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159 男前人形
しおりを挟むやってきましたダロブリン。
いつものごとく宇宙戦艦「たまさぶろう」にて、ひとっ飛び。
目的はもちろん、つい先日に舐めたことをしてくれたこの国へのお礼参り。
ルーシーなんかは「わざわざ出向くのも面倒だし、ペンシルロケットを適当にぶち込んで終わらせましょう」とか言ったんだけれども、わたしは「とりあえず彼の国の実態を検分してから」との判断を下す。
使者にきた同胞を情け容赦なく問答無用でバンしちゃってるくせに、何をいまさら良識ぶっていやがる。
そんな批判がどこぞより聞こえてきそうだが、それでもいちおうは調べておきたい。
だって腐った文明社会の中でも健気に咲いている、一輪の可憐な野花がいるかもしれないもの。
ぶくぶく肥えたブタどもが煌びやかな城内でブヒブヒ鳴いている裏で、懸命に耐えている人とか、いかにもいそうな気がする。
うっかり吹っ飛ばした都の片隅にて、まるで時代劇に登場する「すまないねえ。おまえにばかり苦労をかけて」「おっかさん、それは言わない約束でしょう。わたしは平気だから早く元気になってね」なんてやり取りをしている母子家庭があったら、わたしは悔やんでも悔やみきれないよ。
で、いつものごとく、わたしは青い目をしたお人形さんだけを抱いて、テクテク荒れた街道を歩く。
これは「賊ホイホイ」のスタイル。
わたしなんかは「こんな怪しい相手に、よくちょっかいを出すわ」と思うのだが、そもそも思慮分別があるようなやつは賊にはならない。
連中の思考や行動は、頭の悪い魚とかわらない。目の前にエサがきたら、とりあえず反射的にパクリと喰いつく。おかげで、まぁ、面白いように釣れる釣れる。
十人ばかりの小集団が早速ヒット!
一人を残して瞬殺。
冴えわたる女ガンマンの射撃のテクニック。戦闘における出会い頭の不意撃ちの割合がお高めゆえか、抜き撃ちの技術には定評のあるリンネさん。
鬼メイドのアルバからも「だまし討ちをさせたら右に出るものがいない」と褒められたこともあるぞ。
わたしが遺体から身ぐるみを剥いでいる間に、ルーシーが捕虜にショットガンの銃口をぐりぐりしながら、小突き回して尋問。
それって主従で役割が逆なんじゃないのって思った? でもこっちの方が効果的なのだからしようがあるまい。
だって貫禄も胸もヤル気もない、へらへらしている小娘と、無機質な青い目をしたお人形さん。面と向かうとどちらが怖いのかなんて比べるまでもないよね。
尋問の結果、この国の状況はかつてわたしが居た頃よりも、さらに悪化しているらしい。王都以外はどこもかしこもこんな感じにて、ダメな大人たちが「ヒャッハー」している世紀末の荒野状態。見渡す限りの不毛と無法の大地。
当然ながら国ランクもぶっちぎりの下の下の下。
しかも領主や貴族らが賊と結託して、ピンハネとかまでしているとのこと。
貴族どもにとって民は奴隷と同義とか、もうむちゃくちゃ。王都の壁の内も外も腐りきっており、体制がとっくに破綻して逝っちゃってるよ。
近くに賊どものアジトがあるというので、わたしは捕虜のおっさんの尻を蹴飛ばし案内させる。
「やたらと従順だなぁ」とかおもっていたら、何てことはない。大勢の味方のところに誘導して、数の暴力にて逆襲を目論んでいただけのこと。
アジトとなっている洞窟のそばにまできたとたんに駆けだし、大声にて仲間らにわたしたちのことを報せるときの、彼のうれしそうな顔といったらなかった。
そしてあっという間に賊仲間たちが殲滅されて、へたり込みながらズボンを濡らし、真っ青になって必死に命乞いをするおっさん。
