196 / 298
196 落
しおりを挟む期待していた西の廃坑へと赴いた者たちからの報告はかんばしくなかった。
出入口が一か所しかなく、中も入り組んでおりあまり広くない。しかも警備が厳重にて、常に明かりが灯っている。
強引に押し入るのならば楽勝だが、こっそりと潜入するにはちとムズカシイとのこと。
この報告を受けて「いっそ制圧しちゃうか」との誘惑にかられるも、人質のことを思い出し、ここはグッとこらえる。
見張りを継続させておいて、わたしは帝都内の観光……ゲフンゲフン、じゃなくって探索を続けるも成果なしにて、ズルズルと過ごすこと三日目。
帝都日報の朝刊の片隅に、こんな小さな記事の見出しが掲載されているのを発見する。
『迷子発見される。母子感動の再会』
ほんの十行にも満たない内容にて、地方より観光で帝都を訪れていた親子がうっかりはぐれてしまい、うんぬんかんぬん。
政治経済関連ばかりのお堅い情報の中で、ぽつんと一つだけほっこり。
新聞を眺めながらわたしは「これって、連中が言っていたメッセージなのかな」
「おそらくは。しかしなんとも回りくどいやり方です。これで訪ねて行ったらちがったとかだったら、とんだ赤っ恥ですよ」
青い目をしたお人形さんも肯定したところで、ノノアちゃんを連れて出かけることにする。
ブランシュはお留守番ということにやや難色を示すも、母恋しさが勝ったらしく、どうにか納得してもらう。さすがに連れ歩くにはデカすぎるもの。
ひさしぶりに母親と会えるとあって、幼女はニコニコご機嫌だ。
迎賓館へと向かう道すがら、わたしはルーシーに確認をとる。
「ノノアちゃんのマーキングは?」
「ばっちり完了しています。チャンスがあればジョアンと名乗ったあの聖騎士やベルさんにも行う予定です」
「うちのみんなは大丈夫?」
「アルバをはじめ準備を整えて亜空間内および、たまさぶろう内部にて待機中です。いつでも出動できる手筈になっています」
「そう。あっ、グリューネのヤツはどうしてる? あれから何か動きがあった?」
「グリューネですか、えーと、マーキング情報ではずっとアルチャージルにて停止したままですね。おそらくバカンスを満喫しているのかと」
「……自分からきいておいてなんだけど、なんかムカつく」
「それについては同意見ですが、いまは目の前のことに集中しましょう」
「わかってるよ、ルーシー。最悪、戦闘になることも覚悟してる。優先事項はノノアちゃんとベルさんの安全および身柄確保。これだけは絶対だから」
「了解です」
そんな感じでいつになく気合を入れて、準備万端にて乗り込んだのだけれども……。
この前と同じように迎賓館の奥の部屋に案内されたわたしたち。
ちょっと違ったのは、今回は聖騎士ジョアンが中までついてきたこと。
彼はスタスタと部屋の奥の壁際にいくと、そこで以前と同じように直立不動の姿勢をとる。
母親の姿を見つけて、「おかあさまー」とトテトテ駆け出すノノアちゃん。
ヒシと抱き合うベルさんとノノアちゃん。
呼び出しの新聞記事にあったように、母子の感動の再会のシーン。これにはわたしもちょっとうるうる。
で、「よかったね」とわたしたちが二人に近寄ろうとしたところで「ガン!」という衝撃にて、行く手を阻まれる。
オデコと鼻の頭をモロにぶつけてアウチ。
「あいたたた……、って何これ?」
宙にペタペタ手で触れると、見えない壁みたいなものがある。
これがわたしたちとノノアちゃんたちの間を遮っており近づけない。
ルーシーがすかさず見えない壁に向かってショットガンをぶっ放す。わたしもそれに倣い、これを撃ち破るべく左手の人差し指式マグナムを発射。
が、信じがたいことが起こった!
ルーシーの弾丸はともかく、これまでいかなる結界や防御をも貫いてきたわたしの一撃。それまでもが通じなかったのである。
放った弾丸が見えない壁に接触したとおもわれた矢先に、まるで見当違いのところへと飛んで行ってしまった。
「うそっ! 効かない!」
「ちがいますリンネさま。いまの様子からして攻撃を逸らされたみたいです」
見えない壁は、たんなる平面ではなくって弧を描くような形状をしており、こちらの直線的な銃撃は表面にて受け流されたらしい。
もう一度攻撃を放つも、やはり結果は同じ。
あわてるわたしたちを尻目に、透明な壁の向こうでは、部屋の奥の壁にあった隠し扉が開いて、中からあらわれた騎士たちがぞろぞろ。嫌がる母子を連れ去ろうとしていた。
「ムダだ。チカラだけではこの『不可視の盾』は破れんぞ。ご苦労だったな。二人はもらっていく」とジョアン。
このままむざむざ逃がしてなるものかと、わたしは左手首を向けてロケットランチャーの発射体勢をとる。これならば接触したとたんにドカンといくから攻撃を逸らせまい。
すると危険を察知したのか急に反転したジョアン。一気にこちらへと駆け寄る仕草をとる。
踏み込みに合わせて強い衝撃を喰らって、わたしのカラダが後方へと吹っ飛ぶ。
不可視の盾を叩きつけられたらしい。いわゆるシールドバッシュとかいう技。ゲームで見たことがあるぞ。
強烈な一撃にて部屋の端まで飛ばされる。
固い壁に背中をモロにぶつけて「かはっ」と空気を吐き出す。カラダが前のめりにぐらり、そのまま床へと倒れそうになったので、咄嗟に手をつこうとしたのだけど。
目の前にあるはずの床がなかった。
ぽっかりと大きな暗い穴が開いている。
そこへと呑み込まれるようにして落ちていくわたしのカラダ。
ルーシーの「リンネさまっ!」と叫ぶ声が聞えたのだが、その声は爆発音によってかき消された。
爆風に煽られることで、わたしのカラダはさらに落下速度を加速させ、あっという間に奈落の底へと引きずりこまれていく。
くそっ! またしてもしてやられた。
不可視の壁、落とし穴、屋敷の爆破……、どうやら敵は二重三重にも罠を仕掛けていたらしい。
ルーシーのことだからきっと大丈夫だろうけれども、このままでは済まさないからな!
こんちくしょうめ、覚えてろよー!
2
あなたにおすすめの小説
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる