わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
48 / 298

048 交流戦、決着!

しおりを挟む
 
 五分ほど経って、ぼちぼちみんなの視力が回復。
 そこで観客たちが目にしたのは、舞台上にて手首を抑えながらうずくまって、苦しんでいる光の勇者アキラと、それをぼへぇと眺めているわたしの立ち姿。

「なにが起こったの」「あの光はいったい」「まるで太陽が落ちてきたようだ」「どうなってる?」「おい、ギャバナの勇者が倒れてるぞ」

 ザワつく客席。
 それを横目に、ようやくアキラにも視界が戻ってきたよう。
 一番間近で接したがゆえに、回復も一番最後。

「あれ? ない、ないぞ! ボクの剣がっ! どこへ消えたんだ。わが手に戻れ、光の剣よ」

 あわてて叫ぶアキラくん。
 しかしその声に剣が応じることはない。
 いや、実際のところ、そんな自動返却サービスが実装されているのかは不明。
 よしんばあったところで、亜空間という別の次元へと旅立たれた彼の剣に帰宅は困難。
 いまごろは多元群体化したルーシーの分体たちの手によって、研究所へと運ばれ、よってたかってマッド科学な餌食にあっていることであろう。南無南無。
 もちろん、わたしたちは下手くそな口笛をピューピュー吹きつつ、素知らぬふり。
 そして光の剣を失ったアキラはガクッと弱体化。
 光の勇者が、ただの勇者に降格。
 それでも弱くはないよ。羨望スキルによって、みんなの声援をチカラに変えているわけだから、充分に強い部類に入るとおもう。今後ともまじめに勇者業に勤しみ、人民からの尊敬を一身に集め続ければ、いつかはかつての輝きを取り戻すことであろう。
 が、勝負は勝負。公衆の面前にて決着をつけねばなるまい。
 なので、心を鬼にしてつま先にて蹴り上げるトゥーキックを、その甘いマスクにお見舞いしようとしたら、そこで待ったがかかった。

「やめて! 彼はもう戦えないわ。ワタクシのアキラをこれ以上、傷つけないで!」

 髪の色とおそろいの真っ赤なドレスを着た、メローナ姫がここで乱入。
 まるで映画のワンシーンのような見事な駆けっぷり。
 あんた、ぜったいに練習しただろう? あんな動きづらそうな格好なのに、一発本番で出来るわけがない。
 駆け寄るなり、うずくまって苦しんでいる勇者を庇うかのようにして、こっちに涙目を向けてくる。
 たちまち完成する、想い人を悪代官から身をていして守る可憐な娘さんの図。
 まるで舞台演出のごとき、ばっちりなタイミングと立ち位置。
 正直、してヤラれたとおもったね。
 だってさ。会場中が、この一事でもって同情論にすっかり回れ右の雰囲気なんだもの。
 なんて女だ。自分の悪辣さを棚にあげて、とんでもない力技にて、ムリヤリいい話っぽくまとめやがった。
 このカップル、めちゃくちゃ性質が悪い。関わるほどにこっちがドンドン損するタイプだ。とんだ疫病神だよ。

 ……さて、ではここでちょいと考えねばなるまい。
 もしも、わたしが姫の懇願をムシして、アキラの顔面をトゥーキック。
 リスターナの評判ガタ落ち必至。
 もしも、わたしが「邪魔じゃ、ボケぇ」と姫をトゥーキック。
 やっぱりリスターナの評判ガタ落ちが必至。
 もしも、メローナとアキラの二人を仲良くトゥーキック。
 きっとリスターナの悪名が末代までの語り草に。
 ぐぬぬ、結論として、こちらは矛をおさめるしかない。
 試合に勝って、勝負に負けた。
 ような気がしなくもない。
 いちおう交流戦はわたしたちの優勝となったけれども、観客の記憶にはばっちり姫と勇者の恋物語が刻まれることに。
 なんか納得いかねぇっ!

 なお優勝の褒美として「望みはあるか」ときかれたから「できるメイドちょうだい」って言ったら、王さまに「ダメだ。うちでは法律にて人身売買を固く禁じている」と真顔で答えられた。その真意は「優秀な人材を手放す気はない」とのこと。
 しかたがないのでリザードマンっぽい種族アマケレルたちが作る、絶品の乾物を褒美に所望。
 その日のうちに宿舎に大きな箱で十もの乾物が届けられた。
 荷を届けてくれたのはライト王子の代理人のマコトくん。

「なぁ、光の剣なんてパクってどうする気なんだよ? 仮にもギフトだから他の奴だと使えないだろうに」

 受け渡しの際にマコトくん、つつつとこちらに近寄って来て、こっそり耳打ち。
 そうそう、いまさらだけどギフトってば、一度定着しちゃうと当人限定なんだよね。
 つまり「略奪ギフトで、お前のギフトを貰った」とかのインチキプレイは不可。スキルも同様。イカレポンチな女神さまも、さすがに最低限のセーフティーは設けてくれたようだ。

「あー、とりあえずいまは解析に回してる。ねえ、ルーシー、その辺どんな感じになってるの?」
「いい感じです」
「だそうなんで。やっぱり返却したほうがいいのかな?」

 わたしがたずねるとマコトは肩をすくめて首をふる。

「いや、それはべつにかまわないって王子が言ってた。バカによく切れる刃物を持たせておくほうが、よっぽど面倒だからって」
「ふーん、ところであの二人ってば今後どうなるの」
「とりあえずは様子見かなぁ。なにせ証拠がないからねえ。よしんば消えたヤツに関与していたとしても、これまでの手柄とせいぜい相殺だろうし。まっ、あの分だと今後とも適当に飼い殺しだろうよ。あのバカップル、外面だけはいいからな」
「うちとしては、こっちに火の粉が及ばなければべつに何でもいいわ」

 ざまぁ展開はナシ。
 ちょいとスッキリはしないけれども、なんでもかんでも都合よくはいかないもの。
 まぁ、オモチャは取り上げたから、前ほどヤンチャは出来ないだろうし、ギャバナ国としても手駒を減らしてまで正義を行使したところで、よろこぶのは他国ばかりなり。
 このへんが落としどころなのだろう。
 さて、明日は帰国。
 お土産もたくさん手に入ったし、交渉の成果も申し分なし。最後のバトル要素は余計だったけれども、とりあえず良しとする。
 こんな感じでリリアちゃん率いるリスターナ使節団のお詫び行脚第二弾は幕を閉じたのであった。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...