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048 センチュリーフラワー
しおりを挟む恋文騒動があった週末のこと。
予定通りに、郊外にある植物園へとやってきた、つばくろ高校の園芸部一同。
植物園は亀の甲羅のようなガラスのドームにて、なかには約一万三千種類、国内外から集められた多種多様な植物が展示されているだけでなく、四季折々の花や、珍しい植物などが工夫を凝らし展示されています。
研究や保護活動にも積極的に取り組んでおり、希少植物の栽培などにも尽力しており、環境を守る一助を担っています。
豊かな自然を間近に感じられ、散策するだけでワクワクしてくる、学びと癒しのステキ空間。
クダンちゃんもじっくりと見た回りたいところですが、今日のところはガマンです。
なぜなら本日のお目当ては『リュウゼツラン』という植物だからです。
漢字だと竜舌蘭と書くそうです。
アロエをヌベーっと薄くのばしたような葉を持ち、それが竜の舌のように見えることから、そう名付けられたんだとか。
なおこの草の汁に触れると肌がかぶれるからと、大谷部長からは事前に注意がありました。
ではどうして、わざわざ連れ立ってこの植物を見に来たのかといえば、「今週末あたりに開花しそう」との情報を得たからです。情報提供者は園の職員にて、つばくろ高校園芸部のOBです。
このリュウゼツラン、じつは数十年から百年に一度しか花が咲きません。
一世紀に一度だけしか咲かないという意味で、センチュリーフラワーとの異名を持つ。
だから見れたら超ラッキー!
ですが、珍しいがゆえに地域によっては、不吉とされていた悲しい歴史を持ちます。
ある地域では長い雌伏を経てから花を咲かせるので、なんて逞しくて根性があるんだと感心し、生命力の象徴として縁起がいいとされていたんだとか。
リュウゼツランが持つ強い耐久性や長寿命は、逆境を乗り越える力の象徴とされていたんですね。
ですがべつの地域では、一度花を咲かせると枯れてしまうことから、滅びと結びつけられて縁起が悪い、不吉の象徴と見なされていたんだとか。
まぁ、しょせんは見る側の心持ち次第なので、リュウゼツランからすればいい迷惑なのでしょうけど。
ちなみにリュウゼツランの花言葉は「気高い貴婦人」「繊細」「長寿」「忍耐」「固い愛」です。
うーん、けっこうロマンチックなのが多いかも。
〇
園内には植物がいっぱい。
物珍しさに、ともすれば止まりがちになる部員たちの足。
それを大谷部長が「はいはい、また今度、連れてきてあげるから、今日のところはちゃっちゃと行くわよ」と急かし、やってきましたリュウゼツランのところ。
見物客はクダンちゃんたちだけでなく、他の高校の園芸部員や、大学生に研究員とおもわれる方から、一般客まで、けっこうな数が集まっています。
初めてリュウゼツランを目にしたクダンちゃんは、おもわず「おっきい!」と叫んでいました。
一年生部員たちは、みな初見だったらしく、似たり寄ったりの反応です。
二年生や三年生たちは知っていたようで、驚く後輩らにニヤリとしてやったり。
なんでもこのリュウゼツラン――
もともと幅が20センチ、長さが1メートルほどの葉を持ち、高さも1メートルあるかないか程度だったのですが、植物園に移植されてヌクヌク大切に育てられているうちにスクスク育ち、気づけば十倍ほどにもなっていたそうな。
いまではとってもワサワサで、まるで葉っぱのお化けのようです。
葉っぱの奥に一本のマストのような茎が生えており、そこから四方八方へと花茎が延びており、先端にはチア部が使っているポンポンみたいなのをつけております。
どうやらあれがリュウゼツランの花の蕾のよう。
かなり膨らんでおり、たしかにいまにも咲きそうです。
クダンちゃんは鼻をスンスンさせては、匂いを確かめます。
花の種類によっては、開花前から薫るモノもありますから。
ですが、とくに何も感じませんでした。
なのに大谷部長は部員一同に命じました。
「総員、すみやかにゴーグルとマスクを着用せよ」と。
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