わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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201 八番目と最凶

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 イブニールを始末してから廃坑の奥へと向かう。
 けっこうな時間をかけてしまったので、ここからは早回し。
 といっても、途中にはほとんど警備の者の姿はなかった。まぁ、五人ずつとはいえアレだけ延々と分身体を造り出せる聖騎士がいたんだから、よもやそこを突破されるとは考えていなかったのだろう。

 廃坑の最深部へと駆け込む。
 わたしの目に飛び込んできたのは、頭の上に二つの球体をのせたノノアちゃんと、側で膝まづいて呆然としているベルさん。どちらも様子がかなりおかしい。
 次にそそり立つ青いモノリスみたいなやつ。見た目こそ涼やかでキレイなんだけど、妙に心をザワつかせるものがある。まるで内側からカラダをカリカリひっかかれているようで、なんともいえない不快感。
 そんなモノリスを前にして高笑いしている屈強な体躯をした騎士の男。なぜだか目を閉じている。たぶんこれがここのボス。でもって、この威圧感にてこいつも聖騎士なのだろう。
 あとはジョアンと数名の配下たち。
 騎士が笑うのを止めて、勢い込んで侵入してきたこちらに顔を向けた。
 両の瞼は閉じられたままだが、見えていないはずの目にてわたしたちを睨んでいるのはおのずと理解できた。

「きさまは……、よもや生きていたとはな。それにしてもどうやってここまできた? 上にはイブニールがいたはずだが、まさか」
「そのまさかだよ。あんまりしつこいから、ちょっと手こずったけど。それよりも、あんたらこそノノアちゃんにいったい何をしたの」
「べつに何も。彼女は自分のチカラである第四の眼に目覚めただけだ。しかしこの子は素晴らしい。『青い心臓』と対をなす『赤い心臓』を探させるためにここまで連れてきたのだが、見事に役目を果たしてくれたぞ。いちおうはゼニスさまの縁者らしいので、用件が済んだあとは解放してやろうかと考えていたが、気がかわった。このチカラ、今後も我らのために役立ててもらうとしよう」

 幼子ゆえに多少駄々をこねるだろうが、母親の身柄を盾にとれば、素直に言うことを聞くだろうとまで言ってのける相手に、わたしの中で怒気が急激に膨れ上がる。
 それに呼応するかのようにして、ズイと前に出てきたのはジョアン。

「ラドボルグさま、ここは自分が」

 かくして再びわたしと対峙することになった不可視の盾を使う男。第八の聖騎士ジョアン。
 わたしはルーシーに隙を見てノノアちゃんとベルさんの奪取を小声でお願いしてから、彼に立ち向かう。
 以前にアルチャージルで殺り合った外道勇者の盾使いとは、比べものにならないのは、先の迎賓館での短いやりとりでわかっている。
 至近距離にて自分へと向かってくる必殺の銃弾。その軌道を瞬時に見極め、盾の傾斜を利用して、これを逸らす。
 口で言うのは簡単だが、実戦でこれを行うのは生半可なことでない。
 能力に奢ることなく、能力に振り回されることもなく、これを巧みに使いこなす。
 そのための鍛錬と経験を充分過ぎるほどに積んできた戦士。
 付け焼刃のなんちゃって勇者のわたしとしては、ある意味、一番苦手とするタイプかもしれない。
 わたしは射線上にノノアちゃんたちが被らないようにと、ゆっくりと移動を開始する。ジョアンもそれには賛成らしく、黙ってこちらの動きにあわせて動く。
 互いに周囲を気にせず戦える位置取りが完了したところで、まずは先日のおさらいとばかりに一発ズドン!
 左人差し指式マグナムをお見舞いするも、銃弾は狙いを逸れてまるで見当違いの岩壁へとめり込んだ。
 いつの間にやら、しっかり不可視の盾を展開していやがる。
 やっぱり巧い。さすがに飛んでくる弾自体が見えているわけじゃないのだろうけれども、こちらのカラダや視線の動きから、かなり的確に弾道を読んでいるみたい。
 ならばと中指式マシンガンにて対処しきれないぐらいの弾幕を張ってやったら、一転して守りから攻めへと転じるジョアン。
 発射された弾が最高速へと到達するまえに、自ら盾をぶつけることで威力を相殺。
 もちろんモロにこちらの攻撃を喰らったことで、不可視の盾はズタボロとなるも、すぐさまコレを破棄して、後続を出現させて対応。
 でもって、強烈なシールドバッシュが炸裂。
 しかしこいつは前に見た! 同じ技は二度通用しない! なんてこともないけれど、以前のように無様に吹き飛ばされることはない。
 わたしは前方に向けて前蹴りを放つ。不可視の盾を蹴飛ばして、自ら後方へとジャンプ。ジョアンの突進をしのいだ。

 地下の廃坑深く、それに側にはノノアちゃんたちがいるので、こちらの攻撃手段はおのずと限られてくる。
 なのにジョアンが晒した手の内はまだ一つ。聖騎士どもはトリプルチート持ちにつき、残りは二つ。
 場所柄と状況ゆえに、向こうもあまり過激な手段は行使できないことが唯一の救いか。
 遠距離攻撃では埒が明かないと、あえて接近戦を挑んでみたが、鉄壁のガードに阻まれる。
 右から前腕式警棒にて殴りかかり、間髪入れずに左足のトゥーキックを繰り出す。
 二方面からの一人時間差。
 盾をいちいち振り回していては対処しきれまいとの目論見。だがこれはハズレた。
 見事にどちらの攻撃も不可視の盾にて防がれる。
 意外なほどに小回りが利く。悔しいけれども体さばきも見事。

「甘いな。オレの盾は必要に応じて大きさを変えられる。この程度では攻撃は通らんぞ」とジョアン。

 お返しとばかりにスモールシールドサイズとなった不可視の盾にて、ガンゴンと往復ビンタ。
 あげくにズドンと鳩尾を蹴られ、吹き飛ばされた。
 ころころと地面を転がりながら、わたしは考える。遠距離でもダメ、接近戦でもダメ、爆破系なら通じるだろうけど使用不可。単発散弾ともにはじかれた……うん? いや、そうじゃない。少なくともマシンガンの弾はやつ自身に決定打を与えられなかったものの、盾の方にはけっこうなダメージを与えていた。
 ということは、まったく通じないわけでもない……ふむふむ。
 久しぶりに活性化する我が灰色の脳細胞。
 やれば出来る子だと、わたしはずっと信じていたよ。
 転がる勢いのままに、ぴょんと立ち上がったわたしは、にへらと不敵な笑みを浮かべる。
 それを見てジョアンが怪訝そうな表情をした。


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