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15 騎士団長さま
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三日後に王都を出立することになり、勇者組の面々には王家が所有する武器や防具が与えられ、一日だけの休暇とお小遣いを貰いました。あぁ、私は断りましたよ。お荷物風情が剣やら鎧を貰ったところで、重量過多になるだけですから。
クラスメイトらは仲のいい人と連れだって、城下街へと繰り出していきますが、私はあがわれた自室にて、のんびりとして過ごします。すでに何度も足を運んでいるので、今更ですし、その度ごとに商店とは取り引きを続けたおかげで、収納魔法の施された鞄の中には、かなりの額の金貨が納まっています。鞄は私専用ですし、たとえ盗まれても自動的に戻って来るという謎機能もあるので安心安全。
城下町にはすでに行軍する旨が広く告知されているらしく、けっこうな騒ぎになっているようで、そんなごった返しているところに、足を踏み入れたくないというのもありました。
お婆ちゃんメイドとももうすぐお別れです。名残りを惜しみつつ二人して、城下で手に入れて来た豆菓子を齧りながらお茶を飲んでいると、来客がありました。
誰かと思えば騎士団長さまです。なんと私のために、わざわざ自費で装備を整えて持ってきてくれましたよ。本当に真面目な人だな。仕える主を間違えているのが残念過ぎる。いっそのこと美人の奥さんを連れて、他国に亡命でもしたらいいのに。
団長さまが用意してくれたのは、短剣と軽い革の胸当て、それから黒いマントの三つ。
このマントがいい品で、羽織っていると軽く認識阻害がかかるらしく、気配が希薄になるんだとか。物陰に隠れているのに丁度いいから、着ておけと手渡されました。
もちろんありがたく頂戴しておいて、お礼に城下町で手に入れた超高級茶葉の詰め合わせセットを、「奥様に」と言って渡しておきます。
それを見て驚いた団長さまであったが、しばらくしてクスリと意味深な笑みを零します。
「こいつは無骨な自分でも知っているぐらいの高級品だ。どうやら君には色々と秘密があるようだな。どこか飄々としているし、もしも君の立場だったら、もう少し怯えていても良さそうなものなのに、まるでそんな様子も見えない。それに……」
それに以前に訓練所で、魔法を躱してみせた際の動き、あれはどう考えても尋常じゃない、と彼は言った。私にすれば欠伸が出るほどゆっくり飛んできたように思えたのですが、傍からするとかなり危険な状況だったようです。怖いですね、女の嫉妬って。それにしてもこれはいささか調子に乗り過ぎてしまいましたか、しっかり見られていたようです。
「心配しなくても誰にも話すつもりはない。きっと君には君なりの考えがあってのことだろう。それに私はそもそも異世界から強引に連れて来た若者たちに、自分たちの尻拭いをさせることには反対だったのだ」
おっと、ここにきて騎士団長さまの本音が炸裂した。こちらの秘密を知った以上、自身の秘めた想いを吐露して本音で接してくる、なんて気持ちのいい男性なのでしょう。独身の頃にお会いしたかった。
「率直にお訊ねしますが、人類連合でしたっけ? アレで魔族に勝てますか?」
この世界における魔族とは、人間以外のすべての亜人を指す言葉。
付き合いのある商人らから仕入れた情報によれば、超巨大な大陸を分断するかのように中央に横たわる山脈を隔てて北が人類の領域、南が魔族らが支配する世界となっている。魔族たちが自分たちの領地から出てくることは非常に稀で、もっぱらこちらから戦争を吹っかけているのが現状なのだ。諍いに終始して土地を疲弊させている北側が、豊かな南側を妬んで欲しているだけのこと。つまり最初にお姫様が言っていた「魔族を倒して人類を救う」だなんて言葉は世迷言に過ぎない。
「自分の立場でこのような考えを口にするのはアレなんだが……、たぶん難しいと思う。君たちは順調に成長している。だが実戦経験はこれからだし、魔族たちは強い。だがそれよりも問題は」
「人間……、ですか」
私の言葉に団長さまが黙って頷く。
そう、連合とかいったところで、所詮は各国の思惑が絡んだ寄せ集めに過ぎない。この国はその中でも中心的役割を担っているらしく、その立場を盤石にするために勇者召喚という暴挙に出た。おかげで国際的発言権は高まるだろうが、同時に反感も高まるだろう。対する魔族側は魔王という強力な支配者の下、一枚岩で固まっているという。聞けば聞くほどに、勝てるとはとても思えない。
「自分も一緒に行けたらよかったのだが、この度の行軍は各国との兼ね合いもあり、王子が代表として率いることになっている。彼もそれなりに優秀ではあるのだが……。とりあえず君たちは生き残ることだけを念頭において行動しろ。勇者だなんて言葉に踊らされずに、自分の眼でしっかりと現実をみて、そして考えて欲しい。だから絶対に死ぬな」
そう言い残して騎士団長さまは部屋を後にしました。やはり彼はこの城内でも数少ない良識派の一人であったようです。その忠告をしっかりと胸に刻み付け、私は適当に隙を見てとんずらしようと思います。
