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51 魔道具協会
しおりを挟む私が魔族領に来てからしばらく経ちますが、ちょっと困った問題に直面しております。それは生物としての根本的差です。魔族の皆様は基本的に頑強です。環境に対しての順応性が極めて高い。対して私は非力な小娘、いくらかは神様のおかげで底上げされているとはいえ、人間です。ぶっちゃけ朝夕の気温の変化が堪えます、でも魔族は平気。つまり何が言いたいのかというと、周囲の住環境がいささか……。ただでさえ高い塔の上ですので季節によっては、ぶるるとなるワケですよ。
そこで微調整の効く空調や冷暖房について家電を作ってくれと、工房長にお願いしたら、三日でエアコンもどきと床暖房が出来ました。扇風機も頼んでいたのですが、こちらは現品のみならず、プロペラは発想を飛ばして、スクリューを開発なさっていました。近いうちに魔族領の海に高速艇が出現しそうです。
必要は発明の母と申します。
魔族にとってはあまり必要性を感じなかったせいか、この手の開発はしてこなかったようです。いい機会なので厨房で使えそうなミキサーとか、泡立て器とかも頼んでみると、こちらは構造自体が簡単だったらしく、わずか一日で試作品が私の手元にあがってきました。早速、厨房にて試運転をしていると料理長には「手でやったほうが早くないか?」と小首を傾げられてしまいました。どうやらムキムキ揃いのここでは、あまり活躍の場はなさそうですね。ただ、ミキサーを用いたミックスジュースは喜ばれました。すぐに食堂のメニューに追加されるほどに。
こんな感じでしばらく遊んでいると、魔道具協会の理事という方が来訪なされました。
ぽっちゃりなおば様です。種族はドワーフだそうです。どうやらファンタジーの定番は学者寄りの研究職の方にいた模様。訪問理由は私が開発に関与していた品々をご覧になって、興味を持たれたとのことでした。
一見すると無駄だけど、使ってみると確かに便利、無くても困らないけれども、あったらいいなを実現している姿勢が、とても斬新だと褒められてしまいました。
少し停滞気味だった魔道具業界に新風を吹き込んだ、塔の姫君に是非とも色々と話を聞きたいと、おば様とっても前のめり。それにしても何ですか? その塔の姫君とかいう恥ずかしい渾名は。
色々と意見交換なんぞをしながら、異世界の家電事情なんぞを説明します。その流れで、
話した大規模見本市のことに、理事さんが強く反応しました。
「なるほど、お客と開発者との橋渡しの場を提供するわけですか、そいつはいいですね! よし、さっそくやってみましょう!」
おば様もどうやら思いついたら即行動派のようです。魔族の女性って、わりとせっかちなんですよね。理事さんは手短に挨拶を済ませると、急いで帰られてしまいました。
手には私がお近づきの印にと贈った、文房具セットをしっかりと持って。
翌日、食堂に行ったら壁の掲示板に「見本市」と書かれたポスターが張られていました。 あとメニューに青汁が追加されていました。美肌効果が期待できる食材をふんだんに盛り込んだそうで、味のわりに女性陣からは好評なようです。
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