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014 我ら初等部探検隊
しおりを挟む我ら初等部探検隊、ジェホホウダンの森を行く。
目指すは森の奥深く。
いざいざ進め、未知なる冒険と神秘とお宝を求めて。
ずんずん先頭を歩くのは頼りになるシモン隊長である。ワイルドな見た目に反して面倒見のいい兄貴は、森の三層に何度も来ているらしく、自分の庭のごとく迷いのない足取りだ。
シモンが隊を率いるかたわらでは、ときおりゴンとテトら獣人の隊員たちが鼻をヒクヒクさせる度に、あっちこっちそっちと指で差し示す。
するとすかさず蟲人のザレクと類人のクリスプがササッと動き、慣れた手つきにて回収していたのはキノコや薬草に木の実などである。
丁寧かつ素早く採集しては、小袋に分けて背負い袋に収納していく。
無駄なく無理なく迅速に。じつに鮮やかな手並み。豊富な知識と高い技術力がなければ出来ない芸当であろう。
「すごいなぁ、たいしたもんだ」
枝垂は感心しきりである。
とはいえ、ぼんやりついて行くだけなのも気がひける。
そこで自分も手伝おうとしたのだが、とたんに「ダメッ!」テトにぴしゃりと止められた。
枝垂が引っこ抜こうとしていたのは大根みたいなやつで、モンゲエという根菜の野生種だった。
畑にて栽培されているモンゲエはわりと大人しいのだが、野生種の扱いにはコツがいる。
なにせうかつに引き抜くと奇声を発するのだ。それを耳にするとたちまち幻覚幻聴に襲われ、混乱状態に陥ってしまう。そのどさくさに野生種のモンゲエは逃げるらしい。
混乱といっても軽度の酩酊みたいなもの。たいしたことはない。後遺症も残らず、放っておいたらじきに治る。
とはいえここは森の中だ。町の居酒屋で酔っ払うのとは違う。ちょとしたことが、より深刻な事態を招きかねない。一人の軽率な行動が、仲間たちを危険に晒す。
だからこそのテトの叱責であった。
初等部で一番の年少さんであるテトに叱られて、枝垂は「ごめんなさい」と素直にあやまり反省しきりである。
それを横目にモンゲエはクリスプがサクっと回収した。
採取方法はいたってシンプル。手拭いを丸めてモンゲエの口に突っ込み、声を出せなくしたところを問答無用で引っこ抜くだけ。
引き抜かれたモンゲエは、しばらくクリスプの手の中でジタバタしていたけれども、じきにぐったりして動かなくなった。
異世界の野菜はとっても活きがいい。
☆
少しだけ先行しているシモンが不意に立ち止まった。
チラっとこちらをふり返り、ハンドサインを送ってくる。
なんだあれ、ちょっとカッコイいい。けど枝垂はチンプンカンプンだ。
でも他のみんなはハンドサインの意味がわかるらしく、すぐに準備を始める。
弓矢に投網、ロープの両端に鉄球が結ばれているのは投擲武器のボーラ。
狩りの準備……どうやらシモンが獲物を発見したようだ。
「危ない相手じゃないよね?」
狩りなんぞはしたことがない。採取したのはセミぐらい。そんな枝垂がおずおず訊ねれば、ゴンが「心配いらない。見つけたのはニッキーマウスだから」と教えてくれた。
ニッキーマウス
体長六十モナレほどの大きな野鼠。でっぷりとしたお尻とまん丸な黒耳が特徴、肉と毛皮がお店で買い取り対象になっている。
ちなみにモナレってのは長さの単位。一モナレで一センチぐらいだと思っておけばいいよ。
子どもたちは何度も狩ったことがあるので心配いらないという。
なのに、なぜだろうか。
ものすごく心がザワザワする。
そこはかとなく漂う不安感、どうにも落ち着かない。
枝垂は尻のあたりがムズムズしてしょうがない。
ネーミングかな? やはりネーミングに問題があるのかな?
