わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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149 暴飲暴食

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 いつものようにモナズセキ平原にて対峙していた連合軍と魔王軍。
 ふいに魔王軍の後方にて、なにやらざわめきが起こる。
 連合軍側の斥候が確認したところによると、新たに敵の増援が到着したのこと。格好からして魔王直属の精鋭部隊らしいとの報告がもたらされ、連合軍側は「すわ、新しい魔王が自らが出陣してきたのか」と色めき立つ。
 が、何やら様子がヘンである。
 それで遠目にてよくよく眺めていたら、陣形がどんどん崩れていき、軍勢が奇妙な動きをしているではないか。土煙をあげて、魔法やら怒号が飛び交っており、まるで何者かと争っているかのよう。
 これを目撃した多くの将兵たちは「おおかた内紛でも勃発したんじゃないのか」「いまこそ攻める好機」などと考える。
 それがおおいなる勘ちがいであることは、じきに否応なしに知ることとなった。
 なにせ魔王軍の陣を突き抜けて、戦場のど真ん中に超巨大なジャミっぽいモンスターが乱入してきたのだから。
 不測の事態。敵味方、度肝を抜かれるものの、さりとて怯みはしない。
 何故なら、この地は第七十九次聖魔戦線の最前線。
 そこに集うのは百戦錬磨の猛者や、覚悟を決めてこの度の戦に臨んでいる者ばかり。
 皮肉なことに、それが悲惨な結果を招くことになり、両軍ともに被害は甚大なものとなってゆく。



 ルーシーの細かい分析やらよくわからない計算にて、どうにか目処をつけてから準備を整えたわたしたちが、モナズセキ平原へと駆けつけたときには、なかなかに悲惨なことになっていた。
 両軍ともに戦線の維持なんてとんでもない。大混乱にて敵味方が入り乱れて、邪龍とくんずほぐれつ。そして邪龍のサイズが新幹線で束を作ったかのようなあり様にて、じつに楽しそうに踊り食いを満喫中。

「あー、どっちもなまじ精鋭揃いだったのが裏目に出たみたいだねえ」とわたし。

 なにせ邪龍にとっては強い相手ほど美味しいエサなんだもの。
 なんとも福福しい姿となっていく邪龍を空の高みより見下ろす、わたしことアマノリンネ。
 ただいま宇宙戦艦「たまさぶろう」から垂らされた一本のロープにて、ぷらんぷらんと宙ぶらりん。
 その理由はこうだ。
 ルーシーいわく「アレは水風船のようなもの。それも極めて膨張性に優れた。そのせいでどんどん内部に栄養というか魔力やエネルギーをとり込んで成長する。おそらくは無制限にて。ですが膨張率には一定の限界があるようです。つまりその限界を超える勢いにて栄養をじゃぶじゃぶ注いでしまえば、カラダの方の成長が間に合わずにバンっ! ですね」
 さて、ここで問題となるのが、そのじゃぶじゃぶ。
 現状において、ノットガルド中のどこを探しても、そんなじゃぶじゃぶは一つしかない。
 それが歩く究極電池であるところの、このわたしというワケさ。
 あっはははは、いやー、まいったまいった。
 まさか生餌を経験する日が来るとは、いったい誰が予想しえたであろうか。
 いや、これしか手がないのならばしようがないさ。
 わたしだってノットガルドが無くなったら困るし、協力することとてやぶさかではない。だからとて主人をエサにする作戦を思いつき、「経皮摂取より経口摂取の方が効果的」「健康スキルがあるからへっちゃら」と言い、なんら迷うことなく実行しようとするお人形さんがヒドすぎる。

「ねえ、ルーシーさんや。ほんとうに大丈夫なんでしょうねえ?」
「大丈夫ですってばリンネさま。グランディアたちとの計算の上ではバッチリです」
「でも世の中には机上の空論なんていう言葉もあるよ」
「世間の大半は絵空事とおっさんの妄想で回っているのですよ。だから大丈夫です。……たぶん」
「ちょ、ちょっと。いま、たぶんって言った? ねぇ、言ったよねっ!」
「気のせい気のせい。それよりも、ほら、そろそろですから。覚悟じゃなかった、準備をお願いします」
「覚悟ってなに? ねぇ、覚悟ってなにーっ!」

 わたしとルーシーがギャアギャアとやりとりをしている、空の上のこの光景。
 地上からみたらどのように見えていたのかというと。

「なんだアレは?」「トリか。モンスターか」「いいや、アレは女だ」「飛行魔法?」「あんな魔法は知らんぞ」「ギフトの類じゃないのか」「だとすればどこかの国の勇者かも」「若い女が天から伸びたロープで空を飛んでいる!」「ばかな、あのロープはどこから」「もしや天の女神さまの御使いなのかも」「窮地の我らに救いの手が差し伸べられた」「ありがたやありがたや」

 と、まぁ、こんな感じにて地上がちょっぴりザワついている。
 なにせ宇宙戦艦「たまさぶろう」はカモフラージュ機能にて姿を隠しているからね。
 敏感な者ならば上空に何やら潜んでいるかのような気配を、うっすらとは感知しているかもしれないけれども、基本的に見えないから。
 結果としてどこぞより伸びたナゾのロープに吊るされた、ヘンテコな小娘の姿が多数に目撃されるばかり。
 そんなみんなの熱い視線を一身に集めながら、わたしは邪龍にパックンされちゃいました。
 いやん。


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