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020 天国逝き
しおりを挟む「お父さまっ!」
ベッドに駆け寄ってくるリリアちゃん。
感動の父娘の再会。ふつうならば枕元にて、それっぽい絵になるのだけれども、あいにくとベッドが超デカいのでそうはいかない。
ゆるふわ系金髪美少女、ぼふんと勢いよくベッドにダイブ。えんやこらとふにゃふにゃする寝床を泳いだのちに、ようやくたどり着く。
当人は真剣にて必死なのだが、はたから見ているとちょっとおかしい。
でも大事な場面で笑っちゃダメだから、わたしはがんばったよ。
リリアちゃんに声をかけられても、体を揺さぶられても王さまは起きない。
寝息は安定しているので心配はなかろうとおもわれたのだが、肉親の情としてはそうでもないらしく、いっこうに目覚めない父親に狼狽したリリアちゃん。
胸倉をつかんでビシバシと激しくビンタをはじめちゃったものだから、あわてて将軍や兵士らが止めにはいることに。
みんなして広いベッドの上でひっちゃかめっちゃか。
こうなるとおかしいを通り越して、なにやらシュールだな。
まぁ、なんにせよ王さまの身柄は無事におさえることに成功。
勇者カズヒコも昇天済みにて、あとは……。
「ねえ、ゴードンさん。みんながこっちに来たってことは、カーク王子はどうしたの?」
「あぁ、そっちはダイクのやつが向かっておる。おっ、ウワサをすれば」
寝たままの美中年を面倒なベッドからソファーに移動させたタイミングで、宰相のダイクさん率いる一団が、ロープでグルグル巻きにされたパンツ男を引っ立ててきた。
どうやら自室に踏み込まれる直前まで、お気に入りの女相手に盛っていたらしい。
「無礼者っ! オレはリスターナの正統後継者だぞ。きさまら、こんな真似をしてタダですむと思っているのか。カズヒコはどこへ行った? はやくオレを助け」
ギャーギャーうるさいから、ルーシーがショットガンの銃床にてフルスイング。
ガツンと後頭部を殴打して黙らせる。ついでに猿ぐつわをかましておいた。
静かになったところで、宮廷医とかいうのが連れて来られたので、王さまの診察タイム。
クスリを連続投与されたせいで、眠り続けているだけみたいなので、じきに目を覚ますそうな。ずっと寝たきりだったのでかなり体は弱っているものの、養生すればじきに回復するであろうとの診断結果に、一同、安堵の表情を浮かべる。
関係各所にはダイクさんからすでに手回しがされているそうで、じきに国としての機能を取り戻すそうだし、軍部も完全にゴードンさんが掌握済みにて、こちらも問題なし。
カーク王子が仕出かした不始末の後片付けが、これからいろいろとタイヘンだろうけれども、とりあえずこれにて一件落着かな。
じきに暴君が倒されたことを知って、城下も歓声に包まれることであろう。
その裏でこっそりと立ち去れば、孤高のヒロインとしては最高にカッコいいのだけれども、あいにくとわたしはそんなにお人好しじゃない。
たしかにリリアちゃんには同情したし肩入れもした。
だがまったくの善意からの行動かというと、これがそうでもない。
だって一国の王族とお近づきになれる機会なんて、めったにないでしょう? しかも相手はかなりヒヨっている。いい感じの草臥れ具合。
ここぞとばかりに恩を売って、協力者に仕立て上げるには最高のシチュエーションだとおもうのだよ。
対女神戦線を構築するにあたって、やっぱり人間種族の伝手も欲しいからねえ。
だから復興にもじゃんじゃん手を貸すよ。
ついでにいろいろと実験もしたいし。
せっかくのルーシーの知識チート。ここで活かさずして、いつ活かすというのか。
だいじょうぶ、怖がらなくていいよ。なぁに、悪いようにはしないから、ケケケケケ。
「リンネさま、笑みがちょっと悪代官っぽいですよ」
ルーシーに指摘されて、あわてて表情をとりつくろう。
いけないいけない、つい本音がポロリしてしまった。
で、当面の細々としたことはじっちゃんたちに任せるとして、問題はカーク王子の処遇。
なにせ彼は正室の息子。あんまりモタモタしていると、またぞろよからぬことを考える輩があらわれかねない。
国に多大な損失を与えたことといい、多くの将兵を死へと誘ったことといい、処刑するのはやぶさかではないのだが、側室の娘であり妹のリリアちゃんが手を下すと、これはこれでいささか世間体が悪い。
それは将軍や宰相さんも同じ。でも肝心の王さまはおねんね中。
そこで将来への禍根を断つためにわたしからご提案。
「知り合いのところにあずけたいとおもいます」
「その知り合いとは?」と宰相のダイクさん。
「セレニティ・ロード」
しれっと答えたわたしの言葉にゴードンさん、ダイクさん、リリアちゃん、その他兵士たち、みなさん絶句。
このノットガルドの世界における超優良種族を、総じてハイボ・ロードという。
基本的に専守防衛にて、スゴイけど野心ゼロの面々ゆえに、めったに他種族の前には姿をあらわさない。ほぼほぼ完全体に近い種族にて自己完結しているから、そもそも他者と交わる必要性もない。だからぶっちゃけ引きこもり気味。
おかげで世間では、ちょっとした伝説上の存在みたいに扱われている。
そんな存在の名前をあげたものだからこその、みなのこの反応。
「あの、それで兄はどのような処遇に」
おそるおそるたずねるリリアちゃん。
「心配いらないよ。彼にふさわしい仕事を課せられるだけ。そしてマジメにがんばっていれば、ちゃんと面倒をみてもらえるから」
その言葉にほっとした表情をみせたリリアちゃん。これだけ迷惑をかけられたというのに、まだ兄の身を案じられるなんて、ほんとうにいい子。
だから詳細については伏せておこうとおもう。
ウソはついてない。
ひたすら腰をふるだけの簡単なお仕事。そして女系種族のセレニティ・ロードの子孫繁栄に貢献するのだ。
もっとも勃たなくなったら、即、食糧庫行きにてコネコネ肉団子だけどね。
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