハッちゃん。

「まぁ、よくよく考えてみれば、嘘八百の適当なのばっかりなんだけどね。でも、それが妙にクセになるから困る」

 とはチヨちゃん。

 どちらかといえば、ふたりはあまり大会に興味がなくて、あくまでお義理で応援にきていたのですが、いつしか、すっかりその魅力にはまってしまったようです。
 いい感じに煙にまかれていますね。クダンちゃんもフムフム。
 でもそれも無理からぬこと。
 だって、とっても見応えがあって楽しいんですもの!

 参加者たちはたんなる弁舌のみを武器に舞台へあがるのではありません。
 各々、服装やらパフォーマンスも工夫を凝らしております。
 
 ある方は、法被にさらしに、ねじり鉢巻にて、手にはハリセンを持ち、バンバンババン。
 バナナのたたき売りのごときスタイルにて「さあて、お立合い」と独特の口上を述べる。
 
 ある方は、白衣をまとってはスライドを駆使し、よくわからないグラフや数字を提示しては、さも科学的であるかのように理路整然と本の解説をする。

 またある方は、講談師のよう、本当はちゃんと読んでいないくせして、さも人生の愛読書のようなフリをしては、ベラベラと。

 かとおもえば別の方なんて、ジーンズにハイネックの白いトレーナー姿という、ラフだけどちょっと独特のスタイルにて、マイク片手に客イジリを始めては、客席をどっと沸かせたりもする。

 こじつけ、でたらめ、嘘、おおげさ、まぎらわしい、屁理屈、ごたく、論理・論点のすり替え、言葉のあや、無茶な言い分、言いがかり、堅白同異、言葉のレトリック?

 言論が自由の翼を得て、バサバサ。
 おもうさまに空を飛んでいる。
 ときおり同じところをグルグル回っていたり、ポテっと墜落するのはご愛敬にて、それもまた聴衆の笑いを誘う。

 そうしているうちに、一回戦の第九試合となりました。
 いよいよカエちゃんの出番です。
 クダンちゃんは手にしたハンカチをギュッと握ってはハラハラしながら、友だちの勇姿を見守ります。


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