たった一文字違い……
ギリギリだよ! 攻めすぎだよ!!
でも世界線を越えている異世界のことだし、きっと大丈夫のはず。
だと信じたい!!!
などと枝垂が葛藤を抱えて悶々としているのをよそに、狩りが始まった。
かとおもったら、即行で終わった。
秒殺どころか瞬殺だったよ。子どもたちの連携がエグすぎる。
シモンが投石にてニッキーマウスの注意をそらしたところで、ゴンがボーラを投げて拘束、紐が絡まりジタバタしているところをザレクが素早く駆け寄り、首の後ろの急所を手にした矢でぶすり。「弓、使ってないじゃん!」とツッコミを入れる暇もなく、ニッキーマウスは動かなくなった。
☆
ニッキーマウスが六匹に、ビコニャンという憎たらしい顔をした大きなネコっぽいのが一頭、ウリボーという名前なのに大人のイノシシみたいなのが一頭。
本日大猟につき、子どもたちはホクホク顔だ。
枝垂もほんの少しだけ狩りに貢献した。
なんとなんと、枝垂が星の力でだしたカリカリ梅をその辺に撒いておくと、獲物が匂いに釣られておびき寄せられることが発覚したのである。
たまさか休憩中に、みんなで仲良くカリカリ梅をカリコリしていたら、そこにいきなりウリボーが乱入してきたもので驚いたのなんのって。
返り討ちにすることには成功するも、本当に焦った。
でも怪我の功名にて、星クズの勇者の価値がちょびっとあがった。
狩った獲物の血抜きと捌くのは、シモンが中心になって行う。
てきぱきと解体を進めていくシモンの腕前に感嘆しつつ。
「……そういえばカーラスに向けてはバンバン撃っていたのに、狩りでは魔法を使わないんだね。それに狩りだったら例の魔銃とかいう武器を使えば、もっと楽そうなんだけど」
枝垂は首をひねる。
魔銃はそのまんまの飛び道具である。
地球の銃器類の魔法版だ。いろんなタイプがあるのだが、一般的なのは込める弾丸によって属性を変えられる魔銃である。状況に応じて弾丸を使い分けることにより、もっとも効果的な攻撃を放てるのと、自分の魔力をほとんど消費することなく、魔法を撃ち続けられるというメリットがある。連合軍および各国の軍部でも正式に採用されている主力兵器だ。
「魔銃か……、あれは森の狩りではあまり使い勝手がよくないんだよ。発射音がパーンって響くから他の獲物が逃げちまう。
魔法を使わないのは必要以上に森を傷つけるから。昔からよくないとされている。おれはまだ経験がないけど、森を荒らすと反発が起きるって話だ。森から大量の獣が溢れ出し、ヤバい禍獣が発生したりするらしい。
それにおれの場合は火属性だから、なおさらかなぁ。
風の属性持ちがいればよかったんだけど、クラスの男子にはいないから」
シモンは火、ゴンは地、ザレクは光、クリプスは水、テトは地、そして枝垂は梅である。
地属性の魔法で落とし穴とかを作ってもいいのだが、生半可な深さだとぴょんと脱出されてしまう。それに罠に誘導したり悠長に待っている時間はない。子どもたちが暗くなる前に帰宅しなければならないのは、世界が異なれども同じなのである。
なお風属性の魔法が使えたら、矢にまとわせて放ったり、風の流れをコントロールして匂いをごまかし気づかれないように接近したり、身にまとって「加速!」とかもできる。
「風の魔法は便利なんだよなぁ。風呂上りに体を乾かすのとかにも使えるし」
ワイルド寄りの風貌の獣人は全身モフモフで毛深い。だから風呂上りに濡れた毛を乾かすのがとってもたいへん。
いちおう家庭用の魔道具でドライヤーみたいなのはあるそうなのだが、とにかく時間がかかってしょうがない。
だからやんちゃ盛りの男子の獣人は、お風呂嫌いが多いという。
でも水浴びは好きだというから、枝垂は「なんだかなぁ」
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