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046 恋文狂騒曲 ― 波紋
しおりを挟む授業中にもかかわらずチラチラ。
互いに目配せをしてはソワソワ。
ときにはこしょこしょ内緒話なんぞも。
すっかり気もそぞろです。
ですが落ち着かないのは、一年二組だけではありませんでした。
ナゾの便箋に翻弄されている、三組、五組、九組、十一組も似たり寄ったり。
こういうのは当事者らはいまひとつピンときませけれども、傍からみているとよくわかるもので。一段高くなっており、教室中が見渡せる教壇の上からならば丸見えです。
先生方の間でも「おや? なんだか今日の一年生たちは様子がヘンだぞ」と首をかしげられており、かつ他のクラスにもウワサが広まりつつありました。
この分では時間の問題です。昼休みの頃にはもう学年中に、情報が拡散されていることでしょう。
そうなれば騒ぎはますます大きくなってしまいます。
こうなると学校側も黙っているわけにはいきません。
ですが先生たちからの介入なんてあった日には、生徒会も黙ってはいません。
なぜなら生徒会は「あくまで生徒の自主性を重んじる」というスタンスだからです。民事不介入ならぬ生徒事不介入です。
べつに学校側と表立って対立する立場ではありませんけど、余計な口出しはご遠慮願いたいところ。
おもわぬ波紋が生じています。
この事態を穏便にすますには、一刻もはやく便箋の送り主とその意図を明らかにする必要があります。
こうなったらしょうがありません。
意を決して、封を切るべきか。
う~ん、じつに悩ましい……
三人集まれば文殊の知恵というけれど。
クラスの女子たちが集まっても、これといった妙案は浮かばず。
みな腕組みにてウンウンうなるばかり。
「ねえ、クダンちゃんのチカラでどうにかできないの?」
予知能力で手紙の内容を推察してはどうかと言い出したのはカエちゃんです。
このチカラを乱用するのはよくないことなのは重々承知だけれども、ここはみんなの平穏な学校生活のために、曲げてどうにか。
ですが……
「すみません。このチカラはちょっとした閃きみたいなものでして」
クダンちゃんの予知能力は自由自在とはいきません。
いえ、ちゃんと手順を踏めばある程度までは操れるのですけれども、いまみたいに教室でホイホイとできることではありません。
あと手紙の中を見るのは、予知ではなくて透視能力の類なのでは?
ともおもいましたが、クダンちゃんはそのことはあえて口にしませんでした。
ですが、このやりとりが呼び水となったのか。
急にビビビときました。
これは予知能力が発動する前触れです。
パッとクダンちゃんの脳裏にとある人物の姿が浮かびました。
けれどもよく見知った人物だったので、クダンちゃんはおもわず「えっ」と驚きの声をあげました。
その人物とは誰あろう、園芸部の部長である大谷津姫だったからです。
細目でほんわかした雰囲気の持ち主。三つ編みがとても良く似合うおっとりした性格で、花と土をこよなく愛す、胸もたわわな三年生の先輩。
豊穣を司る女神のような大谷部長は面倒見のいい方で、未熟な新入生にも親切に指導をしてくださるもので、クダンちゃんも部活動ではとてもお世話になっています。
大谷部長がぶらりと一年二組の教室へとやってきては、スパッと快刀乱麻を断つ。
視えたのは、そんな映像でした。
ですが、あいにくと先輩が何と言ったのかまでは聞き取れず……
たったいま視えた予知についてクダンちゃんはみなに教えました。
するとカエちゃんが「先輩が来るタイミングはわからないの」と訊いてきたもので、クダンちゃんは「う~ん」
よくよく先ほどみた予知の内容を思い返してみる。
するとその場面の中に教室に設置されている掛け時計が映り込んでいたことを思い出しました。時計の針はたしか……
「あっ、たぶんお昼休みに入って少し経ってからだとおもいます」
ナゾが明らかになるのは昼休み!
乞うご期待?
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