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121 一番目と六番目
しおりを挟むリンネが大図書館の地下で遊んでいたころ。
ルーシーの分体とセレニティ・ロードたちで構成された第二班。
そのうちの部隊のひとつが、オスミウムでもかなり中枢に当たる区画のとある建物内部にて、見知った顔を発見する。
青い瞳にブルネットの長い髪、非常に整った容姿をした女。
かつてラグマタイト国にて遭遇した聖騎士グリューネである。
それがこんな夜更けにフラフラと出歩いていれば、これはもう尾行するしかない。
悟られぬように充分に用心しつつ後をつけていくと、彼女の姿は立派な扉のある部屋の中へと入っていった。
室内への出入口はそこのみ。
さすがに扉を開けて侵入したらバレてしまう。
そこでルーシー分体が亜空間より取り出したのは、細い管の先にカメラがついた機械。これを扉の鍵穴から差し込んで内部の様子を探り、ついでに収音マイクも扉にセット。
パートナーのセレニティには周囲の警戒を頼み、お人形さんは室内の方へと集中する。
映し出された映像の向こうには二人の人物の姿があった。
「ケガの具合はどうかな、グリューネ」
「はい、おかげさまで。ご心配をおかけして申し訳ありませんでした、ゼニスさま」
グリューネにゼニスと呼ばれたのは腰までまっすぐな銀の髪がのびた男。
すらりとした立ち姿の長身、ゆったりとした白いローブを羽織っている。細目にて絶えず笑みを浮かべてはいるものの、やや頬がこけて、柔和な雰囲気の中にどこか病的な青さが付随している。
得体の知れない凄味みたいなものがあり、注意すべき人物であるとの印象をルーシー分体は抱く。
「しかしグリューネがやられるとは。ギャバナのアキラとかいう女勇者は相当な使い手みたいだね」
「面目次第もありません。いささか油断しました。ですが次に会ったときには必ず……」
雪辱を晴らそうと鼻息も荒いグリューネ。
ちなみに彼女たちはリンネがついた身元詐称のせいで、自分の邪魔をした相手がギャバナの光の勇者アキラだと勘違いをしている。
再戦を誓う彼女を「まあまあ」となだめるゼニス。「そう熱くならないで。ケガに障る。治りかけこそ用心しないといけない」
やんわりとたしなめられて渋々怒りの矛をおさめたグリューネ。
「それに我々の使命を忘れてはいけないよ。我ら聖騎士はあくまで女神イースクロアさまのシモベにして、代行者に過ぎないということを。やるべきことは多い。あまり些事にかまけている暇はないのだから」ゼニスはそう言うなり、ふいに扉の方へと顔を向けた。「それにしても今宵の都は、なにやら少々騒がしいみたいだねえ」
ゼニスの細い目の奥がしっかりと扉を見据えている。
カメラのレンズ越しにルーシーの分体と目が合った。「いけない、気づかれた。セレニティ!」
すぐさまお人形さんを抱きかかえたセレニティが、その場を離れる。
直後に扉が内側からバタンと勢いよく開き、すかさずグリューネが廊下に飛び出すも、すでにそこには何者の姿もなかった。
「ちっ、逃げられたか。すぐに追います」とグリューネ。
しかしゼニスは「かまわない」と首をふり「すでにイブニールが向かっている」と言った。
建物から脱出したところで、すぐに背後から迫る何者かの気配を察知したルーシー分体とセレニティ。
亜空間に逃げ込めば追跡をかわすのは簡単だ。
でもいきなり消えてしまうと追跡者の目が他所に向いて、都中で活動している面々に迷惑が及ぶかもしれない。
だからあえてオトリとなり、しばらくのあいだ夜の摩天楼を泳ぐことにする。
深夜の鬼ごっこ。
予定通りにのらりくらりと逃げ回るルーシー分体たち。
しかしそのうちに追跡してくる気配が増えたことに気がついた。
「ひ、ふ、み、……全部で五。さすがにこれ以上ふえたら騒ぎが大きくなるか。しかたがありません。中央公園に誘い込んでお相手しましょう」
中央公園はオスミウムの都の中心付近にある大きな憩いの場。準自然の森にて植生がとっても豊か。ここならば木々が生い茂っており、内部でちょっとぐらいはしゃいでも外部にはほとんど聞こえないはず。
ルーシー分体の指示でお人形を抱いたセレニティは公園へと向かった。
公園内にある池のほとりで対峙することになった逃亡者と追跡者。
しかしルーシー分体は相手の姿に首をひねる。
なぜなら五人の追跡者がみなまったく同じ容姿をしていたから。
見た目は痩せた小男。やや猫背にて、お世辞にも見栄えはよくない。
「五つ子? にしてはあまりにも似すぎていますね。いかに一卵性とて成長過程において多少の身体的差異が生じるもの、それが皆無とは」
ルーシー分体の目にはまるで判で押したかのように映っている男たち。
「キシシシシ、その青い目、キレイだなぁ、欲しいなぁ」
両の手にダガーを握った男が舌なめずり。
五人全員が似たり寄ったりの反応。
どうやら変態さんの団体らしい。それもかなり危ない系の。
だからお人形さんは躊躇なくショットガンをぶっ放すものの、男たちは銃口が火を噴く寸前に散開。
これを合図に戦いがはじまる。
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