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034 ビブリオ詭弁論大会 中編
しおりを挟む「「「せーの、カエちゃ~ん、けっぱれー」」」
クダンちゃんたちが客席から声援を送れば、壇上にて軽く手を振りにこり。
大丈夫、初舞台にもかかわらず友人は落ち着いているようです。
カエちゃんは、首から双眼鏡を下げ、サファリハットにサファリジャケットにサファリズボンにブーツという、全身サファリルックの探検隊の格好をしていました。
そして紹介するのは『ヤナグチヒロユキ探検隊、地底帝国へ行く!の巻』というドキュメンタリー本です。
なるほど、だからこの服装なのですねとクダンちゃんは、フムフム。
「えーこほん」
軽い咳払いののちに、カエちゃんは語り始めました。
〇
ヤナグチヒロユキという人物は探検家である。
というか、そもそもの話として、探検家という資格や職業は社会に存在しない。
だから当人が「だってしょうがないじゃない。探検家なんだもの」と自称すれば、誰がなんといおうと立派な探検家なのである。
この人物についての詳細はわかっていない。
かつて東京と呼ばれたところに住んでいたらしいのだが、あいにくと首都消失事件にて、彼のことを記録した戸籍やら履歴など、データ類の一切合切が紛失しており、いまとなっては確認しようもなく……
そんなナゾの探検家が率いる一行が、とある絶海の孤島へと赴くことから物語は始まる。
荒ぶる波濤を制し、どうにか上陸を果たした一行。
さっそくジャングルへと足を踏み入れたら、そこで待っていたのは恐ろしい大蛇、狂暴な獣、毒を持った虫……そして首狩り族!
襲い来るそれらを撃退しつつ、なおも進んでいくと到着したのは島の中央にてデデンと構えている山であった。
探検隊は山を登り、頂上を目指す。
しかし登山道なんてものはない。足場は悪く脆く、ときおり落石がゴロゴロと。
直撃すれば大怪我だ。滑落すればおしまい。
唯一の救いは、あれだけ執拗に襲ってきていた首狩り族の連中が、山に入ったとたんにピタリとなりを潜めたこと。
どうやら連中にとって、ここは禁足地、あるいは聖域なのかもしれない。
隊員らは互いを鼓舞しつつ、ときに助け合いながら、どうにかこうにか山の天辺に到達した。
すると待っていたのは灼熱のマグマがうねる火口。
さすがにこれ以上は進めないかとおもった矢先のこと、その火口のマグマだまり近くにてぽっかりと口を開けている洞窟を発見した。
しばしの休憩ののち、探検隊は洞窟へと向かった。
暗い洞窟内部は迷宮のようにいりくんでいる。
迷ったら二度とは地上に戻れないだろう。
しかし勇知に長けたヤマグチヒロユキは「こんなこともあろうかと持ってきた、コレが役に立つ」と取り出したのは、赤い毛糸玉。
これを入り口に結んで、スルスルのばしておけば、帰り道に迷わないという寸法だ。
おかげで一行は迷わずに進むことが可能となった
そうやって進んだ洞窟の奥で探検隊を待っていたのは、廬山の大瀑布もかくやという、滝であった。
轟々、大量の地下水が暗黒の世界へと飲み込まれていく。
凄まじい光景だ。
ふつうならばここで満足して引き返す。だがヤナグチヒロユキという男はちがった。
あろうことか、彼は「ゆみやはちまん、箱根の権現も照覧あれ! えぇい!」と叫ぶなり、崖からジャンプしたのだ。
滝壺へと命綱なしのバンジー。
あるいは世間一般でいうところの投身自殺?
これまでの慎重さが一転しての大胆不敵っぷり。
さすがにこれにはもう探検隊の仲間たちもついていけないだろうとおもいきや、さにあらず。
隊員らや次々と隊長に続いて「えいや」と滝に身を投げた。
〇
ここまでが本の前半部分です。
手に汗握る展開にて、もう何が何やら。
ツッコミどころが満載です。とんだ与太話にて荒唐無稽にもほどがある。昼間から駅前の立ち飲み屋にてたむろしている、呑兵衛さんたちの武勇伝の方がまだマシかも。
これでノンフィクションというのは、さすがに無理がある。
なのに、そうとは感じさせない詭弁を次々に弄していくカエちゃん。
ビブリオ詭弁論対決の対戦相手から矢継ぎ早やに繰り出される口撃を、屁理屈をこねてはかわし、論破してねじ伏せていく。
まだ一年生ながらも、その語りはじつに堂に入っており、若手のホープといっても過言ではないでしょう。
もう立派な詭弁論部員です。
そんな頼もしい友人の活躍を応援しつつ、ヤナグチヒロユキ探検隊の冒険もいよいよ佳境へと。
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