131 / 298
131 星空ランデブー
しおりを挟む宇宙戦艦「たまさぶろう」がノットガルドの空をゆるゆると飛ぶ。
そこから一気に急上昇、大気圏を突破して星の海へ。
ここまでは軽いウォーミングアップ。
「よし、ではしばらくは好きにしていいよ。たまさぶろう」
わたしが許可を与えると、たまさぶろうが尻尾をビチビチふった。
嬉々として惑星の周囲を思うさまに泳ぎ出す。
これもまたわたしことアマノリンネ流の家族サービスの一環である。
なにせこの子は全長百メートルほどもある巨大サメのぬいぐるみがベースとなっているもので、うっかり地上で本気を出したら世界がヤバい。
ものすごい風速の嵐を巻き起こし、あらかたの文明圏が崩壊する。あと気候変動とかも引き起こしかねない。
だからふだんの移動ではかなりチカラを抑えた飛び方のギューン。
でもたまにはおもいっきりカラダを動かさないとなまっちゃう。
で、宇宙に飛び出して広い場所にてギュギューンと遊ばせるわけさ。
先日の富士丸くんとのピクニックと同じようなもの。
そうそう、あの「Gの戦慄」だらけの石のヒョウタンから脱出したら、ひさしぶりに頭の中にキンコンとレベルアップの音がしたよ。
しばらく鳴っていたから、けっこう危ない連中だったのかもしれない。
ただし正体やどうしてヒョウタンの中に封じられていたのかは、いまもって不明。
ルーシーにも調べてもらったんだけど、物証は根こそぎ消し飛んでしまったし、少なくともアカシックレコードには一切記録されていない存在だという。「ひょっとしたら、はじめて宇宙へと飛び出した時に遭遇した、あの異星からの侵略エックスっぽいのと同類なのかも」とのこと。
「そんな相手をやっつけてしまうだなんて、すごいですリンネさま。さすがです」なんて鬼メイドのアルバは羨望の眼差しを向けてくれるけれども。もしもアレが世に解き放たれて大挙して向かってきたら、おそらく各国に散っている大半の異世界渡りの勇者は、一致団結して全力にて立ち向かっていたと思うよ。
ひょっとしたらわたしは世界平和へと通じる唯一の道を潰してしまったのかもしれない。
なんて考えるのは、さすがに深読みが過ぎるか。
アルバにお気に入りの竹の葉のお茶を淹れてもらい、メンマをポリポリつまみながら艦長席にてぼんやりしているうちに、早やノットガルドの惑星まわりを六周したたまささぶろう。
とりあえず満足したようなので、今度は進路を七つの月の一つへと向けてもらう。
ちょっと確認したいことがあったのだ。
ほら、例の石のヒョウタンから脱出する際に、わたしってば魔導砲をぶっ放しちゃったでしょう? 惑星外にまで盛大に飛んでいった破滅の光。
アレがどうやら月をかすめちゃったみたいで、何げに見上げた夜空のお月さまの形が明らかにかわっていたんだよねえ。
自分では充填するエネルギー量をかなり抑えたつもりだったのだが、ルーシーからはどえらいカミナリを落とされた。
「あんなモノを地表で放つとか正気ですかっ!」
なにせ次元の壁をもあっさりぶち抜くような代物。
ちょいと角度がおかしな方を向いていたら、最悪、ノットガルドが真っ二つとかだったらしい。
青い目をしたお人形さんがモーレツにぷりぷり怒り、正座にて三時間ほどもコンコンとマジ説教を喰らい、「いい加減にご自分がヘンテコオカシイことを自覚して下さい」とまで言われて、わたし涙目。
お人形さんの言い草がヒドすぎる、くすん。
まぁ、そんなことがあったので、いちおうは確認しておこうかなと思い立った次第。
やったことはやったこととして、被害状況をつぶさに見て、おおいに反省と自戒する所存。我ながらなんて殊勝な心がけであろうか。
魔導砲がかすったのは、一面が青白いぶ厚い氷で覆われた「エレジー」と呼ばれる月。
遠目にはわりとキレイに見えていたのだが、近くに来るとその寒々しさよ。眺めているだけでこちらまで凍えてきそうで気が滅入ってくる。
そんな陰気な月のはしっこ、全体からすると四分の一ほどが、モノの見事に抉れていた。
まるで箱入りの特大アイスクリームを専用のスプーンでガッツリすくったかのような断面。エレジーの表層部を覆う氷の層を超えて、中にある本来の地表部分がむき出しになっている。
「おぅ、これは……。直撃してたら月が軽く吹っ飛んでいたかも」
わたしは今更ながらに己が所業にビビる。
「なんというすさまじい破壊の痕跡。ルーシー先輩が怒るのもわかる気がします」
三メートルの鬼メイドがぶるると肩をふるわす。
「とりあえず魔導砲は勝手に使わないことっ! いいですね!」「くれぐれも自重して下さい!」
クドいくらいに念を押すルーシー。
もちろん、わたしはコクコクとうなづく。
すると「おや?」と声をあげたのはアルバ。「あれって何でしょうか」
鬼メイドが指し示す地点に目をやれば。そこには抉られてむき出しになった地表から飛び出している、人体の一部のようなモノの姿があった。
9
あなたにおすすめの小説
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる