星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!

月芝

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015 町へ行こう

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 本日の枝垂は両手に花にて、城下町にお邪魔している。
 つい先日のこと、初等部の男子だけで森に狩りへと行った。
 教室にてその話で盛り上がっていると、それを聞きつけた女子たちが「だったら枝垂くん、次は私たちとお出かけしましょう」と誘われた。
 そして枝垂が返事をする前に、女子たちの中では行くことがすでに決定していた。
 この決定に「否!」と首を振る度胸なんぞ、もちろん枝垂にはない。

 青い瓦屋根の木造家屋たち、平屋が多いが二階建てもちらほらと。あまり背の高い建物がないのは、ときおりキツイ突風が海の方から吹くことがあるから。
 城門前から港まで真っ直ぐにのびた大通り、石畳が敷き詰められており、左右には様々な店が軒を連ねている。
 碁盤の目のように整備されている城下町は趣があり、古都を連想させる落ち着いた佇まいだ。
 賑わいはそこそこ。小さな島国であるから、こんなものであろう。オーバーツーリズムで四苦八苦するよりかは、このぐらいの方が枝垂には丁度いい。

 かくして町ぶらスタート。
 初等部二年生コンビの蟲人スカーラと類人チアに「こっちこっち」と手を引かれて、最初に訪れたのは、何故だが防具屋だった。
 あれ? 想像していた町ぶらとちょっと違うんだけど。
 枝垂は小首を傾げる。ふつうはウインドウショッピングとかを愉しむのではなかろうか。
 すると内心の困惑が顔に出ていたらしく、チアがぼそっと。

「……枝垂は紙装甲。すぐ死ぬ。だから防具は必要」

 事実、その通りの虚弱っぷりにて、枝垂はぐうの音も出ず。
 加護が受け損なった星クズの勇者の体はとても弱いのだ。子どもとのハイタッチで肩を脱臼するほどに。
 明日は魔法の授業があることだし、備えあれば憂いなし?
 というわけで「お邪魔しまーす」と防具屋に入り、女子たちの着せ替え人形と化す枝垂であったのだが、あいにくと枝垂に使えそうな防具はひとつもなかった。
 なにせここにある品々はすべて、ギガラニカの住人たちを想定した造りになっている。
 ちゃんとした星の勇者であれば着こなせたのであろうが、星クズの勇者だと一番軽いはずの革の鎧でもろくすっぽ動けなかった。
 兜をかぶれは首がもげそうになり、スネ当てやブーツを装着すれば足を引きずり、股関節が悲鳴をあげる。小盾ですらも「うんとこどっこいしょ」と両手で気合いをいれてどうにか持ち上がる、けど腰がやばいかも。
 これでは防具をつけたカカシである。ただの的にて、とても実戦には耐えられない。

 とんだ冷やかし客であろう。
 防具屋の親父もさぞやお冠かとおもいきや、さにあらず。
 強面をくしゃくしゃにしては、腹を抱えて「ひぃひぃ」爆笑していた。
 それでもひとしきり笑ってから、「あんちゃんの場合は魔道具の方がいいかもしれんなぁ」とアドバイスをくれた。

  ◇

 というわけで、お次は魔道具屋へとやってきました。
 いろんな道具が陳列されている。雰囲気は家電量販店である。
 ぱっと見に枝垂にも使い道がわかる道具から、「なんじゃこりゃあ?」と首を傾げる品まで。充実のラインナップは島一番だとキツネ男な店主が胸を張る。
 けど、引率役の四年生のネコ獣人のルチルがこそっと教えてくれた。

「えらそうなことを言ってるけど、島内で魔道具屋はここだけだから。あと型落ちの中古品もけっこう混じってる」

 ここは僻地の離島、中央のようにはいかない。これが技術大国であるドラゴポリスや魔法大国であるクランコスタならば、またちがうのであろうが、それは言っても詮無き事であろう。

「え~と、防犯グッズなら、この辺だな。おすすめは、その指輪だ。簡易結界が張れるぞ。ただし二回ごとに輝石を交換せにゃならんが」

 いざという時のために守りを固めたいと相談したら、店主が勧めてくれたのが青い輝石のついた指輪である。
 身につけておけば緊急時にビカっと自動で結界が発生して、危険から身を守ってくれるらしい。使用される輝石は人工の物でも問題なく、交換用の輝石の値段は銅貨五枚で、自分で交換可能。
 これならば邪魔にならないし、なにより本体価格が銀貨三枚とお財布にも優しい。
 ちなみに銀貨の貨幣価値は日本円にして千円ぐらいだ。
 金貨が一万円で、銅貨が百円に相当し、紙幣はない。より大きな額面を扱うときには手形やクレジットカードを用いるのがギガラニカの常識である。

 じつは枝垂、エレン姫からクレジットカードを持たされており、常識の範囲内であれば好きに使ってかまわないと言われている。
 とはいえ、これまでほとんど城の中にいたもので使う機会はなかった。
 だから枝垂はスマートにカードを取り出しては、お支払いをしようとしたのだけれども、そこで「待った」をかけたのは、三年生のイヌ娘のテリアであった。
 テリアはふだん、放課後はメイド見習いとして働いているのだけれども、本日は枝垂のお目付け役として同行してくれている。

「その商品、二回まで攻撃を防げるとのことですが、実質一回ですよ」

 攻撃を喰らう。
 指輪が発動して結界が構築される。
 でも、枝垂だと踏ん張れないので結界ごと吹っ飛ばされる。
 派手に飛ばされ、ぽとりと落ちる。あるいはどこぞに激突する。
 するとそれらも攻撃と判断されて、続けて結界が発動。
 直撃こそは回避するも、振動と衝撃は喰らうので、すでにふらふら。
 挙句に起き上がる頃には、結界はすでに切れており、輝石も燃料切れにて、指輪はただの装飾品と化している。
 そんな緊急時に、のんびり輝石を交換できるはずもなく……

 テリアの説明を受けて枝垂は愕然とし、店主は「ちっ」と舌打ちした。


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