他の連中? 無理です。だってどいつもこいつも異世界転移、勇者召喚、チートで無双、ひゃっほー状態ですから。日陰者のお荷物の言葉なんて、誰も耳を貸しませんよ。
クラスメイトらは仲のいい人と連れだって、城下街へと繰り出していきますが、私はあがわれた自室にて、のんびりとして過ごします。すでに何度も足を運んでいるので、今更ですし、その度ごとに商店とは取り引きを続けたおかげで、収納魔法の施された鞄の中には、かなりの額の金貨が納まっています。鞄は私専用ですし、たとえ盗まれても自動的に戻って来るという謎機能もあるので安心安全。
城下町にはすでに行軍する旨が広く告知されているらしく、けっこうな騒ぎになっているようで、そんなごった返しているところに、足を踏み入れたくないというのもありました。
お婆ちゃんメイドとももうすぐお別れです。名残りを惜しみつつ二人して、城下で手に入れて来た豆菓子を齧りながらお茶を飲んでいると、来客がありました。
誰かと思えば騎士団長さまです。なんと私のために、わざわざ自費で装備を整えて持ってきてくれましたよ。本当に真面目な人だな。仕える主を間違えているのが残念過ぎる。いっそのこと美人の奥さんを連れて、他国に亡命でもしたらいいのに。
団長さまが用意してくれたのは、短剣と軽い革の胸当て、それから黒いマントの三つ。
このマントがいい品で、羽織っていると軽く認識阻害がかかるらしく、気配が希薄になるんだとか。物陰に隠れているのに丁度いいから、着ておけと手渡されました。
もちろんありがたく頂戴しておいて、お礼に城下町で手に入れた超高級茶葉の詰め合わせセットを、「奥様に」と言って渡しておきます。
それを見て驚いた団長さまであったが、しばらくしてクスリと意味深な笑みを零します。
「こいつは無骨な自分でも知っているぐらいの高級品だ。どうやら君には色々と秘密があるようだな。どこか飄々としているし、もしも君の立場だったら、もう少し怯えていても良さそうなものなのに、まるでそんな様子も見えない。それに……」
それに以前に訓練所で、魔法を躱してみせた際の動き、あれはどう考えても尋常じゃない、と彼は言った。私にすれば欠伸が出るほどゆっくり飛んできたように思えたのですが、傍からするとかなり危険な状況だったようです。怖いですね、女の嫉妬って。それにしてもこれはいささか調子に乗り過ぎてしまいましたか、しっかり見られていたようです。
「心配しなくても誰にも話すつもりはない。きっと君には君なりの考えがあってのことだろう。それに私はそもそも異世界から強引に連れて来た若者たちに、自分たちの尻拭いをさせることには反対だったのだ」
おっと、ここにきて騎士団長さまの本音が炸裂した。こちらの秘密を知った以上、自身の秘めた想いを吐露して本音で接してくる、なんて気持ちのいい男性なのでしょう。独身の頃にお会いしたかった。
「率直にお訊ねしますが、人類連合でしたっけ? アレで魔族に勝てますか?」
この世界における魔族とは、人間以外のすべての亜人を指す言葉。
付き合いのある商人らから仕入れた情報によれば、超巨大な大陸を分断するかのように中央に横たわる山脈を隔てて北が人類の領域、南が魔族らが支配する世界となっている。魔族たちが自分たちの領地から出てくることは非常に稀で、もっぱらこちらから戦争を吹っかけているのが現状なのだ。諍いに終始して土地を疲弊させている北側が、豊かな南側を妬んで欲しているだけのこと。つまり最初にお姫様が言っていた「魔族を倒して人類を救う」だなんて言葉は世迷言に過ぎない。
「自分の立場でこのような考えを口にするのはアレなんだが……、たぶん難しいと思う。君たちは順調に成長している。だが実戦経験はこれからだし、魔族たちは強い。だがそれよりも問題は」
「人間……、ですか」
私の言葉に団長さまが黙って頷く。
そう、連合とかいったところで、所詮は各国の思惑が絡んだ寄せ集めに過ぎない。この国はその中でも中心的役割を担っているらしく、その立場を盤石にするために勇者召喚という暴挙に出た。おかげで国際的発言権は高まるだろうが、同時に反感も高まるだろう。対する魔族側は魔王という強力な支配者の下、一枚岩で固まっているという。聞けば聞くほどに、勝てるとはとても思えない。
「自分も一緒に行けたらよかったのだが、この度の行軍は各国との兼ね合いもあり、王子が代表として率いることになっている。彼もそれなりに優秀ではあるのだが……。とりあえず君たちは生き残ることだけを念頭において行動しろ。勇者だなんて言葉に踊らされずに、自分の眼でしっかりと現実をみて、そして考えて欲しい。だから絶対に死ぬな」
そう言い残して騎士団長さまは部屋を後にしました。やはり彼はこの城内でも数少ない良識派の一人であったようです。その忠告をしっかりと胸に刻み付け、私は適当に隙を見てとんずらしようと思います。
他の連中? 無理です。だってどいつもこいつも異世界転移、勇者召喚、チートで無双、ひゃっほー状態ですから。日陰者のお荷物の言葉なんて、誰も耳を貸しませんよ。
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