わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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195 思惑

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 ベルさんとの謁見を終えて、辞去することになったわたしたち。
 来た時と同じように、聖騎士のジョアンがこちらをエスコートし、ゲートへと向かう。
 無言にて何かを仕掛けてくる気配もない。
 いったい何を考えているのやらと思っていたら、別れ際に、「娘はしばし預けておく。帝都日報に欠かさず目を通しておけ」とだげ告げられた。
 言うだけ言うと踵を返したジョアン。そのままスタスタ立ち去っていく。最初から最後まで、徹底した無愛想っぷり。

「えーと、ようは連絡をとるときには、新聞に何か載せるってことかな」
「おそらくは、そういうことかと」

 遠ざかる無愛想男の背中を見送るわたしとルーシー。
 とにもかくにもベルさんの無事は確認できたことだし、いったんはおとなしく引き上げることに決めたのだけれども、その道すがら考えるのはつい先刻の彼女との会話の内容。
 星読みのチカラについての説明と、自身が視た娘にまつわる未来についての話をしてもらったんだけど、そこにわたしたちが絡んでくるそうな。
 未来視、預言、それとも占い? 頭の上に浮かぶ第三の眼がどうとか。そのチカラにて娘の身に危険が迫っており、これを打開するのに必要となるカギがわたしたちだと知ったらしい。ただしどう関係するのかは不明。
 判明しているキーワードは「赤い心臓」「人形をつれた女勇者」「アルチャージル」の三つのみ。
 ここまで映像が視えないのは初めてのことらしく、それだけ未来が不確定だからという、なんとも不吉な推測まで口にしたベルさん。
 それでもって、いまだに登場していない残りは「赤い心臓」とかいうモノ。
 言葉の響きにそこはかとなく不穏なモノを感じる……、きっとロクなもんじゃないね。
 なんのことかはベルさんにもわからないって話。でもノノアちゃんが狙われているのは、きっとこの「赤い心臓」が関係しているのにちがいないと言っていた。
 ノノアちゃんってば星読みの潜在能力が半端ないらしくって、いわゆる天才ってやつ? おもわずお母さんが周囲に秘密にしちゃうぐらいだから相当なのだろうけれども、ずっとひた隠しにしていたことが、何故だかどこぞより外部に漏れていたとか。
 こうなると疑いたくはないけれども、どうしても身近なところに疑惑の目がいく。だから一族と隔離されている現状には、ほんの少しだけ安堵しているとの本音もちらり。
 おそらく連中は娘のチカラを悪用するつもりなのだろうが、これを許すとノノアの未来のみならずノッドガルドの未来にも暗雲が垂れ込めてしまう。
 ベルさんからは「どうか娘をお願いします」と頼まれたんだけど、正直なところ何をどうすればいいのかがさっぱりわからん。

「とりあえず連中からノノアちゃんを守っていればいいのかなぁ」

 わたしは首をかしげる。なんというかどうにもすっきししなくって、頭をガシガシ。

「というか、あの調子だと必要な時がくるまで、向こうからちょっかいを出してくる気もなさそうでしたね」とはルーシーさん。ただしお人形さんは「なんとなく時間稼ぎをされているような気がします」とも言った。

 では、それはいったい何のために?
 ベルさんは現在とある評議会のメンバーより、「選定の儀において自分の押す人物を支持して欲しい」と暗に脅迫まがいのことを受けているそうだが、それについてはあまり危惧していないという。なんというか小者臭プンプンにて「ヌルい」とのこと。
 星読みの一族は建国以来、帝国の中枢と適宜な距離と関係を保ってきた特殊な一族。
 皇帝や評議会の求めに応じてチカラを行使する。その影響力はけっして小さくない。それゆえにときおり不心得者らが、ちょっかいを出してくることも過去には幾度もあった。ヒドイ時など、いきなり神殿に生首を放り込まれたこともあったとか。
 だがそれでも命脈を現代にまでしっかりと保ち続けている。そしてちょっかいを出した側は何処かへと消え失せた。とどのつまり、そういう力学が働いたと。
 大国ともなれば抱えている闇もまた大きい。おそらくはそれにのみ込まれてしまったのだろう。
 その評議員が教会と手を組んでいるのは間違いない。
 けれども、両者の思惑が微妙にズレている。そんな印象を受けるとベルさんは言っていた。
 次期皇帝について、しゃかりきになっているのは小者側だけで、教会側はただの一度も、その件について口にしたことがないという。
 もしかしたら本命は別にある? とまで考えたところで、答えは出ずに思考は堂々巡り。

「かといって、言いなりになっておとなしくしているのも、なんだかシャクにさわる」
「そうですね、リンネさま。なにせここまではやられっ放し。相手の思うつぼにて、いいように手の平で転がされまくっていますから」
「人質を奪還して反撃! と威勢よくいきたいところだけど」
「敵の首魁は地味に用心深い人物のようですし、おそらく一か所にまとめてとか、横着はしていないでしょう」
「なんの手掛かりもなしに、この広大な帝都から探しだすのは……可能だけれども、ちょいと時間がかかり過ぎるか」
「はい。あくまで概算ですが最短でも丸四日はかかるかと。細々と手筈を整えたらプラス一日といったところでしょうか。おそらくは向こうからの連絡の方が早いでしょうね」

 悔しいけれども、現時点にて打つ手なし。
 これに眉間にシワを寄せて、ぐぬぬとムズカシイ顔をしているわたし。そのときピコンとあることを思い出した。

「うーん。あっ、そうだ! たしか西の鉱山地帯の廃坑に教会の連中が出入りしているって話があったじゃない。ひょっとしたらそこに星読みの人たちが囚われているんじゃないの」

 我ながらグッドアイデア。
 かと思いきや、お人形さんに即座に否定される。

「その可能性は極めて低いでしょう。ですがそこで連中が何かをしているのは確かですし、ひょっとしたらそちらが連中の本命なのかもしれませんね。すでに調査には向かわせていますので、早ければ今夜中にでも何か報告が入るでしょう」

 というわけで事態は硬直。連絡が入るまで、しばし待機。
 しようがないので、わたしたちはノノアちゃんへのお土産として、その辺のお店に立ち寄り、帝都の甘味を買い漁ってから、路地に入り込んで亜空間内へと引っ込んだ。


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