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233 スーパーロボットと最凶
しおりを挟む爆発が起こる。
すると煙がモクモクと天へとのび、一筋の狼煙となる。
そしてここはぺんぺん草も生えていない乾いた荒野。
ムダに視界が良好。遠くからでもよく見えるので異変を知り、すぐさま新手が駆けつけてきたんだけど……。
「またロボットか。それにしてもデカいね。さっきのはせいぜい二十メートルかそこらだったのに、今度のは倍はあるか」
「もう少しあるかと、リンネさま。ちなみにアレはスーパーロボット系ですね」
ふた昔ほど前のテレビ放送の黎明期に、当時のお子さまたちを熱狂させたロボットアニメ。
宇宙の彼方や異なる次元、地面の下からとかの侵略者に、敢然と立ち向かう巨大ロボ。
先ほど対峙した、やたらとシャープでスポーティーなリアルロボット系とはちがい、こちらはゴツゴツとしており、胴回りもずんぐりむっくり。全体のフォルムがモッサリとしていて、なんとも頑強そうだ。あと顔のデザインがちょっと老け顔。
そして重量もケタちがいらしく、飛んできて着地をしたとたんに地面がたいそう上下に揺れて、わたしとルーシーはぴょんと跳ねた。
「おまえ、勇者だな? これは……、もしかしてキサマが殺ったのか?」
焼け焦げた残骸を見下ろしながら、オッサン顔の巨大ロボが話しかけてくる。
今度のは外部スピーカーがついているらしく、ハッチが開いてうかつなパイロットが無防備な姿を晒すこともない。
問われたのでわたしは素直に「そうだ」と答える。ただし正確には、殺してはいないけれども。
てっきり仲間を倒されて激昂するのかと思い身構えていたら、スピーカー越しに聞こえてきたのは笑い声。
「あははははは、ふだん、あれほどえらそうなことをほざいては、人のことをやれ『ダサい』だの『時代遅れ』だのと小馬鹿にしていたくせに、こんな貧相な女にやられるとはな」
この物言いにわたしのこめかみがピクリ。
さっきの男もそうだが、どいつもこいつも、なぜ余計なひと言を付け足さずにはいられないのだろう。
これはアレか? 高級車とか大型トラックのハンドルを握ると、つい気が大きくなって運転が乱暴になったり、イキがってあおり運転とかしちゃう心理。夢の巨大ロボットを手に入れたもんで、盛大に勘違いしちゃったのかな?
よかろう。ならばその歪んだ精神を叩き直してくれる。
わたしはパチンと指を鳴らす。
お呼びとあらば即参上! とばかりに亜空間より異形の巨人、富士丸くんが登場。
突如として現れた巨大ブリキロボットに、慌てふためく相手のことはヌルっとムシして、スーパーロボットと富士丸くんが、ゴーファイト!
スーパーロボットが右の拳をブゥンとふるう。
巨体ゆえに迫力があるし、威力もそこそこありそう。しかし遅い。
富士丸くん、上半身だけでひょいとスウェーして、これをやすやすかわし、今度はお返しだとばかりに左のジャブを放つ。
その無骨でメカメカしい構造をした腕からは、想像もできないほどに速く、的確な一撃がムチのようにしなり、相手のオッサン顔を打つ。
ちょうど眉間のあたりを打ち抜かれ、そのせいで顔が跳ねあがり天を見上げる格好になったスーパーロボット。
すっかりむき出しとなったアゴに、間髪入れず富士丸くんの右のストレートが炸裂。
キレイなワンツーパンチをもらって、ヒザから崩れ落ちるスーパーロボット。
だが富士丸くんのターンはまだ終わらない。
ガクリと両ヒザを地面についたことで、ほどよい高さに落ちてきた相手の頭部を両手でがっちり挟み込んで固定。
からのニーキック。
ヒザ頭がオッサン顔に容赦なくめり込み、イヤな音を立てる。一撃目にてべっこり粉砕、あまりの威力に二撃目にて首がもげてしまった。
首無しでふらふらするスーパーロボット。その胴体部分に今度は前蹴りを放つ富士丸くん。もちろんクリーンヒットにつき、足形を深々と刻まれ盛大に吹き飛ばされたスーパーロボット。その巨体が、がらんごろんとしばらく転がってから、ようやく止まったときには、すでにズタボロ。
富士丸くんが手の中に掴んだままであった首のことを思い出し、これをポイっと投げつけ持ち主に返却。
倒れた背中に当たって、カンと鳴った音の響きが、ちょっともの悲しかった。
あの見た目からして、おもわず技名を叫んでしまう必殺技とかあったのだろうけど、使うヒマもなく、まさかの瞬殺。
もはや誰の目にも勝敗は明らか。
だがヨチヨチとスーパーロボットは立ち上がる。
たとえ首がもげようとも、腕がぷらんぷらんとしていようとも、胸部が大きくひしゃげようとも、決してあきらめない。それがスーパーロボット魂。
か、どうかはわからないけれども、たぶんそんな気がする。
うむ。その心意気やよし。
相手が戦いに殉ずるというのならば、それを叶えてやるのもまた慈悲であろう。
わたしはちらりとこちらを見た富士丸くんに、ビシッと親指を立てサムズアップ。にっこり笑顔でコレを逆さにくりん。「殺っちまいな」の合図を主人よりもらった富士丸くんのロケットパンチが唸り、勝負はここに完全決着をみせた。
巨大ロボットはチュドンと盛大に爆ぜた。
それがスーパーロボットの滅びの美学だとでも言わんかのように、派手にドッカン。
なのにパイロットはちゃっかり生きていた。操縦者の安全を守る脱出装置がついていたようである。
身柄を確保して、とっても驚いた。
てっきり野郎だとばかり思っていたのに、女の子だったから。人のことを「貧相な女」とか言ってくれたわりには、わたしとどっこいどっこいの体型にて、おもわずプププと笑わずにはいられない。
彼女もすっかりのびており、つついても乳をもんでもカンチョウをしても、ピクリともしない。
「もしかして、この子もさっきのと同じパターンなのかな」
「みたいですね。愛機を破壊されて、召喚者もダメージを受けたのでしょう。これでは情報を得るのはムリですね。しようがないので次のに期待しましょう」
「次?」
「ほら、あちらですよ、リンネさま。五機の編隊がこちらに向かってきています」
ルーシーが示した方角を見れば、土煙をあげて大地を駆けてくる動物っぽい形をしたロボットたち。
たぶん変形して五体合体とかしちゃうヤツなのだろうけれども、さすがにこれ以上は付き合っていられない。
だからわたしは上空の衛星軌道上にいる宇宙戦艦「たまさぶろう」に連絡を入れて、ホーミングレーザーによる迎撃を命じた。
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