わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

文字の大きさ
49 / 298

049 首狩り王

しおりを挟む
 
 ギャバナ国での華々しい成果を引っ提げてのリスターナへの凱旋帰国。
 治安が守られ、食い物と経済が回ってきたおかげで、主都の中もずいぶんと活気が戻っている。
 おかげで正門から城まで見物客にてごった返し、ちょっとしたお祭りパレード。
 主役はもちろんリリアちゃん。
 皮肉なことにダメな兄貴の悪名のおかげで、妹の彼女が当たり前のことをしただけで民衆は拍手喝采。いいことをしようものならば、狂喜乱舞の大フィーバー。
 ましてや若い身空にて、今回の大国との交渉締結までまとめあげた功績によって、その人気は不動のものに。いまやトップアイドルへと成長。
 彼女は着々と女王へと道を歩んでいる。そろそろグッズ販売に乗り出すべきか。いちおうブロマイドとポスターは用意してあるけれども。千部ずつでは足りなさそうだ。よし、追加発注をかけておこう。
 なお、彼女の人気の裏でせっせと働いているわたしのことは公然の秘密。「なんか王さまに手を貸してるヘンな女がいるらしい」ぐらいの認識。
 だから一般には顔をほとんど知られていないので、堂々と街中を闊歩できるというわけさ。

 都民の視線がリリアちゃんの凱旋パレードへと向いているのを尻目に、わたしはルーシーとひさしぶりに街ブラ。
 最初に来たときとは雲泥の活気だけれども、大通りの商店の開店率はようやく七割といったところか。一等地だというのに、まだまだ閉じてるところや空き店舗が目立つ。
 商人たちは利に敏く、用心深い。いちど裏切ったリスターナをそうやすやすとは許してくれないから、こんなもんだろう。
 ノットガルドには冒険者ギルドはないけれども商業ギルドっぽいものはあるらしいので、そのうち接触を試みるのも悪くない。当方が誇る「っぽいモノシリーズ」をちらつかせれば、きっとパクリと喰いついてくるにちがいあるまいて。
 今後の展望なんぞを思案しながらトテトテ歩く。
 路地裏に腹を空かせた子どもたちの姿はない。
 じゃんじゃん収穫される小麦で、バンバン食い物をこしらえて、どんどん配布しまくっているからね。日持ちのするカチコチのパンだけでなく、白くふわふわのパン、あとパスタ類も好評だ。乾麺を優先して開発させたのは正解であった。インスタント麺もすでに試食段階に入っている。充分に国内にゆき渡ったら、今後は輸出にまわすとしよう。
 くくく、我ながらおそろしい開発スピードである。他の追随を許さぬぶっちぎり。
 ルーシー、えらい! 知識チート、万歳!
 喰いっぱぐれていた連中もまとめて雇い入れ、畑の管理、収穫から保管、物流、製造、その他もろもろにて従事させ、とりあえず生活の基盤は確保したから、当面はだいじょうぶだろう。
 もちっと国が安定して落ち着いたら、各々が好きな生き方を模索するといいよ。

 人形を抱いた若い女が、あえて寂しい裏通りを選んでトボトボ歩く。
 だが、ちょっかいをかけてくる不心得者はいない。
 先の賊狩りの効果が十分に発揮されているようだ。
 綱紀粛正のため、問答無用で殺処分にて、さらし首が効いたみたい。
 聞くところによると、巷では子どもがイタズラをすると、お母さんが「そんな悪い子は、王さまに首をちょん切られても知らないから」と言うらしい。
 するととたんに子どもは「ごめんなさーい」と本気泣きにてワビを入れてくるという、家庭内恐怖政治がまかり通っているのだとか。
 裏では密かに「首狩り王」と呼ばれ、恐れられているらしいシルト・ル・リスターナ。
 ごめんよ、美中年。
 そんなつもりはなかったんだけど、世間一般にはモロモロすべてが王さま主導ってことになってるから、いい評判もわるい評判もぜんぶ彼のところに押し寄せる。当人は「これぐらいへっちゃらだよ。責任ある立場とはそういうものさ」とか大人の余裕だったけど、たぶん表に出てるのなんて氷山の一角。裏の裏で何を言われてることやら。
 この分だと後世の歴史家とかに「中興の祖シルト王は、我が子に裏切られて変わられた。それまでの聡明さと果敢さに加えて、残酷さをも兼ね備えた恐ろしくも賢い王に」なんて、きっと書かれちゃうんだ。
 やんごとなきご身分だと、ひとのウワサも七十五日の法則は当てはまらない。
 リスターナの国が続くかぎり、いいや、それどころか滅んでも、たぶん他国経由にて長く語り継がれるんだから、たまったものじゃないね。
 せいぜい悪名はシルト王に背負ってもらい、リリアちゃんにはいい評判だけを残すように注意しないと。

「それにしてもギャバナから帰ったばっかりのせいかもしれないけど、リスターナってまだまだだねえ」
「そうですね、リンネさま」

 あちらの毎日お祭り騒ぎ状態を見てしまうと、こちらは完全に祭りの後にしか見えない。それも町内会レベルの。
 環境さえ整えれば、あとは勝手に隆盛するものかと安易に考えていたけれども、街づくりのシュミレーションゲームのようにはいかないか。
 国の運営や政治ってむずかしいね。独裁でもないかぎり、ちっとも物事がスムーズに運ばない。
 内側の苦労をのぞき見してしまったら、もう、安易に「職務怠慢だ」「仕事しろ! 税金ドロボウ」「やめちまえ! くそバーコード」とかとても言えやしないよ。
 そしてつくづく思うのは……。

「ダイクさんやゴードンさんもよくやってるけれども、やっぱり人不足が否めない」
「はい。騒動の折りに嫌気がさして優秀な人材ほど、早々に国に見切りをつけて出て行ってしまいましたから。残ってくれた人たちも主都より遠ざけられて散り散りにて、ほとんどが消息不明らしいですし。いずれ国がまともになったことを知れば、姿をあらわしてくれるかもしれませんが」
「でも、それだと時間がかかるよね? ならいっそのことコッチから探し出して、迎えに行くとか」
「狩りですか……、いいですね。各地の復興具合を見学がてら、ちょっと漁ってみますか。おもわぬ掘り出し物もあるかもしれませんし。ついでにあちこちに潜伏しているであろう膿も出し切ってしまいましょう」
「そうと決まればお城にいって王さまたちに相談だ」

 善は急げと、城へと向かって歩き出したわたしたち。
 次から国内行脚のぶらり旅編がはじまるよ。
 こうご期待。


しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...