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69 新兵訓練
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宮原さんと料理長の二人が主導で行っている「カレープロジェクト」は難航しています。
いや、結構、美味しいのが続々と仕上がっているのですが、肝心のお二人がまるで納得なさらないのです。カレーパンなんて、かなりいい出来だと思うのです。
どうやらお二人はカレーの深淵に、ずぶずぶとはまり込んでしまったようです。元の世界の人類が、数千年をかけても到達していない領域へと、彼らは足を踏み入れるつもりのよう。料理馬鹿が二人になって、手がつけられなくなりました。もはやコントロール不能です。おかげでスパイシーな匂いだけを嗅がされるだけという、地獄の日々が続いております。そのうち暴動が起きなければいいのですが……。
そんなある日の午後、ガラシャさまの命令によって、何故だか私が新兵どもの訓練のお相手をすることになりました。「ちょっと調子に乗ってる小僧どもの鼻っぱしらを、ペッキリとへし折ってくれ」とのこと。士官学校を卒業したばかりだといいますが、それでも魔族の若人たちですよ、非力な市松人形にはムリじゃね?
「えー、そんなワケで本日は、皆さまのお相手を務めさせていただきます、沢良宜花蓮(さわらぎかれん)です。よろしくお願いします」
郊外の大型訓練場にズラリと整列した若人たち。真っ新な士官用の軍服姿が眩しいです。とりあえず挨拶をしましたら、熱烈な歓迎を受けました。どうやらメディアを用いた誇大広告と情報操作は健在のようです。みなさまの目が幻想に踊らされております。困惑を隠せない私のすぐ横で、ニヤニヤしているガラシャさま、彼女がすべての元凶です。
訓練の内容は、ひたすら逃げる私に、彼らがひたすら攻撃を仕掛けるという、シンプルかつ酷い内容でした。制限時間は三時間、ガラシャさまの合図によって、訓練開始です。
初めのうちこそは「そんな、女神さまを攻撃するだなんて……」と、しおらしい言葉を吐いていた士官候補生たち。
ですが、すぐにガラシャさまが提示なされた「食堂タダ券の束」や「合コンチケット」、「工房長の新作武器」に「塔の女神と一日過ごす権利」などの景品に目が眩んで、全力投球に変わりました。
訓練所に轟く爆音、炎の柱が立ち、氷の礫が降り注ぎ、風が嵐となって吹き荒れる。大地は隆起し、毒霧が視界を塞ぎ、拳が踊り、蹴りが舞う。魔族たちの容赦ない攻撃が私を襲います。それをひょいひょいと躱し続けました。
一時間も過ぎると半分が同士討ちでダウンしていました。二時間を過ぎる頃になると、スタミナ切れで気を失う子が続出、そして残り三十分となったところで、ようやく彼らは団結して単発攻撃から連携攻撃へと切り替えました。
徐々に包囲網を狭めていき、逃げる市松人形を崖下へと追い詰めていきます。
背後が高い崖になった場所にて、三方向からの一斉攻撃にて勝負を決めるようですね。こちらが空を飛べないことも計算の内なのでしょう。だが甘い。
追い詰められたと思われた、次の瞬間には、私の体は崖をシュタタタっと壁走り。
ついでに目くらましの閃光弾をばら撒いて、ピカっと、とんずらです。
「目がー! 目がー!」
崖下で間近に強烈な光を浴びた若人たちが、もがき苦しんでいます。
そこで適当な場所に石を投げては、「そっちにいったぞー」と叫んで攪乱してあげました。音と声に釣られた数名が、無分別にもメクラな状態にて魔法を放って、同士討ち。少なくなった仲間たちを、更に減らすお手伝いをしてくれました。
残りは、この隙に設置した地雷原におびき寄せて、吹き飛ばしました。
創成魔法って凄いんですよ、イメージして歩いているだけで、通った場所の地中に地雷がポコポコ設置できるんです。いちいちしゃがんで、手をつかないで済むのは助かります。そんな真似をしていたら腰を痛めてしまいますから。いかに十代でも長時間の中腰はキツイのです。
こうして三時間の訓練時間を終えた時、立っているのは監督をしていたガラシャさまと、私だけという結果に終わりました。全員、もちろん死んではいませんよ。魔族は頑強ですので私の武器では、ちょびっと傷をつけるか、驚かすか、一時的に視力を奪うぐらいしか出来ませんから。彼らがのびているのは、主にスタミナ切れと、同士討ちのせいです。
「勝者、花蓮! これにて本日の訓練を終了する。今回の事を、今後にどう活かすかは、お前たち次第だ。よくよく猛省するように」
私のところにダベりにくる時と違って、とっても凛々しいガラシャさま。
でも貴女、今日はずっと優雅にお茶を飲んで、ケラケラと笑いながら訓練風景を眺めていただけですよね。なのに最後だけ、もっともらしい事を言って、それっぽくまとめてしまいました。これが大人のやり方か!
いや、結構、美味しいのが続々と仕上がっているのですが、肝心のお二人がまるで納得なさらないのです。カレーパンなんて、かなりいい出来だと思うのです。
どうやらお二人はカレーの深淵に、ずぶずぶとはまり込んでしまったようです。元の世界の人類が、数千年をかけても到達していない領域へと、彼らは足を踏み入れるつもりのよう。料理馬鹿が二人になって、手がつけられなくなりました。もはやコントロール不能です。おかげでスパイシーな匂いだけを嗅がされるだけという、地獄の日々が続いております。そのうち暴動が起きなければいいのですが……。
そんなある日の午後、ガラシャさまの命令によって、何故だか私が新兵どもの訓練のお相手をすることになりました。「ちょっと調子に乗ってる小僧どもの鼻っぱしらを、ペッキリとへし折ってくれ」とのこと。士官学校を卒業したばかりだといいますが、それでも魔族の若人たちですよ、非力な市松人形にはムリじゃね?
「えー、そんなワケで本日は、皆さまのお相手を務めさせていただきます、沢良宜花蓮(さわらぎかれん)です。よろしくお願いします」
郊外の大型訓練場にズラリと整列した若人たち。真っ新な士官用の軍服姿が眩しいです。とりあえず挨拶をしましたら、熱烈な歓迎を受けました。どうやらメディアを用いた誇大広告と情報操作は健在のようです。みなさまの目が幻想に踊らされております。困惑を隠せない私のすぐ横で、ニヤニヤしているガラシャさま、彼女がすべての元凶です。
訓練の内容は、ひたすら逃げる私に、彼らがひたすら攻撃を仕掛けるという、シンプルかつ酷い内容でした。制限時間は三時間、ガラシャさまの合図によって、訓練開始です。
初めのうちこそは「そんな、女神さまを攻撃するだなんて……」と、しおらしい言葉を吐いていた士官候補生たち。
ですが、すぐにガラシャさまが提示なされた「食堂タダ券の束」や「合コンチケット」、「工房長の新作武器」に「塔の女神と一日過ごす権利」などの景品に目が眩んで、全力投球に変わりました。
訓練所に轟く爆音、炎の柱が立ち、氷の礫が降り注ぎ、風が嵐となって吹き荒れる。大地は隆起し、毒霧が視界を塞ぎ、拳が踊り、蹴りが舞う。魔族たちの容赦ない攻撃が私を襲います。それをひょいひょいと躱し続けました。
一時間も過ぎると半分が同士討ちでダウンしていました。二時間を過ぎる頃になると、スタミナ切れで気を失う子が続出、そして残り三十分となったところで、ようやく彼らは団結して単発攻撃から連携攻撃へと切り替えました。
徐々に包囲網を狭めていき、逃げる市松人形を崖下へと追い詰めていきます。
背後が高い崖になった場所にて、三方向からの一斉攻撃にて勝負を決めるようですね。こちらが空を飛べないことも計算の内なのでしょう。だが甘い。
追い詰められたと思われた、次の瞬間には、私の体は崖をシュタタタっと壁走り。
ついでに目くらましの閃光弾をばら撒いて、ピカっと、とんずらです。
「目がー! 目がー!」
崖下で間近に強烈な光を浴びた若人たちが、もがき苦しんでいます。
そこで適当な場所に石を投げては、「そっちにいったぞー」と叫んで攪乱してあげました。音と声に釣られた数名が、無分別にもメクラな状態にて魔法を放って、同士討ち。少なくなった仲間たちを、更に減らすお手伝いをしてくれました。
残りは、この隙に設置した地雷原におびき寄せて、吹き飛ばしました。
創成魔法って凄いんですよ、イメージして歩いているだけで、通った場所の地中に地雷がポコポコ設置できるんです。いちいちしゃがんで、手をつかないで済むのは助かります。そんな真似をしていたら腰を痛めてしまいますから。いかに十代でも長時間の中腰はキツイのです。
こうして三時間の訓練時間を終えた時、立っているのは監督をしていたガラシャさまと、私だけという結果に終わりました。全員、もちろん死んではいませんよ。魔族は頑強ですので私の武器では、ちょびっと傷をつけるか、驚かすか、一時的に視力を奪うぐらいしか出来ませんから。彼らがのびているのは、主にスタミナ切れと、同士討ちのせいです。
「勝者、花蓮! これにて本日の訓練を終了する。今回の事を、今後にどう活かすかは、お前たち次第だ。よくよく猛省するように」
私のところにダベりにくる時と違って、とっても凛々しいガラシャさま。
でも貴女、今日はずっと優雅にお茶を飲んで、ケラケラと笑いながら訓練風景を眺めていただけですよね。なのに最後だけ、もっともらしい事を言って、それっぽくまとめてしまいました。これが大人のやり方か!
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