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202 四人の聖騎士
しおりを挟む左人差し指式マグナムを受けて、砕けた不可視の盾。
貫通する銃弾。とっさに上半身をひねることでかわそうとするも、盾を破られたことに動揺したジョアンの反応が、わずかばかり遅れる。
右肩を撃ち抜かれた衝撃で、後方へ飛ばされ倒れたジョアン。
すぐさま立ち上がるが、押さえた傷口からは血がだらだらと溢れ出していた。
「きさま……いったい何をした」
痛みをこらえながらの問いかけに、わたしは「ピンホールショット」と答える。
ほら、マンガとかで凄腕ガンマンやスナイパーが、寸分たがわず同じ箇所に銃弾を重ねることで、極厚な防弾ガラスをぶち抜いたりする定番のアレだよ。
実際にやろうと思ったら、射撃の腕に銃器そのものの精度プラス弾丸の性能、あと環境やら対象との距離やら、とにかく諸問題が山積み。
そいつをぶっつけ本番にて、一発勝負で成功させるとか、ミラクルにもほどがあるスーパーショット。
で、わたしの場合だ。
射撃の腕前はルーシーも認めるほど。カラダに仕込まれた銃器類は神さま印にて弾も同様の特注品。サイボーグ乙女につき指先がぷるぷるすることもない。
さすがに超長距離とかだと風の影響やら、光の屈折やら、空気抵抗に重力との兼ね合いやら、いろいろあってムズカシイだろうけれども、至近距離ならこれだけ揃ってたらイケるじゃね? とおもったわけよ。
そりゃあ、ターゲットに激しく動き回られたらさすがにムリだろうけれども、ジョアンってば基本戦法が「待ち」にて、堅実に「後の先」をとるタイプ。
だから、きっちり狙えると踏んだんだ。ただし有効打となる攻撃を二度も許してくれるほど甘い相手じゃない。
次はない。
そのことがかえってわたしの集中力を高めてくれた。
あと、おそらくこれで一生分の運は使い果たしたね。なんだかそんな気がする。
勝利のためにラッキーを犠牲にした女をにらみつけるジョアン。
ぶらんとした右腕の様子からして、関節周りの骨が砕けてるね。血もどんどん流れているから、顔色も悪くなっていく一方。
じきに満足に動けなくなるのは確実。
すでに死に体。なのにジョアンの双眸にはまだ強い光がある。
「てっきりどんくさいだけの女かとおもっていたが、見誤ったか……。いいだろう、ならばこちらも出し惜しみはなしだ」
ジョアンがそう言うなり、ふっと彼の周囲から圧力が霧散する。
風の流れがわずかに変化したのをわたしは肌で感じる。おそらく彼が不可視の盾を消したんだ。
そして消えた盾の代わりに新たに出現したのは、小さな鉛色をした球体。えーと、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ……とにかくいっぱい! たくさん宙に浮かんでいる。
ピンポン玉ぐらいの大きさのものが、ギュルギュルと高速回転している。
全部で百個ほどもあろうか。これがジョアンの二つ目の能力。てっきり防御一辺倒だと思っていたのに、一転して攻撃属性丸出し。極端にもほどがある。
軽く岩肌に触れた球体。とたんに岩の方がチュインと不快な音を立て、キレイに抉れてしまった。うかつに手を伸ばしたら指先がなくなっちゃいそう。
もっとも直撃を喰らっても、わたしのカラダならばたぶん大丈夫。
でも厄介なのはあの数と勢い。ヘタに宙へと打ち上げられて空中コンボとか決められたら、きっと何もさせてもらえなくなる。壁際に追い詰めれても同じ。格闘ゲームみたいに一方的にボコられてハメられちゃう。
見るからにヤバそうなソイツを前にして、知らず知らずのうちにわたしのノドがゴクリと鳴った。
鉛色の球体がひゅんひゅんとジョアンの周囲を舞うように飛んでいる。
この後の展開が容易に想像できるぞ。きっと四方八方から襲ってくるにちがいない。
わたしは警戒して身構える。
ついにわたしの下へ球体の群れが殺到しようとした矢先のこと。
これまでずっと沈黙を守っていたラドボルグが「そこまでだ、ジョアン」と言った。
「待ってください。自分はまだヤレます。この宝珠のチカラにてきっとヤツを」
不満を表明し、戦いの継続を希望するジョアン。だがラドボルグは「二度も言わすな」との言葉でもって彼を黙らせる。「どのみち時間切れだ。迎えがきた」
ラドボルグの首から上が青い石碑の脇へと向いている。
空間が静かにジッパーを下ろすかのようにして、ゆっくりと縦に裂けていく。
裂け目から姿をあらわしたのは、白い仮面をつけた黒いミイラ男。
ラグマタイトにて遭遇した空間系の能力保持者、第三の聖騎士ワルド。
このことにわたしは驚愕。
おいおいおい、ラドボルグ、ジョアン、イブニールだけじゃなく、ついにはワルドまで登場しちゃったよ。
国崩しや邪龍復活のときでさえも派遣されていたのは一人だけだったのに、それが四人。
どう考えても尋常じゃない。これだけの聖騎士を投入してまで、いったい連中は何を企んでいやがるんだ? 「青い心臓」とか「赤い心臓」とか言ってたけど、こちらが想像しているよりも、ずっとヤバイ事態なのかもしれない。
ならばそんなモノをみすみす持ち去らせてなるものかっ!
わたしは左腕をそそり立つ青いモノリスに向ける。狙うのは上の方。そこならば爆散しても近くにいるノノアちゃんたちに被害は及ぶまい。熱風に煽られて、ちょっと髪の毛が焦げちゃうかもしれないけど、それはかんべんして。
いまなら全員の注意が新たにあらわれたミイラ男へと集まっているからイケるはず。
わたしの意図を察したのか、ロケットランチャーを発射するタイミングでルーシーもついに動く。
ジョアンとの戦闘中、ノノアちゃんとベルさんの身柄を奪還しようと機会をずっと伺っていたのだが、近くにいたラドボルグのせいで、それが適わなかった。
だがお人形さんは爆発のどさくさに紛れて、これをやってのけるつもりのようだ。
そんなワケでロケットランチャー発射!
突如として起こった爆発によって廃坑内がかすかに揺れた。
粉塵が舞い、煙で視界が遮られる。
じきにそれらが収まっていくも、青いモノリスには傷ひとつついておらず健在。
かわりに近くの天井の岩肌に大きな亀裂が走り、パラパラと細かい瓦礫の雨を降らせてている。
ベルとノノア母子の姿は消えていた。
「やれやれ、勝手をされては困る。あれは大切なモノなのでな」
そう言ったのは、わたしの左腕を掴んでいるラドボルグ。
どうやらロケットランチャーを放つ寸前に、腕をひねられて発射軌道を変えられたらしい。
しかしいったいいつの間に? 接近にまるで気づけなかった。
こちらを見下ろす巨躯の騎士。
その両の瞼はパッチリと開かれていた。
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