あんまりにも情けない姿なので、ちょっと憐憫の情が湧いたが、でもダメ。許してあげない。だってアナタたちも、これまでそうやって命乞いをする人たちを見逃してあげたりなんて、きっとしなかったでしょう? だから、バイビー。
けっこうな数の賊だったので、ルーシーズやアルバを亜空間経由にて召喚し、漁るのを手伝ってもらう。
狩りと採集はリンネ組の十八番。みんな手慣れた様子にてサクサク「いるもの」「いらないもの」を選別していく。
表を彼女たちにまかせて、わたしとルーシーは洞窟の奥へ。
アジトというよりも保管庫に近い使われ方をしていたみたい。洞窟といったって内部は入り組んでおらず、枝分かれしているのは一か所だけ。
右へ進めば食糧やら盗品が保管されていた。もちろんこれらは根こそぎ頂戴する。
そして左に進むと、そこにいたのは手足を鎖で繋がれた子どもたち。
みな怯えている。服装はボロにて、カラダも痩せこけており傷だらけのひどいあり様。おそらく日常的な暴力に晒されていたとおもわれる。
その姿を見た瞬間、わたしの中でカッと怒気が膨れ上がる。
ところかわれば習慣や文化が変わるとはいえ、「だからしようがない」とわり切れるほど、わたしは大人じゃない。
そんなわたしにルーシーが言った。
「リンネさま、気をお鎮めください。子どもたちがおびえています」
いつの間にやら怒髪天をつく感じになっていたわたし。青い目のお人形さんの言葉ではっとして、シューっと怒りの熱を外部に排出。
以降は黙々と解放作業に取り組む。
小さな女の子から「あなたが新しいご主人さまですか?」と声をかけられたときには、どうにも胸が締めつけられて泣きそうになったよ。
子どもたちの中には頭に角の生えている魔族の子の姿も混じっていた。
この子が一番ひどい状態。なにかと他の子たちを庇ったせいらしいのだが、足の骨が折れておりパンパンに腫れて熱を持っていた。痛みのあまり気を失っている。だから治療のために急ぎ担架にて運ばせた。
「さすがに子どもに『だいたいよくなるポーション』はダメだから」
そう指示を与えるのも忘れない。だってちゃんと釘を刺しておかないと、ウチの連中ってば横着してなんでもかんでもアレで済まそうとするんだもの。未成熟な幼子に劇薬使用はさすがに容認できません。
魔族の子どもに関してはアルバに任せて、他の子たちはとりあえず亜空間内のルーシータウンにて一時保護。落ち着いたらリスターナの孤児院に送る予定。
保護した子たちを連れ、収穫物を担いだみなが帰っていくのを見送りながら、「話には聞いていたけれども、実際に目にするとけっこうキツイもんだねえ」とわたし。
「そうですね。ですがこの先に進むと、たぶんもっと胸糞が悪くなるモノを御覧になることになりますよ」とルーシー。
お人形さんがとってもイヤなことを仰る。
とはいえ行かないという選択はない。だってこれ以上、阿呆どもにチョロチョロと周りをうろつかれたら鬱陶しいんだもの。
それにしても気まぐれに怒り、気まぐれに助ける。我ながら自分の偽善っぷりにも少々呆れちゃうね。
おもわずそんなことをボヤいたら、意外にもルーシーが「それがふつうなのでは?」とこれを肯定する。
「いかにチカラがあろうとも、個人に出来ることなんてたかが知れています。すべてを救えるだなんて考えるほうが、よっぽど傲慢でしょう。各々がそばにいる相手に、ほんのちょっと優しくするだけで、世の中はずいぶんと明るくなるのですから」とお人形さんは言った。そればかりか「だからリンネさまはそのままでいいのですよ。あなたのやさしい気まぐれに応えるために、わたしや富士丸やたまさぶろう、アルバや他のみんながいるのですから」とも言ってくれた。
やっべー、ちょとクラっときたよ。
お人形さんが男前すぎる。
10
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