14 / 101
14 市松人形の苦悩
しおりを挟む
異世界移住生活、三週間目に突入しました。
あと一週間もすれば、王都より勇者組は軍と共に出立するそうです。各国から派遣された軍勢らと合流して、人類一丸となって魔族とことを構えるとのこと。大変ですね。
なにを他人事みたいにって、実際に他人事ですから。
戦う力のない私がついて行ったところで、お荷物にしかなりませんから。しかも維持費がかかる無駄飯喰らいです。普通は連れて行こうだなんて考えないでしょう。だから精一杯の愛想笑いで、クラスメイトたちを見送ろうと思います。頑張って手は全力で振りますよ。
暇だったので、みなの訓練風景をぼんやりと眺めています。
つい数週間前まではど素人だったのが、剣や槍を手にしてそれなりに様になっていました。やはり女神さまに貰った、能力やスキルなどが作用しているのでしょう。各々が身体能力も向上しているらしく、成長もそれなりに早いみたいです。
魔法をバンバン放っている女子もいました。そこそこの威力らしく、離れた的までビューンと火の玉が飛んで行っては、派手な音を立てています。
不意にこちらに流れ玉? の氷の礫が飛んできました。きっと誰かの嫌がらせなのでしょう、可愛いものです。私はひょいと首を傾げて躱します。
流れ玉は後方の壁にぶつかって弾けました。
しかしこれに慌てたのは、その場を仕切っていた騎士団長さん。王族どもとは違って、とっても誠実そうな渋い男性で、そんな彼がこっちに駆けよってきました。
「大丈夫か? どこにも怪我はないか?」
それはもう幼子を持つ父親のごとき心配のしよう。どうやら彼の目にも、小柄で非力で女神さまにも見放されたと思しき異世界の少女は、守るべき対象として映っているようです。もしかしたら委員長たちも彼に感化されたのかもしれません。
「大丈夫です。心配かけてすみません。どうやら逸れたみたいで助かりました」
そう答えると心底、ほっとしたような表情を彼は見せました。普段のキリリとした顔も素敵ですが、この不意に見せる優しさは、もはや犯罪でしょう。これまでどれほどの女性を無自覚に堕としてきたことやら。ほら、そんな彼の背後にはこっちを見て、悔しそうに歯ぎしりをしている女子数名の姿が……。
どうやら彼女たちの目には、私が委員長に続いて渋専好みの団長まで篭絡しているように見えているようです。
おかげで私にまた敵が増えました。
あぁ、悲しいことに、人はこうやって誤解に誤解を重ねて、互いの溝を深めていくのですね。しかし私は誤解を解こうだなんて思いませんし、頑張りません。だって面倒なんですもの。
そんな風に横着を決め込んでいたから、罰が当たったのでしょうか。
玉座の間にて集められた勇者組に、今後の説明がされていた時のことです。
委員長がやってくれました。
「当然、沢良宜さんも連れて行く! 一人だけ残して置くなんて出来るものか! だって彼女もオレたちの仲間なんだから!」
どうやら彼は普通じゃなかったみたいです。私の予想の斜め上を行く人物でした。
どうにも腹黒臭がする姫様がこれに異を唱えます。「か弱い女性を戦場に連れて行くなんて」と、もっともらしい言葉を口にしていますが、その本音は「いざという時のために人質として確保しておきたい」というものでしょう。
常識人である団長さまは、非戦闘員である女性を連れて行くことに難色を示します。
クラスメイトらの反応はまちまちでした。お荷物はゴメンだと露骨に嫌がるもの、委員長に賛同するもの、どっちでもいいよーというもの、私という異物のせいでクラスの結束にヒビが入ってしまいました。おかげでガヤガヤと揉めて会合が一向に進展しません。
もうすぐ夕飯の時間だというのに……、だから殊勝にも「私のことは大丈夫だから、みんなで頑張ってきて」と言ったら、よけいに揉め始めてしまいました。
すると面倒臭くなったのか、太った王様が「連れて行けばよかろう。その娘一人ぐらい問題ない」と言ったことにより、問題が決してしまった。
こうして私は強制的に行軍に参加することになりました。
どうして誰も彼も、私の意見を無視するのでしょうか? 歩く市松人形は、ただ静かに怠惰に暮らしたいだけだというのに……。
あと一週間もすれば、王都より勇者組は軍と共に出立するそうです。各国から派遣された軍勢らと合流して、人類一丸となって魔族とことを構えるとのこと。大変ですね。
なにを他人事みたいにって、実際に他人事ですから。
戦う力のない私がついて行ったところで、お荷物にしかなりませんから。しかも維持費がかかる無駄飯喰らいです。普通は連れて行こうだなんて考えないでしょう。だから精一杯の愛想笑いで、クラスメイトたちを見送ろうと思います。頑張って手は全力で振りますよ。
暇だったので、みなの訓練風景をぼんやりと眺めています。
つい数週間前まではど素人だったのが、剣や槍を手にしてそれなりに様になっていました。やはり女神さまに貰った、能力やスキルなどが作用しているのでしょう。各々が身体能力も向上しているらしく、成長もそれなりに早いみたいです。
魔法をバンバン放っている女子もいました。そこそこの威力らしく、離れた的までビューンと火の玉が飛んで行っては、派手な音を立てています。
不意にこちらに流れ玉? の氷の礫が飛んできました。きっと誰かの嫌がらせなのでしょう、可愛いものです。私はひょいと首を傾げて躱します。
流れ玉は後方の壁にぶつかって弾けました。
しかしこれに慌てたのは、その場を仕切っていた騎士団長さん。王族どもとは違って、とっても誠実そうな渋い男性で、そんな彼がこっちに駆けよってきました。
「大丈夫か? どこにも怪我はないか?」
それはもう幼子を持つ父親のごとき心配のしよう。どうやら彼の目にも、小柄で非力で女神さまにも見放されたと思しき異世界の少女は、守るべき対象として映っているようです。もしかしたら委員長たちも彼に感化されたのかもしれません。
「大丈夫です。心配かけてすみません。どうやら逸れたみたいで助かりました」
そう答えると心底、ほっとしたような表情を彼は見せました。普段のキリリとした顔も素敵ですが、この不意に見せる優しさは、もはや犯罪でしょう。これまでどれほどの女性を無自覚に堕としてきたことやら。ほら、そんな彼の背後にはこっちを見て、悔しそうに歯ぎしりをしている女子数名の姿が……。
どうやら彼女たちの目には、私が委員長に続いて渋専好みの団長まで篭絡しているように見えているようです。
おかげで私にまた敵が増えました。
あぁ、悲しいことに、人はこうやって誤解に誤解を重ねて、互いの溝を深めていくのですね。しかし私は誤解を解こうだなんて思いませんし、頑張りません。だって面倒なんですもの。
そんな風に横着を決め込んでいたから、罰が当たったのでしょうか。
玉座の間にて集められた勇者組に、今後の説明がされていた時のことです。
委員長がやってくれました。
「当然、沢良宜さんも連れて行く! 一人だけ残して置くなんて出来るものか! だって彼女もオレたちの仲間なんだから!」
どうやら彼は普通じゃなかったみたいです。私の予想の斜め上を行く人物でした。
どうにも腹黒臭がする姫様がこれに異を唱えます。「か弱い女性を戦場に連れて行くなんて」と、もっともらしい言葉を口にしていますが、その本音は「いざという時のために人質として確保しておきたい」というものでしょう。
常識人である団長さまは、非戦闘員である女性を連れて行くことに難色を示します。
クラスメイトらの反応はまちまちでした。お荷物はゴメンだと露骨に嫌がるもの、委員長に賛同するもの、どっちでもいいよーというもの、私という異物のせいでクラスの結束にヒビが入ってしまいました。おかげでガヤガヤと揉めて会合が一向に進展しません。
もうすぐ夕飯の時間だというのに……、だから殊勝にも「私のことは大丈夫だから、みんなで頑張ってきて」と言ったら、よけいに揉め始めてしまいました。
すると面倒臭くなったのか、太った王様が「連れて行けばよかろう。その娘一人ぐらい問題ない」と言ったことにより、問題が決してしまった。
こうして私は強制的に行軍に参加することになりました。
どうして誰も彼も、私の意見を無視するのでしょうか? 歩く市松人形は、ただ静かに怠惰に暮らしたいだけだというのに……。
12
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~
女譜香あいす
ファンタジー
数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。
聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。
だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。
そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。
これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
<完結>溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
本編完結済み。
続きのお話を、掲載中です。
続きのお話も、完結しました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす
遊鷹太
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる