わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
19 / 298

019 最低と最凶

しおりを挟む
 
 テイマー子飼いのモンスターどもが一蹴されて、しばし思考停止していた勇者カズヒコ。
 じきに我に返るなり、顔を真っ赤にして激昂。
 そして自分の影から新たに出現させたのは、二階建て住宅ぐらいもあろうかという巨大な猿。
 丸太のような手足と筋肉質な肉体にて、体臭がしょうしょう臭うのは、ロックリードとかいうモンスター。
 その性質、極めて狂暴なりとはルーシーさん情報。
 あらわれるなり、いきなり拳をふりおろし、渡り廊下の屋根を粉砕。
 芸術的な石造りの歴史的建造物があっさり崩れて、瓦礫の山に。
 あぁ、もったいない。

「バカ野郎、そっちじゃねえ! 敵はこっちのクソ女とクソ人形だっ」

 主人であるカズヒコの声で、のっそりとこちらに体を向けた巨大猿。
 顔には六つも目があって、あんまり可愛くない。
 どうやらコレが彼のとっておきのようだ。
 それにしても分厚い筋肉にて、銃弾をちまちま当てたところで、ちっともこたえなさそう。かといって敷地内でのロケットランチャーなどの派手な火器の使用は気が引ける。
 やっぱり火事はこわいからね。かといって城内で毒ガス散布とかしたら、あとでリリアちゃんにめちゃくちゃ怒られそう。
 だからわたしは考えました。

「へい! 富士丸、ちょっと手伝って」

 わたしの声に「ウンガー」と答えて、亜空間より姿をあらわしたのは、鋼の巨人のゴツイ腕だけ。
 さすがに城の中庭で、巨大猿対巨大ロボの怪獣大決戦をやるわけにはいかなかったので、富士丸くんには腕だけ伸ばしてもらい、ちょいと悪戯猿を小突いてもらうことにしたのだ。
 脳天から振り下ろされたのは、富士丸の軽めのチョップ。
 これをモロに喰らったロックリード。
 まず頭が潰れて首がなくなった。
 そのままズブズブと縮んでいき胴体の面積がどんどん狭まり、ついに下半身と一体化。さらに膝やら腿やらの筋肉や骨がぐちゃぐちゃになり、足首までくっついて平べったくなってしまう。
 とどのつまりぺちゃんこ。
 さすがは星砕きの拳を持つ富士丸。
 彼にとっては軽いデコピンレベルでも、この威力。
 これは……、今後の運用には細心の注意を払わないとダメだな。

 とっておきの奥の手をあっさり潰された勇者カズヒコ、呆然自失。
 その頭部に右の薬指を向けたわたしは、バン! と心の中で引き金をひく。
 精密射撃が可能な狙撃ライフルにつき、勝負は一発でついた。
 あっさりと異世界渡りの勇者を始末したわたしに「よろしかったのですか? 洗脳再教育の後に、リサイクルという手もありましたが」とルーシー。
 これには首を横にふる。

「あれは生理的に無理」

 全男性が女性から言われたくない台詞ランキング。
 必ず上位に入るであろうヒドい言葉でもって、勇者カズヒコの異世界物語は強制終了。
 外道畜生にも劣る相手ゆえに、とくに冥福を祈ることも手をあわせることもなく、わたしは戦いの場となった中庭を立ち去ろうとする。
 そんなクールなわたしにルーシーが背後から声をかけた。

「リンネさま、ガロンの毛皮は防具に利用できるので、けっこうな高値にて市場で取引されているようですよ」

 もうっ、そういうことは早く言ってよね。
 わたしはくるりと反転、すぐさまそこいらに転がっているガロンたちの骸の回収を始める。ついでに勇者の身ぐるみも剥ぐとしよう。なにか貴重品を持っているかもしれないし。
 なお血抜き解体などの処理については、亜空間内にいるルーシーの仲間たちが担当してくれるとのこと。
 ナイフ片手に血まみれになっているビスクドールたち……。
 うーん、想像するとなかなかのショッキングホラーですな。



 宮殿内部はさすがに王族が住まうところだけあって、ゴージャスのひと言。
 装飾に金と赤が目立つのは、リスターナの文化かな。たぶんここではコレが高貴な身分をあらわしている色なのかもしれない。
 無人の廊下をゆく。
 足下のじゅうたんがふっかふかにて、ルーシーさんが歩きずらそうなので、人形を抱きかかえて進む。
 誰もおらず静まりかえっている。
 おそらくさっきの戦闘騒ぎで、とっくに逃げ出してしまったのだろう。
 しばらく進むと左右に分かれているところに到着。
 しばし悩んだのちに右へと足を向ける。なんとなく女の勘。
 そして到着したのは大きな扉のまえ。
 いかにも大物の居室ですよと言わんばかりの扉。ドアノブに手をやるもカギがかかっているらしく、がちゃがちゃ音がなるばかりで、ちっとも開かない。
 しかたがないのでルーシーさんのショットガンが火を噴く。
 とたんに素直になった扉ちゃん。もう、最初から言うことを聞いていれば、体に風穴が開くこともなかったのに。
 天井が高くだだっ広い室内には、これまた大きな天蓋つきのベッド。ここだけで子ども二十人ぐらいは余裕で寝られそう。まるで空に浮かんでいる白い雲を運んできたみたい。
 その真ん中にて埋もれるようにして寝ていたのは、一人の美中年。
 これだけ派手な音を立てて入室したというのに、ピクリともしないところからすると、魔法だかクスリだか知らないが、強制的に眠らされているようだ。
 おそらくはこれがリリアちゃんのお父さんのシルト・ル・リスターナ王。

「ほほう、美少女のリリアちゃんのお父上だけあって、これはなかなか」とわたし。これさいわいと嘗めまわすようにして視姦プレイを堪能。
「たしかに。これで仕事が出来るとあっては、さぞやモテたことでしょう。きっと若い頃からブイブイいわせていたクチにちがいありません。探せば隠し子の一人や二人見つかるかも」とルーシー。

 王さまが眠っているので、好き勝手な妄想をくっちゃべっていたら、表がなにやらガヤガヤとにぎやかに。
 じきに姿を見せたのは、ゴードン将軍率いる兵らに守られたリリアちゃんであった。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...