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050 旅立ちぬ
しおりを挟む旅のご隠居が、めっぽうウデの立つお供を連れて、かつての権力地盤を背景に、各地でやりたい放題。
シルト王さまの認可を受けて、そんな愉快痛快時代劇みたいな旅を画策していたんだけど……。
王さまから印籠代わりの許可状はもらった。中には「この者、王の代理人なり。切り捨て御免」とのおっかない文言入り。
宰相のダイクさんからも「がんばってくれ」と激励された。事務方は特に人手不足が深刻だからねえ。彼の弟子になって事務見習いとして働くモラン少年からも、涙目でお願いされた。「このままだとダイクさまが死んでしまいます」なんて必死に懇願されたら、こちらとて気合が入ろうというもの。
将軍のゴードンさんも、必要とあらば軍を派遣するから遠慮なく申し出るようにとのこと。それはともかくとして、ムキムキじじい、何気に格好がこざっぱりしていやがる。頭に寝ぐせがついてないし、シャツの襟がパリッと折り目正しい。だらしない独身貴族のこの変わりよう。これはきっと身の回りの世話役として雇っているユーリスさんの影響だな。
毎朝、出勤前とかに「あら、ゴードンさま。襟元が」とか言われながら、ユーリスさんに服装を整えてもらっちゃったりしているのだろう。
とにもかくにも、こうして準備は整った。
あとは正体を隠して、各地を旅して回り、悪党どもをバシバシ懲らしめて、使えそうな人材を発掘し、民衆に王威を示すばかりなり。
だが、楽しいはずの旅行は第一歩からつまずく。
あんまり大所帯でウロウロするのも目立つので、とりあえずルーシーに、グランディア、オービタル、セレニティたちを一人ずつだけお供につれての旅行脚。もちろん悪目立ちする容姿の彼らには、頭からすっぽりと全身を包むローブ着用を義務づけている。
街道の整備が完了しているので、道中は安心安全にて、とくに問題なし。
それどころか街道沿いにいつのまにやら、ソーラー式の外灯が設置されていたことに、おどろかされた。
早速、最初の目的地に到着。
で、到着するなり街の中央広場にはつめかけた群衆たちに囲まれて、亀甲縛りにされた男数名と、なにやら役人風の男性の姿が待っていた。
「こちらに転がされているのが、混乱に乗じて立場を悪用して、わりとやりたい放題していたバカ者たちです。そしてこちらがその裏で懸命にがんばってくれていた出来る人です」
ルーシーさんから紹介された面々を見て、わたしはすぐに悟った。
とどのつまりオープニング直後にて、なにもかもすっ飛ばして、物語は早やエンディングに片足を突っ込んでいるということに。
不覚……、うちの連中の有能さをすっぽり忘れていた。
なんでもわたしが主都にて旅の準備を始めたのと並行して、下調べを国内全土で実施していたんだとか。
クノイチなセレニティたちにルーシーの群体らが二人一組で行動。各地に飛ぶ。
シュタタタッと隠密行動にて現地での情報収集、不穏分子の洗い出し、有益な人材の捕捉、行方不明となっている人たちの追跡調査もついでに行われる。
その結果が、いま目の前にあるコレだ。
あまりにも鮮やかな手並み。きっと行く先々にてこんな調子なのだろう。
本家本元なんて目じゃねえなっ! サービスシーンも、出会いと別れの人情の機微も、お涙頂戴も、胸がすくようなアクションもありゃしない。開始直後にすべてが速やかかつ静かに滞りなく終了。
あとは最後の締めのお言葉を待つばかり。
うぅ、わたしの愉快痛快なはずの旅が……ぐすん。
「えー、控えおろう。そっちの悪党どもはおって厳重な沙汰が、王より下されるので覚悟して待つように。それから頑張ってくれたえらい人には、あとでお褒めの言葉とご褒美やら栄転やら、いろいろ特典満載につき、期待して待ってて」
それっぽい採決にて、悪党どもを懲らしめ、王威と正義の健在ぶりを示すと、群衆からは大きな歓声があがった。
よっぽど苦しめられていたらしいね。こりゃあ、死罪は確定だな。そういえばルーシーが薬物実験の被検体を欲しがってたな。見た目は元気そうだし、そっちに回すように手配して、最後ぐらいはみんなの役に立ってもらうか。
わたしがそんなことを考えていたら、いつのまにやら広場では「シルト王バンザイ!」だの「リスターナに栄光あれ!」なんぞと合唱が巻き起こっていた。
民衆を扇動しているのは、青い瞳をしたお人形さん。
まるでロックミュージシャンのコンサートのように、拳を突き上げてのパワフルな盛り上げ方。
国威高揚活動の一環らしいのだが、なんだかやたらと手慣れてない? その小さな背中に何やら不穏な気配を感じるのは、わたしの気のせいであろうか。
そういえばグランディアやオービタルにセレニティたちハイボ・ロード組の忠誠が日に日に、目に見えて厚くなっているんだよねえ。
ひょっとして彼らのところに派遣したルーシーの分体が、何かをしているんじゃあなかろうか。
これは当人を問いつめるべきか? でも真実を知るのが、わたしはなんだかこわい。
リスターナの国内を巡る旅は、終始こんな調子につき、世直しサクサク、人材発掘もわりとザクザク。
罪人ともどもドシドシ中央に送ったので、あちらの人手不足もじきに解消されるだろう。
そして王の首狩り伝説はさらに濃厚となる。
かくして国内行脚のぶらり旅編、打ち切りペースにて早々に完結。
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