200 / 298
200 二百三十六番目の死
しおりを挟む「えっ、アレは何!」
驚愕の表情を浮かべて、わたしは首をぐりんと明後日の方に向けた。
つられて五人のイブニールまでもが一斉にそちらを向く。
その隙に左腕の手首がパカンとなって、ロケットランチャーを発射。
五人まとめてドカンと吹き飛ばす。
直撃を喰らった連中の肉体はバラバラとなった。
女優魂全開による改心の名演技。
「ふふん、男なんてチョロイぜ」と鼻高々だったのだけれども、飛び散った五人の残骸がまたしてもシュワシュワと泡となって消えていく。
「くそっ、またハズレだらけか」
地団太踏むわたしの前に、三度ぞろぞろと姿をあらわした猫背の小男たち。今度もやっぱり五人組。
「キシシシ、次から次へといろいろ楽しませてくれるねえ」
「そっちこそいい加減に打ち止めにしてくれるとありがたいんだけど」
またしても対峙することになるイブニールたちとわたし。
すると背後からルーシーの声。「どうやら彼は一度に五人までしか分身体を造りだせないようですね」
「それで、やっこさんの攻略法は?」
「とりあえず出たはしから潰していけばいいですよ。だってソレを造り出すのだって魔力やら気力体力が相当かかるはずですから」
これが戦いが始まる前にわたしがルーシーにお願いしていたこと。
でもまさかズブズブの泥仕合を推奨されるとは思っていなかった。こっちとしては弱点を発見してズバッと倒すつもりだったのに。
そして不本意ながら始まる泥仕合。
消したはしからにょきにょき現れるイブニール。
序盤こそは、こちらの思惑通りにだまし討ちやら不意打ち、まとめてドカンといけていたけれども、それも中盤以降になると通用しにくくなる。
なにせ攻撃をくり返すほどに、こちらは手札をどんどん切る形になるので、戦い続けるほどに向こうにもこちらの手の内が把握されていっちゃうから。
六十五人目のイブニールの額を左人差し指マグナムで撃ち抜く。
「いい加減にしてよね! しつこい男はモテないんだぞ」とわたしが叫べば、「お前にだけは言われたくねえよっ! そっちこそいい加減にしやがれ」とイブニールが叫びかえす。
反射能力にて加速し、ぴょんぴょん高速で飛びまわるイブニールらを、「どらぁ」と気合一閃。前腕式警棒にて殴り倒す。バッティングセンターならばホームラン確定のジャストミート。
「とっとと死んで!」とわたし。
「おまえが、とっととくたばれ!」とはイブニール。
ついに大台の百に到達。
記念に五人まとめて右人差し指による火炎放射器で、人間たいまつにしてやった。
百十五人目のイブニールの口に手を突っ込んで、直接毒ガス注入。
百三十人目のイブニールには、つま先から隠しナイフを出してからのスコーピオン断罪トゥーキック。菊門をブスリ。
百五十から百五十五人目のイブニールたち。かつてない反射能力による高速移動と連携攻撃にてこちらを激しく攻め立てるが、この頃になるとなんだか目とカラダが慣れてきたみたいで、ひょいひょいかわしてから順繰りにアイアンクローからの手の平式スタンガンを全開でぶちかます。
百七十人目のイブニールと接近戦にてキンコンカンと殺り合っているとき、ちらりと後ろを見たら、ルーシーさんが折りたたみイスをとり出し、これに腰かけ、お茶をしながら優雅に小冊子みたいなのを読んでいた。「あぁ、これですか? オスミウムの秘密の花園の追加報告書です。なんでも新展開があったとか。ワタシはこれを読んでいますからお気遣いなく。どうぞごゆっくり」
ちょっとソレ、わたしも読みたいからあとで貸してよね!
やがて殺したイブニールの分身体の数が二百を超えた。
ここまでいくと相手の癖とか動きや考えがそれとなくわかるようになり、サクサクと流れ作業じみてくる。気分はベルトコンベアーで働くパートのおばちゃんだ。
だが二百二十人目を倒したあたりから、ちょいと流れがかわってきた。
これまでは五人倒せば五人が即座に新たに顔を出していたのに、ここにきて四人に減り、三人に減り、二人に減っていき、倒すこと総勢二百三十五人目。ついにイブニールの姿は一人のみとなる。
こいつを容赦なくぶち殺したところで、ついに分身体の出現が止まった。
「あらら? ようやく打ち止めかしらん」
先ほどまでのドンパチと騒がしかったのがウソのように静かになったところで、ルーシーがやおら席を立ち、テキパキとイスやら冊子を亜空間に放り込む。
「終わったみたいですね。どれ」
しばし周囲をキョロキョロとしていたお人形さん。
やがて何かを見つけたらしく、そっちへ向かって歩き出す。
わたしもあわててついて行く。
青い目をしたお人形さんが向かったのは資材の陰となっていた場所。
広げられてあった一枚布をめくると、そこにはうつ伏せにて地面に倒れている小柄な男の姿があった。
「気配の消し方が巧妙にて、ちっとも尻尾を掴ませなかったのですが、さすがにこの状態ではムリだったようですね」
ルーシーが横っ腹を蹴飛ばしてくりんとすれば、イブニールその人。
ただしすっかりシオシオにしおれており、干物のようにて半死半生のあり様。白濁した目だけをどうにか動かし苦しげにこちらを見上げて、口をパクパクする姿は、まるで陸にあげられて長時間放置された魚のよう。
「魔力切れおよび、文字通り精も根も使い果たした状態ですね。限界を超えて能力を酷使し続けた反動ですよ。そもそもな話、聖騎士どものトリプルチートは圧倒的である反面、負担もまた尋常ではないハズだとは思っていました。神々が異世界渡りの勇者たちにギフトとスキルの二つのみしか与えない理由が、おそらくはこれなのでしょう」
ルーシーは亜空間より愛用のショットガンを武器召喚すると、銃口をイブニールの額へと押しあてる。
「このまま放っておいても勝手に野垂れ死ぬんでしょうけれども、それだとこれまでにあなたにオモチャにされた者たちの魂が浮かばれないでしょうから」
そう告げて、青い目をしたお人形さんは引き金を引いた。
8
あなたにおすすめの小説
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる