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232 リアルロボットと最凶
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その効果は絶大にて、たいがいのケガは治る。死にかけでもガンガン治る。
代償にいろいろと失うモノも多いが、命はひとつきりなのだから、多少のことは犠牲にしてもやむをえまい。
とはいえ、飲んだからとて何もかもがスパッと元通りとはいかない。
流れすぎた血は量が戻るまで、カラダがヘロヘロのままだし、魔力切れも復活したからとてすぐに空になったタンクが満タンになるわけじゃない。まあ、通常よりも数倍速く回復はするけれども。体力とかの復活にも個人差や種族差が如実にあらわれる。
うちの鬼メイドのアルバみたいな脳筋タイプならば、飲んだとたんにフルチャージで元気ハツラツになるけれども、繊細なタイプはぐったりとなる。超回復にカラダや精神のほうがついてこれないのだ。
それでもってサクラという女勇者は完全に後者。
にも関わらず、ムリをして事情を説明してくれた。
わたしは「わかった。あとはまかせろ」と言ってサクラを安心させてから、行動を起こす。
商隊長さんに金貨がつまった袋を放り投げ、「サクラを頼む。あとリスターナに来たらサービスするから」と伝えて、とっとと宇宙戦艦「たまさぶろう」に帰還。
そのまま旧ダロブリン領内へと向かった。
ひさしぶりにやってきた旧ダロブリン領は、やたらとすっきりしていた。荒廃し過ぎて、一周回ってこうなってしまったみたい。
これがぺんぺん草も生えない状況ということか。
あまりの光景に、わたしはちょっとしんみり。
まぁ、それはそれとして、ぬかったわ。
そのうち掘り出そうと思って、すっかり忘れていたお宝を先に掘り起こされて、連中の建国資金に化けてしまっていたとは……。
リンネちゃん、痛恨のミス。
この悲しみと怒りを胸に、いきなり夢見る勇者どもが集う主都跡に乗り込もうとも考えたが、サクラから「みんなはイツキにダマされているだけなの。だからどうかお願い」なんて涙ながらにすがられては、そうもいかない。
そんな乙女の涙を抜きにしても、ここは考えどころ。
なにせ相手は百を超える超人兵器。
全員が全員ダブルチート持ちにて、建国に意欲を燃やす鼻息の荒く血気盛んな若人。
いろいろあってすっかり頭に血がのぼって興奮状態。話せばわかるとは到底おもえない。ずっと仲間だったサクラの声ですらもが、彼らの耳には届かないんだから。ぽっと出のわたしの言葉なんて、それこそ聞く耳を持たないだろう。
きっと拳と異能でガシガシ語り合うハメになる。
そうなると大乱戦となるは必至。
百を超えるギフトとリンネ組のどつきあい。
やばい、想像すると個人的にはちょっと見てみたい。でもダメ。
単純に皆殺しでいいのならば、百パーセントうちが勝つ。けれども殺さずに鎮圧となると少々分が悪い。ギフトは海千山千揃いにて、なかにはどんなめんどうなのが潜んでいるのか、わかったものじゃないから。
まずは情報が欲しい。サクラを逃がすのにカラダを張ったショウキチの消息も気になるし。
だから何人かその辺をちょろちょろしているのを捕まえようかと、考えていたんだけど……。
「おぉ! ルーシー、なんかでっかいロボットのプラモデルみたいなのが空を飛んでるよ。えーと、ああいうのはたしか何て言ったっけかなぁ」
「あれはいわゆるリアルロボット系と呼ばれるタイプですよ、リンネさま」
アニメとかに登場するロボットで、イケメンパイロットたちが乗って宇宙空間でビーム兵器をガンガン撃ちまくって、びゅんびゅん飛び回るの。主人公よりもライバルキャラの方が、大人で数段カッコよかったり、何故だか仮面をかぶっているというナゾ設定がお約束でお馴染みのアレだ。
そのロボットが地上にてぼんやり見上げているこちらに気がついて、向かってきた。
少し離れたところに着地をし、手にしたビーム兵器っぽい銃口を向けたまま、キュイーンと胸部ハッチが開く。
操縦席から姿を見せたのは男。
「おいっ、そこのちんちくりん! 見た目はみすぼらしいが、おまえ勇者だな? ここから先はオレたちの国の領土だ。許可なく立ち入りを禁ずる。すみやかに来訪した目的を述べよ」
パイロットスーツ? とかいうバイク乗りの服のようなのを着込んで、ヘルメットをかぶっているから顔はよく見えない。
そんな男から、文字通り上から目線でモノを言われたので、カチンときたわたしはお返しに、コクピット席に向かって左腕を向け、照準セット。
左手首がパカンとなってロケットランチャー発射!
変身ヒーローを変身途中に攻撃する。もしくは必殺技を放つ動作の最中に仕掛ける。
これをタブーと言う。
そして今回のやり口もまたタブーに抵触する行為。
だがしかたがない。さきにいくつも言ってはならない言葉を口にしたのは向こうなのだもの。サクラには悪いが、ヤツは越えてはならぬ一線を超えてしまった。
目には目を、歯には歯を、誹謗中傷や罵詈雑言には破壊で応じる。それがわたしことアマノリンネという女。
いきなり急所に致命的な一撃を受けたリアルロボットとかいう巨大プラモデルは、胸部から真っ赤な炎と黒い煙を吹き出しながら、そのままゆっくりと仰向けに倒れていった。
地面にズズンと大の字に寝転がるロボット。しばらくバチバチしてから盛大に爆発して果てる。
なんたるモロさ。
この見かけ倒しの根性ナシ。
男の子たちの間では絶大な人気を誇るとかいう話だけれども、ちょっと小突いたぐらいでこのザマ。格好ばっかりでめっちゃ弱いじゃん。
うちの富士丸くんとはえらいちがいだよ。
ちなみにパイロットの男はとっくに投げ出されており、地面でのびている。
右足首と左肘の辺りがちょっとへんな角度に曲がっている。アレは完全に折れたな。
ルーシーが脇腹をつま先でドムドム蹴飛ばしてみるも、倒れている男はピクリともしない。
「これは、たんに気を失っているのではなさそうですね。おそらく召喚したオモチャが壊れたので、その反動がきたのでしょう。この分ではしばらく話は聞けそうにもありません」
ルーシーの見解にわたしは「えー、なにそのめんどうな仕様。見た目ばっかりで中身ダメダメじゃないの」と文句を言った。
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