とりあえず逃げる、たまに頑張る、そんな少女のファンタジー。

月芝

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13 街ブラ

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 王城にて役立たずと認定された途端に、お付きのメイドが若い子から腰の曲がった老婆に替わった。表面上の待遇こそは変わらないものの、それも時間の問題のように思う。
 異世界に召喚されてから、早や二週間が過ぎました。移住生活は可もなく不可もなくですが、私という存在がいささか問題になりつつあるようです。
 だってクラスメイトらが朝から晩まで、慣れない戦闘訓練にヒィヒィ言っているのを尻目に、一人のほほんと過ごしてるんですから。
 委員長と彼に近い男子らが「仕方がないじゃないか。彼女には僕たちと違って戦う力がないんだから」と私を庇うほどに、女子らの反感がうなぎ昇りです。特に彼のことが好きらしい子を中心としたグループが、露骨に仕掛けてきます。もっとも私は危機察知を活かして、躱しまくっていますが。おかげで彼女たちは怒りの矛先を見失い、ますますストレスを抱えるという、負のスパイラルに突入しています。若い身空でハゲないといいんですけど。

 部屋付きのお婆ちゃんメイドに「城下町へ行きたい」とお願いすると、すんなり許可されました。これを機会に邪魔者を消す算段か? とも邪推しましたが、単に面倒だから放っておけという、城側の考えが反映されただけみたいです。勇者組が形になったら一軍を率いて魔族領に大攻勢をかける準備に、みな大わらわ。役立たずに構っている暇などないのです。
 街ブラには、一応は見張り兼お付きの従者の青年が付き添います。やる気のまるでない彼はダラダラと後ろからついて来るだけで、案内する気もないようですね。
 初めて見る異世界の街は……、思っていたより感動はありませんでした。だってまんま神域で遊ばせてもらったゲームの景色なのですから。おかげで新鮮味は激減です。
 王都という場所柄、人もモノもそこそこ多くて賑わっています。
 私はその辺のおっちゃんに声をかけて、品物を買い取ってくれる店の場所を訊ねてから、そちらへと向かいました。
 大きめな商店、従業員教育も行き届いているらしく、いきなり押しかけて来た小娘にも、丁寧に対応してくれます。「買い取って欲しい品物がある」と従業員に告げて鉛筆、消しゴム、ノートを揃えて手渡すと、即座に奥へと通されました。上質なお茶とドライフルーツで持てなされていると、店の御主人自らが顔を出しました。
 彼の前でノートに鉛筆で文字を書き、それを消しゴムで消すという実演を見せると、その場で商談が成立しました。さすがは都で気勢を挙げている商人です、決断が速い。
 異世界に来てから、せっせと創成魔法で作り出して貯めておいた品を全部、鞄から取り出して店主に渡します。ちなみに私の鞄はマジックアイテムです。この世界には収納魔法が施された鞄が普通に出回っているそうで、容量や時間停止などの性能によって価値はまちまちですが、オジ神様から餞別に頂いたこの鞄は、ちょっと洒落にならない性能のようです。だから詳しいことは誰にも話せません。
 鉛筆五百本、消しゴム五百個、ノート三百冊が納品されました。代金として袋一杯の金貨を貰いました。これが適正取引価格かどうかはわかりませんが、ここは店主の男気を信じるとしましょう。固い握手を交わした後に、お暇します。
 取引の間中、ずっと私の後ろで目を白黒としていた青年。いきなり始まった商談に、飛び交う品と、大量の金貨に度肝を抜かれたようです。
 そんな彼に私は話しかけます。

「さて、お兄さん。少し相談があるのですが……」

 怪訝そうな顔をする彼に私が持ちかけたのは、口を噤んでこの袋一杯の金貨を持って王城を去るか、上に告げ口をしてわずかな小遣い銭を手にして満足するか、どっちにする? というものでした。安月給でこき使われるだけの城勤めにうんざりしていた彼は、あっさりと袋を受け取って、そのまま王都より出奔していきました。実家に帰って幼馴染と所帯を持って、のんびりと暮らすんだと笑っていました。
 うんうん、お兄さんも幸せ、秘密を守れた私も幸せ、いい取引でした。
 私が創成魔法で作り出す品が、売れるかどうかを確認したかったので、外出をしましたが、有益だと王城の連中にバレるのは避けたかったのです。あの欲深そうな連中が知ったら、きっと囲われて延々と文房具造りを強制されることでしょう。
 そんな灰色の青春は絶対にごめんです。

 袋より抜いておいた数枚の金貨にて、適当に買い食いをしながら城へと戻ったら、すでに夕方になっていました。
 自室へと向かっていると、ビビビと私の危機察知が働きます。
 即座に回れ右をして、違う通路を歩いていきます。おそらく先ほどの角を曲がったら、仁王立ちした不機嫌顔の女子らに囲まれていたことでしょう。外から自室へと向かう途中にて待ち伏せしていたということは、どこかから私の街ブラの話を聞きつけたに違いありません。

「はぁー、本当に女子って面倒くさいです」


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