わたしだけノット・ファンタジー! いろいろヒドイ異世界生活。

月芝

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284 勇者の国の戦い

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 旧ダロブリン現勇者の国の領内に出現した黒銀の巨大なケモノ。
 相対するのは百二十一人の異世界渡りの勇者たち。
 しかし、いざ戦いを前にして、大半のメンバーらは非常に困惑していた。

「ダンガーさまやルーシー殿から、近々に変事が起こるとは聞いていたが、こいつは……」

 彼らを率いるリーダーのサキョウもまた、みなと同じで災厄を前にして戸惑っている。
 なぜなら彼らの目の前にいたのは、一頭の巨大なチワワ犬だったから。
 逆三角形の形状をした大きめの頭部。これを支える首は細くカラダは華奢にて、頭でっかち。大地に踏ん張る四肢はなんとも頼りなさげにて、プルプル小刻みに震えている。
 無邪気さを凝縮し固めたかのような円らな瞳は、うるうると濡れており、激しく左右に動く短いシッポの先がピピピピと忙しない。
 色こそはアレだが、いかに小山ほども身の丈があろうとて、チワワはチワワ。
 おかげで女性陣からは「なにあれ、かわいい―!」などという黄色い声があがり、男性陣からは「アレを攻撃とか、オレには出来ねーっ!」との悲痛な嘆き。

「きゃんきゃん」吠える黒銀のチワワ。

 なんとも愛らしいその姿にみなの戦意がごっそりと削がれたところで、いきなりチワワがぴょんと跳ねた。
 宙にて振りかぶった右前足が狙うのは勇者の一団。
 どんくさそうな見た目に反して高い機動力。
 完全にふいを突かれたサキョウたちは、とっさに対応できない。
 ギラリと剣呑な輝きを放つチワワの爪が迫る。
 そのとき、一筋の閃光が空を切り裂き、巨大チワワの横腹に直撃。
 黒銀のケモノが「ぎゃん」と鳴いた。

「いつまでもボサっとしてんじゃねえよ!」

 檄を飛ばしたのは、上空を旋回している赤い機体。
 勇者カケルが乗るリアルロボットである。初登場時にうっかりハッチを開けて、リンネからコクピット内部を爆撃されるという手痛い敗北を喫し、カケルは学んだ。「外部スピーカー」の重要性を。おかげで今では動き回りながらコクピット内にてわめき放題。
 赤い機体に続いて登場したのは女勇者ナナオが操る、やや老け顔をしたスーパーロボット。

「必殺! アルティメット断罪バーストっ!」

 ナナオの叫び声に合わせてロボットの全身が光り出し、右の拳が炎をまとう。
 横っ面に拳がめり込むのと同時に激しい爆発が発生。
 火だるまとなった黒銀のチワワが派手に吹っ飛び、離れた地面を二度ほど跳ねて転がった。
 初登場時に余裕をかまし必殺技などを温存した結果、リンネの富士丸にボコボコにされて手痛い敗北を喫し、ナナオは学んだ。「出し惜しみカッコわるい。いつでもクライマックス。それがジャスティス。勝てば官軍」であると。
 よってロボット物のお約束をスルっと無視して、初手から大技にて問答無用。

 吹き飛ばされた黒銀のチワワがよろよろと起き上がる。
 そこに一斉に群がったのが五体の動物型ロボットたち。
 これは勇者タクミの変形合体ロボ。五つの機体が一つとなりて巨大ロボとなるのだが、初登場時にリンネのたまさぶろうに何もさせてもらえなかったことで、タクミは学んだ。「見せ場は待つものじゃない。自分で造り出すもの。これからの時代、自己プロデュースも大切」なのだと。
 五体による連携にて、ちくちくチワワを翻弄しいちびったのちに、離れて合体!
 各々が動物型からむりくり変形にて、手足や胴体となりガシャコンとくっつき、一体の人型ロボットとなる。

「五つのチカラが一つとなりて、顕現せしはノットガルドの守護神。我こそは」

 そこまで言ったところでチワワの頭突きを喰らって、タクミの合体ロボは吹き飛ばされた。あいにくと芝居がかった長口上にのんびりと付き合ってくれる酔狂な敵は、なかなかいない。現実は世知辛いものなのである。

 仲間のピンチに颯爽と駆けつけて、これを救う。
 まるで本物のロボットアニメばりの活躍を見せる彼らを、仲間たちは「ロボバカトリオ」と呼ぶ。
 そんな彼らの首筋にはきらりと光るお揃いのネックレスがあった。
 単四電池にクサリをつけただけのようなシロモノ。
 これはルーシーより配給されたリンネ式充電池。ダサい見た目に反して、内部にはわりとシャレにならない量の魔力が内包され渦をまいている。
 装備することで召喚系ギフト持ちを悩ます、魔力枯渇による燃料切れ問題を一挙解決。
 おかげで愛機をガンガン使いたい放題となった、カケル、ナナオ、タクミたちの活躍が目覚ましい。

 三体のロボに囲まれて必殺技を滅多やたらに連発され、ボコボコにされ続ける黒銀のチワワが、怒りのあまり毛を逆立てる。
 膨れ上がる邪悪な気配。
 次の瞬間、ぶるるとチワワがカラダを震わせ、拍子に大量の銀毛が抜け落ち舞った。
 ゆらゆら毛が地面に落ちる寸前に醜い異形へと変わる。
 突如として出現した醜怪なバケモノの群れ。
 これを前に、「やれやれ、背に腹は代えられないわね」とつぶやいたのはミヤビ。ギフト「ドールズ」による大量の木偶人形召喚と、スキル「マリオネット」にてコレらを自在に操ることで「ソロ・アーミー」の異名を持つハーフ美少女勇者。

「こんなダサいネックレスなんか、死んでもつけたくないって思ってたけど、チカラは本物みたいね……。いいわ、ミヤビもしかたがないから使ってあげる」

 どこまでも上から目線にて自信満々、高飛車な物言い。
 だがそれは負けず嫌いで、人一倍努力家な彼女なりの己を鼓舞する方法。
 ミヤビが指をパチンと鳴らすと、武器を手にした黒服の木偶人形たちが登場。
 その数、千体。
 かつては三百三十三体を呼ぶのが精一杯だったのに、あっさり記録を更新。
 これが首からぶら下げている品のおかげかと思うと、少々複雑な表情を浮かべるミヤビ。
 彼女の命令を受けて黒服たちが一斉に進軍を開始。異形の大群と対峙する。
 これに呼応してサキョウ率いる勇者たちも動く。
 サキョウのギフト「土流」が大地を操り敵を翻弄すれば、サクラのギフト「雷帝」がイカズチの雨を降らせ戦場を席巻。
 百二十一ものギフトが揃い踏み。
 異能が飛び交い入り乱れては、死線を華やかに彩る。
 だが長い夜はまだ始まったばかり。


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